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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
摩訶不思議な人間と
39/94

〈最終面〉過保護な神様(前編)

むむっと、最終面です。この面にて今章の本筋は終了です。ん?何か忘れていないか、ですって?いやいや、そんなことはない最終面なのですよ。番外面は今章もありますけどね。

 史織「・・・ここね。」

暑まし山、頂上。遂に名草神殿境内までやって来た史織さん。

史織「・・・何だか寂れた本殿ねぇ。(うち)の母屋と古さは似たようなもんか・・・。境内は少し手入れがしてあるみたい。でも、最近になって(・・・・・・)やり始めたって感じがするわね・・・。」

???「・・・うん?誰だい、そこにいるのは。」

史織さんが少し境内を観察していると、本殿の中から誰かの声が聞こえてきました。

史織「むっ!いよいよお出ましってわけね。」

???「この気配は・・・、人間?」

がららぁ・・・

本殿の正面戸がゆっくりと開き、そこに堂々と立つ一人の者の姿が。

???「・・・・・・。」

史織「っ・・・!?」

その者のあまりの気迫に少し畏怖してしまった史織さん。

???「・・・あぁ、そうか。お前が・・・。」

史織「ア・・・、アンタがここの神様ってヤツね?こんなに強い力を感じるのは初めてだもん。一目見てすぐに分かったわ。」

???「・・・ええ、そうよ。私がこの名草の二柱の一人、緋熊(ひくま)高御(たかみ)。」

遂に現れました。この方がこの名草神殿に住まう二柱の神様のうちの一人です。

史織「・・・。」

高御「ふっふっふ、どうした?」

史織「いや・・・、何でもないわ。」

ん?どうしたんでしょうか・・・。

史織「葵から聞いたわ?ここに千鶴がいるって。ここに来れば大体のことが分かるってこともね。」

高御「ほぅ、葵から・・・。あの子には誰も神殿に近づけさせるな、とお願いしていたんだけどねぇ。」

史織「そんなことはどうでもいいの。それで?千鶴はどこ。」

高御「千鶴なら裏で少し作業(・・・・・・)をしてもらっているわ。」

史織「なら、案内してちょうだい。」

高御「それはできない。」

史織「は、何でよ?」

高御「そもそも・・・、千鶴とお前を会わせる気はない。帰ってもらおう。」

史織「イ・ヤ・よ。こんな暑い中わざわざやって来て、やっと辿り着いたって言うのに。冗談じゃないわ!さっさと千鶴を呼びなさい!」

高御「・・・ふっふっふ。そうかそうか・・・なるほど、面白い・・・。あの葵(・・・)が通した人間だものな、お前は。いいだろう、相手をしてやる。」

史織「ふんっ!結局そうなるのね・・・。いいわっ!アンタを叩き伏せて、ついでに、千鶴もまとめて叩き潰してやるわっ!!!」

高御「我が神の力を恐れぬ人間、古屋(・・)の者よ!我が力に打ち勝って、その真なる強さを我に示してみよ!!!」


 むむむ、何だかすんなり決闘の流れへと持ち込まれましたね。まあ、いいでしょう。神様が相手であろうと、史織さんのやる気に変わりはありませんからね。

史織「(とは言ったものの、さすがにそろそろ暑さがキツい・・・。長期戦は不利になるだけだわ。)」

午後六時頃になり日が沈みかけの今でも、暑まし山の気温はずっと変わらないままなんですよね。

史織「てわけで、速攻勝負よ!『半月心霊』!!!」

高御「っ!?」

久方振りの『半月心霊』ですね。さすがの高御さんも少し驚いています。

二人分に分かれた史織さんが高御さんを惑わせるように飛び回りながら、四方に術式を放ちまくります。

高御「・・・。」

しかし、術式を受け止めながら冷静にそれを見極める高御さん。

史織「ふん!何よ、見極めるばっかり?甘く見られたもんね。だったら!」

と、二人の史織さんが体の向きを高御さんの方に構え直し。

史織「二人分合わせた術式の力を、喰らうがいいわっ!!」

二手から一気に高御さんとの距離を詰めます!

史織「たああぁぁぁぁぁ!!!」

高御「・・・甘いな。」

ピキイイィィィィィン・・・!!!

高御「こっちが本物だな。」

史織「なっ・・・!?」

チュドォォォォン!!!

ドザッ、ドザッ、ドザザザァァァァ・・・!!!

高御さんの攻撃を至近距離で受けた史織さんは大きく吹き飛ばされ、そのまま地面へと叩き付けられてしまいました。

史織「うぐぅっ、げっほげっほ・・・。ア、アンタ・・・、今、何で私本体の方が、分かったのよ・・・?」

そうです。高御さんは攻撃の寸前で本体側の史織さんの方を予言しています。

高御「・・・ふっ、私の力を見誤ったか?古屋(・・)の者ともあろう者が、まだまだ修行が足りないようだな。」

史織「くっ・・・!」

高御「さあて、では私もそろそろ力を使っていくとするか・・・。」

高御さんがゆぅ~~っくりと宙へ浮いていきます。

高御「古屋の(・・・)、私を失望させてくれるなよ?」

史織「ふんっ!まだまだこれからよっ!!」

高御「すぅぅぅ・・・、はあぁぁっ!!」

(シュインッ、シュインッ、シュインッ!)

史織「(・・・何かが周りに?)」

高御さんの掛け声と同時に二人の周囲に見えない何か(・・・・・・)が展開・配置されたようです・・・?史織さんもその優れた勘で何かを感じ取った様子・・・。

高御「ふふ、お前に見切れるかな?『実体のない反面鏡』。」

ピュン、ピュン、ピュン!

高御さんからいくつか光弾が放たれます。

史織「ふん、こんな薄い攻撃じゃ当たんないわよ!」

ピュン、ピュン、ピュン!

放たれる光弾をするするりと避けていく史織さんですが。

・・・ピュン、・・・ピュン、・・・ピュン!

史織「っ!?うわっととと!な、何!?後ろから!?」

なんと!高御さんから放たれた光弾が周囲の四方八方あちこちで反射しまくっています。史織さんが避けた光弾もそのまま前から後ろから横から上から下から斜めから、次々と跳ね返って来ます。

史織「ちょ!何よコレー!?」

ふふふっ、一生懸命頑張って何とか光弾を避けている史織さんの姿を見ると、何だか手のひらで踊らされている小鳥みたいに思えてきました。ふふふっ、笑ってはいけませんね。

高御「はっはっは!どうした?こんなのはまだ序の口だぞ?」

高御さんも笑っています。見ているだけなら、こうも微笑ましく面白く感じてしまうのはなぜでしょうか(笑)。

史織「うぎぎぃぃ!ちょこちょこと鬱陶しいわね・・・!」

しかし、やはりここまで光弾に当たらないのはさすがですね。勘と反応力は超一級品です、史織さん。

史織「ええぇい!『十方封鎖』!!!」

シュババババッ!!!

プシュゥゥゥゥ・・・

高御「っ!?」

史織さんの『十方封鎖』により周囲にあった見えない何か(・・・・・・)の効力を打ち消しました。反射しまくっていた光弾もようやく沈静化しました。

史織「ふぅ・・・。これで一先ずは落ち着けるわね。」

高御「ほぅ・・・。なかなかやるじゃない。」

史織「何だかよく分かんないけど、今ので(・・・)アンタの本質が見えたような気がするわ。さあ、余裕こいていられるのも、ここまでよっ!」

高御「ふっ、いいだろう・・・。もっと、我にお前の力を見せてくれ!!!」


 後編へ続く

(名草(なぐさ)の二柱の一人)緋熊(ひくま) 高御(たかみ)   種族・神(鏡の神)  年齢・成熟  能力・『実』を司る能力

 この若鄙に古くから君臨する力のある神の一柱。通称・真実を映す神。古き時代からこの名草神殿にもう一柱の神と共に住んでいる。若鄙に八百万いる神の中でもこの名草の二柱は力がある方。力というか神格がある。話の分かるとても寛大な性格であり、呑気。いつでも落ち着いていて物事を広く見ることができ、大局観がとても優れている。話を聞く限りでは千鶴とはもちろん葵とも顔馴染みのようだ。

 史織が千鶴の下へやって来たことに対し、それを阻もうと立ち塞がる。話し振りから史織のこと、というか(かつ)ての古屋一族のことも知っている様子。何か訳ありなのは自明だが、何か史織を試そうともしているような。早く事情説明が欲しいところ。


〇高御の技『実体のない反面鏡』

 周囲に不可視の大きな鏡を生成し、自身の光弾を反射させまくる。反射回数に限りはなく、一発目の光弾もずっと反射し続ける。不可視の鏡とはいうが、実際に触れることはできない。ただ光弾を反射させるためだけのもの。だが、その反射は予測不可能なものが多く、光弾の軌道先を読むのは至難。難易度は高めなのだが高御曰く、「まだまだ序の口」とのこと。史織が避けられるのはもはやご愛嬌。


〇史織の技『十方封鎖』

 周囲全方位に向かって高速の封印術式を放つ。当たった対象の持つ特殊な(・・・)効果や性質を封じる。あくまでも特殊な(・・・)効果や性質を封じるだけなので、特殊ではない効果や性質はそのまま。攻撃判定はない。史織はむやみやたら感に放つ癖がある。この辺は史織の性格が出ているのかもしれない。

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