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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
摩訶不思議な人間と
41/94

〈後談〉一先ず、報告と休息の日

今回は〈後談〉なのに新キャラ登場とは・・・。


(何か、今回あんま話が進んでない気も・・・。)

 暑まし山での激闘からの翌朝。晴れやかなる天気は大抵はいつもと同じように気持ちの良い朝を迎えてくれるのです。

史織「すぅぅぅ・・・。くぅぅぅ・・・。」

午前八時、今日も快晴です。


 昨日の晩、史織さんと小冬さんは人里には寄らずそのままそれぞれの家へと帰りました。自警団への報告を済ませてからでもよかったのですが、人里はまだお祭りの最中。昨日は最後まで自警団にもお祭りを満喫してもらえるよう、報告は後日に改めてすることにしたのです。不用意に自警団の仕事が増えることになっちゃいますから。まあ、二人なりの配慮ですかね。

お祭りは年に一度、自警団も気合を入れて運営に臨みますからやや不測の事態となった『名草千鶴』さんの存在は少し手に余る事態だったわけです。


 史織「・・・う、うぅ~~んん・・・。」

午前十一時過ぎ、史織さんが目覚めました。

史織「ん~~・・・。うぅぅ~~・・・。」

なんとも寝覚めの悪いことです・・・(笑)。まあ、温かい目で見てあげましょう。

史織さんがゆたゆたと身支度をしていると、小冬さんがやって来ました。

小冬「史織ぃー。起ーきてまーすかぁー。」

史織「ううぅぅぅ・・・。こ、小冬ぅ・・・。お、おはよう・・・。」

小冬「はい、おはようございますわ。・・・今起きたばかりなんですのね。」

史織「ううぅんんん・・・。」

小冬「まあ、いいですわ。支度ができましたら、行きますわよ。」

とまあ、寝覚めの悪い史織さんを連れて小冬さんは人里へと向かいます。


 自警団本部にやって来たお二人。昨日のことを報告に来たんですね。

史織「ううぅぅ・・・、まだちょっと眠いわ・・・。」

小冬「ほら、シャキッとしてくださいな!本部に来たんですのよ。」

史織「う・・・、それは、そうね。・・・ん?」

すると、本部の中からとある人物が出てきました。

史織「・・・げっ、アレって・・・。」

???「うん・・・?おおぉ!史織に小冬じゃないか。久し振りだな!」

小冬「あら、先生!」

近づいて来ます彼女は間天楼永佳(まてんろうえいか)さん。里の皆から「先生」と呼び親しまれている方です。

永佳「二人揃って自警団(ここ)に用事か?」

小冬「はい。依頼完了の報告に来ましたの。先生は今朝戻られたんですの?」

永佳「ああ、そうだよ。人里に戻るのも半年振りだな。でも、ちょっとタイミングが悪かったみたいだねぇ。」

小冬「と、言いますと?」

永佳「だって、昨日に里の祭りが終わったって言うじゃないか!自警団(ここ)の上の連中が話してたよ。もう・・・、割と落ち込んでるんだけどねぇ・・・。」

永佳さんは、約半年周期で里の内と外を行き来しながら、とあること(・・・・・)をしているのです。今朝人里に帰って来たということは昨日までのお祭りを楽しめなかったというわけですね。少し気の毒です。

史織「・・・。」

永佳「ん?どうした、史織。黙りこくっちゃって。もしかして、稽古をつけて(・・・・・・)ほしいのかい(煽り)?」

史織「ち、違うわよっ!修行は・・・、もういいの!さっ、行きましょ?小冬。」

小冬「ああっ、ちょっと、史織ぃー!じ、じゃあ、先生。またー。」

と言って、小冬さんの腕を引っ張って行く史織さん。

永佳「ふふっ、相変わらず。史織の修行嫌いは直ってないみたいだねぇ。」

ふむ・・・。まあとりあえず、お二人は自警団本部の中に入っていきました。


 お二人はそのまま中にいる柊さんに依頼の報告を済ませました。

柊「・・・そう。ありがとう、二人とも。特に事件性はなかったみたいで良かったわ。」

史織「ええ。千鶴も今後は人里にやって来るだろうし、そのうちに里にも慣れていくと思うわよ。」

小冬「そうですわね。千鶴さんの身の安全も保障されてますし。あの二人の神様が近くにいますからね。」

柊「そうね。今度見かけたら私からも挨拶しておくわ。でも、史織ちゃん?いくら許されているからって、もう人を相手に(・・・・・)奥義を放ったり(・・・・・・・)しないでね?」

史織「わ、分かってるわよ・・・。反省してるって。」

柊「ふふっ、よろしい!」

小冬「ところでなんですが、柊さん。」

柊「なぁに?」

小冬「さっき入り口で先生に会いましたわ。今朝戻られたんですってね。」

柊「あら、もう会ってたのね。そうよ。本当は昨日か一昨日のうちに戻ってくれていた方がお祭りも楽しんでもらえたんだけどね。」

小冬「うふふっ、先生も残念がっていましたわ。」

柊「上層部からの連絡によると、またいつものように半年間は里にいてくれるそうよ。ふふっ、また部下たち(みんな)に稽古をつけてもらおうかしら。私も先生から色々と聞きたいことあるしね!」

小冬「私もまたお相手願おうかしら。座学の方もまた教えてもらいたいですわね。」

史織「はあ・・・。小冬も柊も、その修行に前向きな性格だけは理解しかねるわ・・・。」

柊「あら。自分に実力がつく実感ってなかなかいいものよ?ねぇ、小冬ちゃん?」

小冬「そうですわよ?一歩一歩着実に進むことができますから。」

柊「せっかく先生がいてくれるんだし、史織ちゃんも一緒にどう?私も一緒にやるよ?座学の方でもいいのよ?」

史織「・・・私は、ごめんだわ・・・。」

何だか史織さんだけが憂鬱な展開になっていますね。それにしても、永佳さんって一体どういう方なんでしょうかね・・・?


 小冬さんと別れ、人里から帰って来た史織さん。いつものように縁側でゆったり時空を満喫中です。

史織「ふぅぅ~~・・・。いい天気ねぇ・・・。」

午後三時、丁度小腹が空く頃ですね。史織さんも奧からお煎餅を持ってきました。

パリッ、はむはむはむ・・・

史織「いいわぁ~。この時間、この空間、たまんないわぁ~・・・。」

なんとも緩み切った顔ですね(笑)。いい笑顔ですよ。

すると、空から一人の来訪者が。

葵「おやおやまあ、なんとも緩み切った顔ですねぇ・・・。これがあの強者たる古屋の司書(・・・・・)の持つ一面とは。なかなかいいものが見れましたよ・・・。」

史織「むっ!アンタは・・・。」

シュタッ

と、葵さんのご登場です。

葵「どうもどうも。昨日は上手くやれたみたいですね。」

史織「まあね。あの暑いのだけはどうにもならなかったけど。」

葵「いやー、これで千鶴ちゃんも今までよりもっと自由に動けるようになりましたからね。私としても嬉しい限りですよ。」

史織「あっ!そういえば、アンタが千鶴を攫っていったんですってねぇ!何であの時言わなかったのよ!!」

葵「ふふ。だって、あの場でそう言っていたら貴方、私を真犯人扱いしていたでしょう?ちゃんと千鶴ちゃんの口から聞いた方が貴方も分かってくれると思いましたから。」

史織「うっ・・・。」

葵「まあ?実際は、真相を知らないで悩んでいる貴方を見てるのが面白かっただけですけどね(笑)。」

史織「うぎぎ・・・!バカにしてぇ・・・!」

葵「おっと、暴力は勘弁してくださいよ?それに、今日はただ何にもなしにやって来たのではありません。緋熊様から伝言を預かっていましてね。」

史織「緋熊・・・?あぁ、高御のこと。え、伝言?」

葵「まあ端的に言いますと、『世話になった。近いうちに千鶴を向かわせる。決闘の手ほどきでもしてやってくれ。』だそうです。」

史織「決闘の手ほどき?何で私がそんなことやんなくちゃいけないのよ。やーよ、私は。そう伝えて。」

葵「あの・・・、私は伝言係ではないんですが・・・。」

史織「そのうちまた神殿にも行くんでしょ?そん時でいいわよ。」

葵「じゃあ、そういうことで。たまに神殿にも遊びに行ってあげてください。千鶴ちゃんも人が来ることには抵抗ありませんから。」

史織「えー・・・。暑いの、もう嫌なんだけど・・・。」

史織さん自らが再び暑まし山に登ることは、当分はないでしょうねぇ。

そんなこんなで、今日も平和な一日が過ぎていくのです。

(皆の先生)間天楼(まてんろう) 永佳(えいか)   種族・天狐(てんこ)  年齢・成熟  能力・立派に教え育てる能力

 通称・永らえる教導者こと、天狐の怪異。古き時代から若鄙におり、知識・実力・技術を兼ね備えた優秀な怪異。人間好き。半年周期で人里の内と外を行き来して過ごしている。この若鄙に住む様々な者たちに教導することに日々を費やしている。普段は気ままで気さくな性格なのだが、教導態勢に入ると厳しさ(と優しさ)が追加される。

 人里が確立した初期の頃から彼女は人里に『座学堂』という名の学問施設を経営している。いわゆる寺子屋のようなもの。現在人里に暮らす大人たちは皆、この座学堂で様々なことを学んできた。そういう面から彼女は皆に「先生」と呼び親しまれているのだ。柊も小冬も史織も例外ではない。また、自警団の戦闘訓練師範としての肩書も持っている。一方、人里の外にいる間はあちこちを放浪しながら若い怪異たちに教導して回っている。やんちゃな怪異には厳しめの指導をしたりと怪異向けの教導を尽くしている。実は今いる怪異たちも彼女に教導された者が多くいるため、怪異の中でも「先生」と呼ぶ者が多くいる。こと決闘技術については彼女の教導を受けた者の方が多い。史織と小冬も幼少期の頃に座学と共に決闘技術についても教導を受けた。教導者の性か、少し説教臭くなる時がある。

 小冬と柊は特にわだかまりなく永佳との関係を保っているが、史織は少し彼女が苦手な様子。別に彼女が嫌いなわけでもなく「先生」として敬っている気持ちもあるのだが、修行・努力・訓練嫌いの史織には幼少期に永佳から受けた教導の反動が少しだけ残っているのかもしれない。「教導者」として永佳を見なければ、史織は永佳を「実力もあり頼りになる人物」だと認めている。

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