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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
摩訶不思議な人間と
45/94

〈番外面・中〉さあさあ、いざ再戦の時(後編)

今回、少しばかり(?)長めになりました。始めに会話シーンを入れたからですかね?

いつも書いているはずの時刻の描写を今回していないので、前回から引き続いての戦闘シーンや今回冒頭の会話シーン等、時系列が少し分かり辛いかもしれませんね・・・。まあ、決闘自体は休憩なしでずっと行われていたということだけ分かっていれば、あまり問題はないかと・・・。


あまり関係ない余談ですが、今回登場する二つの奥義(・・・・・)の命名は結構悩みました(笑)。余談です、はい。すみません(笑)。

 古屋図書館裏空き地で二人が決闘を始める、ほんの少し前・・・。

いつものように生命の森奥地での修行を終え、小屋に戻って来た小冬さん。

すると、一人の客人が小屋前で待っていました。

小冬「あら・・・?先生じゃないですか。」

永佳「やあ、小冬。今日もずっと修行していたのかい?うんうん、いいことだねぇ。」

小冬「私の日課ですからね。それで、先生こそ今日はどうしましたの?こんなところまでやって来るなんて。」

永佳「小冬、今から何か用事はあるのか?」

小冬「そうですわね・・・。特にこれといった用事は・・・。まあ、史織の様子でも見に行くくらいですわ。」

永佳「それは都合がいい・・・。私も今から史織のとこに行くんだけど、よかったら一緒に見に行かない(・・・・・・)かい?」

永佳さんが、やや不敵な笑みを浮かべます。

小冬「・・・?ええ、いいですわよ。一緒に行きましょう。」

支度を済ませた小冬さんは永佳さんと一緒に古屋図書館へと向かいます。

小冬「それで、先生?何を隠しているんですの?」

永佳「んー?なーんのことかなー?」

小冬「とぼけたって無駄ですわ。わざわざ先生が私を誘って史織の所に行こうだなんて、何かあるんでしょう?」

永佳「ふふっ、まあそうだよな。何だ、史織のことが心配か(笑)?」

小冬「そっ、そういうわけでは、ありませんけど・・・(焦り)。」

永佳「はっはっは、心配するな。悪いこと(・・・・)は何もしちゃあいないさ。」

永佳さんが高らかに笑う中、小冬さんは少し心配そうな顔をします。

永佳「ここ最近は史織には逃げられっぱなし(・・・・・・・・)だったからねぇ・・・。稽古をつけてやりたくても、史織がその気になってくれなきゃ意味がない。小冬が相手でも史織はその気になってくれない。だから、史織がその気(・・・)になってくれそうな相手と一石二鳥的な関係になるように組ませてもらった、ってだけだよ。」

小冬「・・・もしかして先生、千鶴さんにあの修行(・・・・)を?」

永佳「ふっふっふ、高御たちも協力してくれたからね。いい感じに成長したと思うよ、千鶴は。」

小冬「そうなんですか・・・。確かに、先生が千鶴さんを教導したということは千鶴さんにはそれ相応の実力がついているということですわ。もちろん、先生の教導力に疑いを持っているわけではありません・・・。ですが、やはり相手が史織ですから、そう簡単に千鶴さんが史織に勝てるとは思えませんけど・・・。」

永佳「いや、私は別に千鶴が史織に勝てるとは思ってないよ。」

小冬「えっ?」

永佳「あ、いや、負けるとも思ってないんだけどね。」

小冬「どういうことですの?」

永佳「私はただ、皆に教導して、修行して、そしてその成果を堪能している皆のことを見るのが好きなだけさ。本当は史織にもまた教導してあげたいんだけどね・・・。まあ、私が千鶴を教導すれば、千鶴はその成果を実感できるし私も嬉しい。そして、その千鶴が史織に働きかけてくれれば、史織の気持ちも変わるかもしれないってね。史織の気持ちが変わって少しでも修行に取り組んでもらえるようになったら・・・。そうなれば、私は嬉しいのさ。」

小冬「先生・・・。」

永佳「まあ、高御は本気で史織に勝つんだー、って意気込んでいたけどね。私は千鶴に『至極の決闘修行』を叩き込んだだけ。その成果が今日見れるってこと。」

小冬「・・・先生はどっちが勝つと思いますの?」

永佳「ん~・・・、どうかなぁ~?史織の強さが折り紙付きなのは分かっているんだけど・・・。」

小冬「・・・だけど?」

永佳「千鶴ってば高御と木実の力をある程度扱えるようになったんだよねぇ~。あの鏡の二柱の力(・・・・・・)を。しかも、曲者はそれだけじゃない。あの奇天烈な不思議能力(・・・・・・・・・)よ。何なんだろうね?さっぱり分からないんだもん。高御も木実も千鶴が能力を使うとぽかーんとしちゃってさ。笑っちゃうよね。」

小冬「先生でも千鶴さんのあの力(・・・)はよく分かりませんでしたか。」

永佳「だね。もう理解するのは諦めたよ(笑)。だから、千鶴にはその力を自然と扱えるようになれるよう教導したんだ。」

小冬「そういえば千鶴さん、あまり上手く力を扱えていなかったですものね。」

永佳「つまりだ。いくら史織といえども、その二つの力(・・・・)を掻い潜るくらいの力を出さないと・・・、勝ち目は薄いってわけだ。」

小冬「・・・史織の力だって凄いんですのよ?」

永佳「それはもちろん、私も知っている。でも、そこが問題じゃあないんだ。」

小冬「・・・と言いますと?」

永佳「ふふーん。じゃあ、一つ問題を出そう。小冬よ、史織の決闘における最大の弱点は何か分かるかな?」

小冬「えっ?んん~~っと・・・。・・・あ、暑さ?」

永佳「ぷふっ、あっはははは!それもそうか(笑)。あの子は暑いのが苦手だったね。」

小冬「ううぅぅ~~!そ、そんなにおかしなことを言ったつもりはありませんわ(恥)!」

永佳「ははっ、ごめんごめん。」

小冬「じゃあ、答えは一体何なんですの?」

永佳「・・・普段通りならば、その答えは驕り(・・)だ。でも、今回の『史織と成長した千鶴(・・・・・・)との決闘』に関して取り上げて言うならば、少し違う。史織も少し千鶴と決闘を始めれば、すぐに千鶴の成長分を感じ取るだろう。そう簡単には驕ったりしないはずさ。でも、いくら驕らないと言ってもそう簡単に史織は本気を出したりはしない。まあ、普段から史織は本気本気ってよく言ってるけどね?でもそれは、本当の(・・・)本気のことじゃあない。でもそうは言っても、千鶴の扱う二つの力(・・・・)の前では、史織も本当の(・・・)本気の片鱗くらいは出さないと善戦は厳しいはず。史織の力は確かに本当の本気を出さずとも凄いんだが、それゆえに、『本当の本気なんか出さなくても大丈夫』という驕りに史織は陥りやすい。つまり、この二人の勝敗を分けるのは・・・。」

小冬「・・・分けるのは?」

永佳「『史織が本当の(・・・)本気の片鱗でさえ、出し惜しみをするのかどうか』だと思うなぁ・・・。」


 場面は戻って、図書館裏空き地。

しゅいぃぃぃぃん・・・

史織「ヤバッ・・・!!」

ちゅん、ばっしゅこぉぉぉぉん!!

史織「うぐぅっ・・・!!」

ズザザアァァァァ・・・

千鶴「はぁ・・・はぁ・・・。ど、どうしたんですか?今日はいつもみたいな余裕がないみたいですね・・・?」

史織「くっ・・・。アンタの術式、ほんっっとうに訳分かんないわね・・・。」

千鶴「ええ、私もよく分かってませんから!」

史織「アンタは分かっときなさいよね!」

千鶴「私だって、分かっておきたいですもん!もうー、気にしてるのにー!ええい、『鏡裏(きょうり)人形』!!!」

ぼわわぁぁん・・・

虚像(・・)の千鶴さん(?)が生み出されました。

史織「(この感じは・・・、木実の力ね。)」

千鶴「私だって、高御さまと木実さまのお力を少しだけ扱えるようになったんです!お二人のお力の分も、私の力の一部だと思って相手をすることですね!!」

ばしゅこここここここ!!!

二人(・・)の千鶴さんが光弾を一斉に放ちます!

史織さん、かなり苦戦中のようです。

史織「(どうしよ・・・、このままじゃ・・・。千鶴ったら、たった一か月修行したくらいで何でこんなに強く・・・。・・・ん?ちょっと待って・・・、たった一か月(・・・・・・)・・・?)」

千鶴「決闘中に他の考え事とは、油断しすぎじゃないですか?!」

千鶴さんが史織さんの背中側に回り込みます!

千鶴「てやあああああ!!」

史織「っ!!」

カキィィィィン!!

ギギギギギ・・・!!

二人の近接術式がぶつかり、鍔迫り合いのような状態になりました。

千鶴「なっ!?」

史織「ふふっ、はあぁぁぁぁ!!」

ガキィィィィン!!

千鶴「きゃあぁぁぁぁ!!」

ザザァァァァ・・・

鍔迫り合い勝負は史織さんの勝ちとなりました。

千鶴「いったたたぁ・・・。さすがに、やりますね・・・。」

史織「褒めたって、負けてあげたりしないわよ?」

千鶴「あら?まだ私の力を見誤っているんですか?今日の決闘を振り返ると、今の私の力は総合的に見て(・・・・・・)史織さんの力を超えているという自信があるんですけどねぇ?」

史織「・・・確かに、あの二柱(アイツら)の力とアンタのその妙な力(・・・・・)が厄介なのは認めてあげるわ。でもね?それを扱う術者(アンタ)が未熟なままじゃ、まだまだ私には及ばないってこと。分かんないの(煽り)?」

千鶴「むむむむぅぅぅ~~~!!!い、言ってくれるじゃないですかぁぁぁ~~~!?・・・いいでしょう。そこまで言うのでしたら、私が貴方を倒して、貴方に私の成長した強さというものを、思い知らせてあげますっ!!!」

史織「(さて、いい感じに煽りが効いてるみたいだけど、そろそろ私もキツいのよね・・・。)」

少し力を消耗している程度の千鶴さんに対して、やや劣勢気味で疲労の隠せない様子の史織さん。史織さんの顔には少し苦しい表情が窺えますが・・・。

史織「(ふぅぅ~・・・、よし。どうなるかなんて正直分かんないけどここはやっぱりいつも通り、私の()のままにやってやろうかしらね。私の考えてる通り(・・・・・・・・)なら、きっと・・・。)」

どうやら史織さんの決意は固まったみたいですね。顔つきが変わりました。

千鶴「ん・・・?どうやら、貴方もその気(・・・)になってくれたようですね。これで私も思う存分、胸を張って帰ることができますよ!!本気(・・)の貴方に勝ったという手土産を持ってねっ!!!」

史織「(見極めは一瞬っ・・・!)さあ、きなさいっ!!!」

千鶴「これが私の、とっておきです!!『本所六十四の不可思議』!!!」

史織「っ・・・!!」

ジュババババッ、ジュババババッ、ジュババババッ!!!

千鶴さんの奥義が史織さんを襲います!

史織「くっ・・・!!」

多方向から大波のように押し寄せてくる攻撃を何とか紙一重で避けていく史織さんですが、さすがに全てを捌き切ることはできません。いくらか攻撃を掠りながら、それにも耐えていきますが・・・。

史織「うぐっ・・・!!!」

流れ弾の直撃を受け、体勢が大きく崩れかかったところを、千鶴さんが狙います!

千鶴「い、今ですっ!たあぁぁぁぁぁぁ!!!」

史織「・・・っ!!!」

ガキィィィィン・・・!!

千鶴「いったあぁぁぁ・・・!えぇぇ、何なの?」

千鶴さんの近接術式は無防備のはずの史織さんに大きく弾き返されてしまいました・・・。

どうやら遂にその時が来たようです・・・。

史織「・・・ったく、やんなっちゃうわね。今のは一瞬たりとも油断してなかったはずなんだけどなぁ・・・。これが正に修行不足(・・・・)ってヤツなのかしらねぇ、永佳?そこに小冬もいるんでしょ?」

永佳「・・・ありゃ~、バレてたか。」

小冬「もう・・・、だから言いましたのに。隠れながら見る意味はない、と。」

物陰から永佳さんと小冬さんがお二人の決闘をひっそりと見ていたようです。

千鶴「ええぇぇっ!?え、永佳先生!!??と、小冬さん?ど、どうしてここに・・・。」

永佳「まあ、そんなことは後でいい。それよりも・・・。」

千鶴「えっ?」

史織「そう・・・ね、話はコレ(・・)が終わってからでいいわ。さあ、千鶴?私が修行不足だってことに気付かせてくれた・・・えぇーっと、そうね・・・。お礼(・・)仕返し(・・・)苛立ち(・・・)屈辱(・・)を、その身でしっかりと味わうがいいわ!!!」

千鶴「何だか最初の以外、私に得がなさそうなんですけど~!?」

史織「あっ、後、この辺り一帯の修繕作業、アンタんとこにも手伝ってもらうから。」

千鶴「えっ、修繕作業?ちょ、え・・・?」

永佳「小冬、ここを離れるよっ。」

小冬「え、えぇっ!?せ、先生?一体、どういう・・・。」

永佳「いいから!早く私について来い!!!」

永佳さんが小冬さんの腕を引っ張り、超急速で古屋図書館から離れていきます。

千鶴「あ、あれれっ?これって、もしかして・・・。」

史織「・・・、『天理相殺(てんりそうさい)』。」

史織さんの『天理相殺』が、展開されました。

千鶴「ああぁぁぁ・・・、なるほど。そりゃそうなりますよねぇ・・・。」

ゴォォゥゥンンンンンン・・・、ズゴガガアァァァァァァン・・・・・・!!!!!

・・・・・・

永佳「ほら、見たか?小冬。あれが史織の、本当の(・・・)本気の片鱗だよ。」

小冬「あぁっ・・・・・・。」

かなり遠くの上空から古屋図書館の方を眺める永佳さんと小冬さん。

小冬さんは、あまりの光景に少し言葉を失っているようですね。

永佳「でも・・・、ありゃ二割くらいかなぁ。」


 古屋図書館裏空き地に立ち込める砂ぼこりが晴れると。

史織「・・・っと。」

すっと降り立つ史織さん。そして。

千鶴「うぐぐぅぅ・・・・・・。」

地面に倒れて込んでいる千鶴さん。

この決闘、勝負ありのようです。

ですが。

史織「うぅっ・・・。」

ガクッ

限界(・・)体力の消耗のせいか、足から崩れ落ちてしまう史織さん。相当お疲れのようですね。

そして、辺りを見回します。

史織「あぁ~あ・・・。何にもなかった裏空き地が、ホントに(・・・・)何にもなくなっちゃったじゃない・・・。」

動けないのでその場で休んでいると、永佳さんと小冬さんが戻ってきました。

小冬「史織、大丈夫?」

史織「え、ええ・・・。ちょ、ちょっと肩貸してもらってもいいかしら・・・?」

小冬「あまり大丈夫ではなさそうですわね・・・。はい、史織。掴まって?」

史織「あ、ありがと・・・。」

永佳「ふふっ。じゃあ、私は千鶴の方を引き受けよう。神殿まで運んでやろうか・・・。」

と言って、永佳さんは千鶴さんを抱え、そそくさとその場を離れようとします。

史織「あっ!ちょっと、永佳!アンタにはまだ話が・・・、うぐっ!!」

小冬「あぁっ、史織!今は無理しちゃダメですわよ!」

永佳「ははっ、そうそう。詳しいこと(・・・・・)はまた今度、話したげるから。今日は休んでな。」

史織「ぐぬぬ・・・!」

永佳「・・・史織。」

史織「んっ、何よ?」

永佳「最後の見極めの判断(・・・・・・)、あれは良かったよ。ちゃんと自分の出せる力を把握できてるってことだ。それにしても全く、本当に大したもんだよ。」

史織「っ・・・。は、早く行きなさいよね・・・(照れ)。」

永佳「ふふっ。じゃあね、二人とも。」

小冬「は、はい。先生も千鶴さんをお願いしますね~。」

永佳さんはそのまま名草神殿の方角へと向かって飛んで行きました。

史織「・・・。」

小冬「あれ?史織、顔赤くなってません?」

史織「なっ、なってないわよ(焦り)!」

小冬「あ・・・。もしかして、先生に褒められたから、嬉しくって照れてるんじゃありません?」

史織「ちっ、違うから!もう~!早く居間まで連れてって!」

小冬「ふふっ、はいはい。」

時刻はもう夕暮れ時。お昼前から続いた史織さんと千鶴さんの決闘。・・・長い決闘でしたね。

まあいいでしょう。お二人はこの決闘を通じて、お互い成長へと繋がる何か(・・)掴めたはずですから。

何はともあれ、千鶴さんも史織さんを相手によく頑張りました。いやぁ、本当に。

こうして、若鄙の地に新たな強き人間(・・・・)の存在が確実に認識されたわけです。はい。

・・・いや、本当に人間さんなんですからね?

木実(・・)の技『鏡裏(きょうり)人形』

 鏡に映った実体を持たない虚像の存在を生み出し、自在に操る。虚像は映った元の存在と同等の性質を持つ。簡単に言えば、影分身のようなもの。光弾や光線くらいなら放てる。基本的には術者か相手を鏡に映しその虚像を操るものだが、操れる虚像は生物に限られているわけではない。この虚像は色や意思などは持たず応答や自律行動もできないが実体はないため、消滅条件が時間経過か術者による解除しかない。敵からの攻撃は一切受け付けないが虚像からの(・・・)物理的な接触には判定がある。決闘相手からすれば、邪魔な存在でしかない。

 木実は普段何か作業をする時に虚像を生み出し、作業を手伝ってもらったりするのに使用している。もちろん、今回の千鶴のように決闘の手助けをしてもらうことにも使用できるため、汎用性は高め。


〇千鶴の奥義『本所六十四の不可思議』

 多方向から相手を責め立てる、物量に任せた術式攻撃。変に軌道が読めない術式である点や相手を惑わせるような奇妙な術式である点を考えると、純粋な千鶴の力を存分に発揮できているものと言えよう。現時点で千鶴の持つ唯一の奥義。


〇史織の究極奥義『天理相殺(てんりそうさい)

 代々古屋一族に伝わっている一子相伝の術式における最高峰。発動後ある程度時間が経過すると、一定範囲全面へ(・・・・・・・)とんでもな術式が叩き込まれる。この術式はあらゆる道理を無視して相手を攻撃するため、防御不能の絶対技である。すぐさま回避しようとしても残念ながら、術者に攻撃対象(・・・・)と認識されている時点で既に回避は不能である。発動に必要な事前動作は一切なく、体力や魔力が残っていなくても発動できる。この『あらゆる道理を無視して攻撃する』性質は、例えば、相手が無敵状態になる能力を使用していたとしても、その『無敵状態になるという道理』を無視するということ。また、奥義発動の瞬間から術者はあらゆる道理を無視した存在となり、あらゆる攻撃を無効・弾き返す性質を持った結界に守られる。この『道理』もまた、前述の通りである。

 ・・・散々説明してきたが、要は文字通り反則級の絶対技(・・・・・・・)である。では、事前動作も必要なく体力がなくても発動できるこんなヤバい技を、なぜ史織は今まで使ってこなかったのか。答えは簡単。この技名に「相殺」という言葉があるように、あらゆる道理を無視する代わりに攻撃終了後は瀕死寸前の体力消耗状態になるから。相手との決闘に勝ったのを確認してから倒れる、くらいの感覚。実は威力を調節できるこの技。今回千鶴に放ったのは全力の二割くらいだと永佳は見ているが(二割でも超凶悪な威力だが)、威力が二割程であったとしてもその後の史織は自分では動けないくらいの損耗をしている。(全力ならもっと酷いことになる。)そんな諸刃技をほいほい使用するわけにはいかないというもの。だが、千鶴の強力な攻撃に追い詰められたことと千鶴には負けられない(・・・・・・)、いや、負けたくない(・・・・・・)という強い気持ちが、史織の本当の(・・・)本気である『天理相殺』発動へと至らせた、のかもしれない・・・。

 実は、これの上位技もあるらしい。・・・なんだそれ。

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