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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
摩訶不思議な人間と
38/94

〈第六面〉暑いのは苦手(後編)

今回、後書きが大量です。まあ、作者が書きたいだけなので、気にしたい方だけチラ見して下されば・・・。

 さあさあ。決闘が始まると、葵さんは素早く光弾を放っていきます。

ピュンピュンピュンッ!

史織「ふん・・・。」

パスパスパスゥーン・・・

史織さんは冷静にシールドで防ぎます。問題ないですね。

史織「(今の感触、アイツ(・・・)のと・・・。)」

葵「うむむ、やはり普通の(・・・)光弾程度ではどうにもならなさそうですね。」

史織「あら、意外と理解が早いのね。面倒なのは嫌いなのよ、ちゃっちゃと手を変えたら(煽り)?」

葵「むむっ!何だか煽られてる気がしますね。ですが、この私に煽りが効くと思ったら大間違いですよ!」

と言いつつ、再び光弾を放つ葵さん。

ピュンピュンビュンッ!

史織「ん・・・。」

パスパス・・・

再び冷静にシールドで防ぎ・・・!?

史織「っ!!??」

さっ

咄嗟に三波目の光弾を回避する史織さん。

避けた三波目の光弾がその直後。

ぐにゅぉぉぉん、ボンンンッ!!

葵「・・・おや。」

なんと!破裂した三波目の光弾は何か特別製のものだったようですね・・・。それを寸でのところで回避した史織さんは奇妙な効果を受けずに済んだようです。三波目をシールドで防いでいれば、何か悪影響があったことでしょう・・・。

史織「・・・ふっ、面白いじゃない。妙な術を使うのね。」

葵「うーむ・・・、正直今のをかわされるとは思いませんでした。そのまま防いでくれていれば良かったものを・・・。」

史織「私の勘を甘く見ないことね。」

葵「さすがは古屋の(・・・)、といったところですね。まあいいでしょう。強者(・・)との決闘に力の出し惜しみは無用ですね。」

史織「全く、怪異ってヤツはどいつもこいつも一緒なのね・・・。いいわよ、きなさいっ!」

葵「この動きについて来れますか?『豪放磊落(ごうほうらいらく)鳥捌(とりさば)き』!!!」

ズバーーン!!

辺り一帯の広範囲を多数の大小様々な鳥型光弾が覆いつくします!列に沿って飛び交う鳥弾は思わず見とれてしまうような魅力があります。

シュンシュンシュンシュンシュン・・・・・・

史織「ううぅぅぅ・・・。迂闊に動けないわね・・・。」

そして、葵さんが構えを決めると。

シュンッ!!!

史織「っ!」

それまできれいに飛んでいた鳥弾が無秩序不規則に高速で史織さん目掛けて突っ込んできました!

ギリギリで回避した史織さんですが、その後も間髪を入れずに次から次へと鳥弾は突っ込んできます。

シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!

史織「うっ・・・!このっ・・・!ちょ・・・っと!危ない・・・って!」

いやぁ・・・。しかしまあ、ギリギリとはいえよくもあそこまで避けられますよね。行動を制限されているというのにそれでも尚、高速の鳥弾を避けられるんですから。

実は『豪放磊落の鳥捌き』発動中の葵さんは、不動のまま目を閉じています。集中しないといけないんですね。なので、実際に史織さんが今どうなっているのかは史織さんの声だけでしか分かりません。

葵「(あれ~・・・?今これどうなってるのかしら。当たったとも当たってないとも言えるような声・・・。この技は当たった時の感触がないのが欠点よね。)」

しかし史織さん、避けてばっかりじゃ決闘は決着しません。

どうやら飛び交う鳥弾の中を思い切って突き進むことにしたようです。

史織「(うぬぬぅぅ・・・、今っ!!)」

バビュゥゥゥン!!

ですが、近づいてくるその気配に葵さんも気付きます!

葵「はっ・・・!あっ、やっぱり当たってなかったんですか!?」

史織「なかなか手こずったけどねっ!!」

バシコーン!

史織さんの術攻撃が葵さんに決まりました。

葵「うぐぅっ・・・!で、では、今度はこれで!『幻鳥(げんちょう)ウォーゲル』!!!」

スバァァァッッ!!!

大きな鳥弾(以下、本体と呼びます。)が勢いよく史織さん目掛けて放たれます!避ける際には本体に付随した周囲の光弾にも注意です。本体を避けようとすると周囲の弾に当たってしまいますからね。

しかし、史織さんは待ってたと言わんばかりのこの表情。本体が迫る中、不動の構えです。

ふふふ、どうやらあれ(・・)の出番ですかね?

史織「ふふっ、イイの(・・・)が来たわね。こういうのこそ返し甲斐(・・・・)があるってもんよ!」

葵「何を・・・!?」

さあ・・・。では、いつものを、お願いします!

史織「お返しよっ!『到来返戻』!!!」

スウゥゥゥッ・・・、バァァン・・・!!

決まった!史織さんの到来返戻が炸裂ぅっ!

・・・そう。『到来返戻』は確かに(・・・)葵さんに炸裂しました。

ですが・・・。

史織「・・・。手応えが無さすぎる・・・。何で・・・?」

爆風が晴れると、そこには葵さんの姿がしっかりと。

葵「ふむ・・・。いやはや、なるほど。これが古屋の(・・・)本領といったところなんですね。」

なんと、葵さんの技『幻鳥ウォーゲル』の本体(・・)を直接返されたはずなのに葵さんはピンピンしているのです。これは一体・・・?

葵「さすがは、噂になる程の人間ですね。」

史織「・・・・・・。あぁ、そうか。そういうことね・・・。」

ん?一体何に気付いたというんですか、史織さん?語りの者には何のことやら・・・。

葵「おや、気付かれちゃいましたか。あいやー、どうにもこうにも貴方には敵いそうにありませんね、これは・・・。」

史織「まあ、終わった後からでないと気付けなかった辺り、私もちょっと調子に乗っていたみたいね・・・。悪い癖だわ。・・・さあ、私はまだまだやれるわよ?」

葵「いえ・・・。降参です、ここまでにしましょう。正直、ここまで気付かれる(・・・・・)と単純な実力勝負で貴方に敵う気がしませんから。」

史織「ふう・・・、そう。ま、そう言うなら、そういうことにしてあげるわ。」

おやおや。ということで、この決闘、勝負ありのようです。


 史織「それで?まずは私をバカにした謝罪の言葉から聞かせてもらおうかしら(怒)?」

葵「いだだだ、痛いですってぇぇ。もう、すみませんでしたってぇぇ。いだだっ。」

史織さんが葵さんの頭をグリグリしています。うーんと・・・、憂さ晴らし?

史織「あのバカ鷺にもちゃんと言い聞かせておきなさいよね?もう!」

ま、まあ、もうそのくらいにしてあげてくださいな・・・?

葵「あの子には気のまま風のまま好きなようにさせてあげたいんで・・・。」

史織「はあ・・・、もういいわ。じゃあ本題だけど、千鶴のこと。何か知ってるんでしょ?」

葵「と言うか、まずなぜ貴方は千鶴ちゃんのことを探っているんです?」

史織「人里自警団本部からの正式な依頼よ。『名草千鶴の調査』ってね。」

葵「あぁ、なるほど・・・。そういうことでしたか。そりゃそうですよね、人里であんなに騒ぎになるようなことをしでかしちゃったんですからね。」

史織「それで?今千鶴はどこにいるの?アンタが匿ってるんでしょ?」

葵「正確に言うと、匿ってはいないんですけどね。千鶴ちゃんなら、今も神殿にいると思いますよ。」

史織「神殿ねぇ・・・。まあ、そうだとは思ってたけど。でも、やっぱりあの時・・・、大会決勝戦中に突然行方を眩ませた原因は結局分からないままなのよねぇ・・・。怪異による誘拐説がもう、あんま無さ気な感じがしてきてるし・・・。」

葵「え。」

史織「え?」

葵「・・・ああ。そこにはまだ気付いてなかったんですね。くすくすっ(笑)。」

史織「ん?何よ。」

葵「ふふっ、まあそれはいいじゃあないですか。さ、約束は果たしましたよ。千鶴ちゃんの詳細が気になるのでしたら山の頂上、名草神殿へ行ってみるといいですよ。」

史織「・・・?まあ、いいわ。言われなくても、行かせてもらうわよ。」

葵「あ、くれぐれももう山では暴れ回らないよう。お願いしますよ。」

史織「はいはい。もうこれ以上、戦って暑くなるのもごめんだし。大人しくしてるわよ。」

ああ、おかげ様で汗がいっぱいですね。

すぅーっ、と先へ進んでいく史織さん。まあこれ以上、決闘の心配はないと思いますから。なるべく涼みながら進んでください。

葵「あの人間、古屋史織と言いましたか・・・。あれほどの者がまだ千鶴ちゃんと年が近いだなんて。こんな運は早々ないでしょうねぇ。さて、後はあの方たち(・・・・・)が上手くやってくれることを祈りましょうか・・・。私が彼女を通した真意を暗に汲み取ってくれることも祈りながら、私は皆に彼女の邪魔をしないよう勧告しに行きましょうか。」

午後五時半、少し日が沈みかけた頃。日が沈もうとも、暑まし山の暑さは変わりません。

さあ史織さん。名草神殿へは、後もう少しです。

〇葵の特有光弾

 決闘で使用される光弾は一般の性質のものと、その人間や怪異によってそれぞれ特有の性質のものがある。柊には柊に、千鶴には千鶴に、葵には葵にそれぞれの特有光弾がある。葵の特有光弾は葵の能力が活きるものになっている。史織が勘で咄嗟に避けた「三波目の光弾」がその特有の光弾で、『幻惑』の性質がある。通常の光弾との見分けが付かず、それでいて命中した相手の意識を鈍らせる性質を持っている。史織がこれを見破れたのは勘。また、史織は葵の光弾を千鶴の光弾と似たものを感じたようだ。


〇葵の技『豪放磊落(ごうほうらいらく)鳥捌(とりさば)き』

 辺り一帯広範囲に大小様々な鳥型の光弾を飛び交わして相手の行動範囲を制限する。鳥弾は一定の軌道上を規則正しく飛び回り続けるのだが、葵が構えを決めると無秩序不規則に対象目掛けて高速で突っ込んで来るようになる。基本的に避けられるわけがない凶悪な技。使用中、葵自身も視界を失い不動のまま集中しなければならないという強い制約を受けるものの、多分割には合っている。


〇葵の技『幻鳥(げんちょう)ウォーゲル』

 大型の鳥型光弾(以下、「本体」と記載)を生み出し相手に放つ。この放たれた本体に付随して周囲に広くばら撒かれる光弾にも注意が必要。この本体は真っ直ぐ飛んでいくが、狙った対象をある程度(・・・・)だけ追尾する(ほんのりとカーブするくらい)。本体は生み出される過程を見ただけですぐに強大かつ強力な光弾であることが分かる。迫って来る本体を見ただけでも防ぎようがなく避けるしかないという印象を受けるため、本体を仮に避けられたとしても、周囲のばら撒き光弾に当たってしまう可能性が非常に高い。正面突破(・・・・)が非常に難しい攻撃。

 ・・・いや、違う。『幻鳥ウォーゲル』は、文字通り正面突破(・・・・)が最も楽にやり過ごせる攻撃なのだ。実はこの本体、見た目は凄く強力そうに見えるのだが、本当に見えるだけ(・・・・・)。光弾自体は大きいのだが、実際の威力は本当に限りなく低い。なので、実は本体をそのまま正面から受けるのが最も楽。(ばら撒き光弾は正面には飛んでこないため)この技の真骨頂は「見た目の凄さから本体を避けようとした相手を周囲のばら撒き光弾でハメる」というもの。史織の『到来返戻』が決まったのに手応えが無かったのは元々威力の低い本体を葵に返したところでダメージは全く期待できないからだ。相手の技の威力を五割増しで返す『到来返戻』とは実は相性が悪かったのだ。


(補足)

・史織は葵とのこの一戦だけで葵の技の性質(『詭術』的な要素)にほぼ気付いている。葵の本領ともいえる『詭術』を交えた攻撃だったのだが、さすがは史織といったところか。聡明な葵は『詭術』が見抜かれたと悟るとすぐに降参を選んだ。さすがに、『詭術』の通じない史織相手に実力では敵わないと悟ったのだ。


・実は葵こそが千鶴を人里上空で攫った(?)張本人。何か裏を知っているような様子だが・・・。

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