〈第四面・裏〉とりあえず、話を聞いて?
前回同様少し短め(?)な回です。表と裏でそれぞれ二人の様子を描いてみましたがどうですかね?何かそれっぽく(?)なっていたらいいですね(意味不明)。
少し時は遡り、小冬さんの様子はというと・・・。
小冬「もし?そこのあなた、少しお尋ねしてもよろしいかしら?」
人里の南側を飛行中の小冬さん。出会った怪異とすぐさま決闘になってしまった史織さんとは異なり、小冬さんは近くにいた怪異に少し話を聞こうとしているようですね。小冬さんは冷静で助かります。
???「あぁっ・・・、えぇっと・・・。」
小冬「あの、もし?聞こえていますの?」
???「そ、そのぉぉ・・・。あうぅぅ・・・。ぐすっ。」
小冬「ええぇ!?ど、どうして泣くんですの???」
おやおや、どうにも意思疎通が上手くいっていないみたいですね。
するとそこに、もう一人別の怪異もやって来ました。
???「こらぁぁぁ!!!シルちゃんをいじめるなぁぁ!!!」
小冬「あわわ。い、いえ、別に私は苛めてなど・・・。」
新たにやってきた怪異は泣き出してしまった怪異のことを『シルちゃん』と呼びましたね。
この『シルちゃん』と呼ばれる方、正確なお名前はシルビーティンさんといいます。略してシルちゃんです。語りの言葉では、『シルちゃんさん』と呼ぶことにしましょう。
シル「あっ・・・。ネ、ネリーちゃん・・・。ち、違うの・・・。べ、別に・・・。」
どうやらもう一人の怪異はネリーさんというようです。
ネリー「もう大丈夫だよ、シルちゃん!こいつはあたしがやっつけてあげる!」
シル「き、聞いて・・・?ネリーちゃん・・・。ちょ、ちょっと待って・・・?」
小冬「いや、ですから、私は彼女に話を・・・。」
ネリー「言い訳無用!友達をいじめるやつは、あたしが許さないぃぃ!!!」
と、こちらでも決闘が始まってしまいました・・・。いやはや、仕方ありませんね。小冬さんの相手はネリーさんです。
ネリー「うおぉぉぉ!!!」
小冬「くっ・・・。こうなってしまっては一度大人しくさせるしかありませんわねっ!」
二人の決闘が始まる中、シルちゃんさんはその風景を見て。
シル「あぁっ・・・。えっと・・・。や、やめっ・・・。うぅ・・・。」
二人の決闘を止めようという意思が感じられますが、いかんせん言葉が出せないようです。無益な争いは好まない性格の怪異なのでしょうかね。
ところがどっこい、二人の決闘は止まりません。
・・・・・・
やや小冬さんが優勢に決闘が続き、十分程が過ぎた頃。
ネリー「うぐぅっ!」
小冬「さあ、これで決めます!」
ネリーさんの体勢が崩れた隙に、小冬さんが型の構えを取ります。
と、その時!
シル「ま・・・、待ってえええぇぇぇぇぇ!!!!!」
バキュオォォォォォン!!!!!
小冬「ぐっ・・・!?」
ネリー「うっ・・・!?」
スゥゥゥ・・・
シルちゃんさんの魂の叫びが辺り一帯に響きました。
その声の響きに小冬さんも思わず構えを解いてしまいました。
シル「はぁ・・・、はぁ・・・。」
ネリー「シルちゃん・・・?」
シル「ネ、ネリーちゃん!ち、違うの!その人はわたしをいじめてたわけじゃないの!」
ネリー「え。そうなの?」
小冬「だから、初めからそうだと言ってましたのに。」
ネリー「なぁんだ。悪いやつじゃなかったのか。そうかそうか。」
・・・おや?何だか和解できた様子ですね。
どうやらこの決闘、中断により送り流れになりました。
・・・・・・
ネリー「そうかそうか。こいつはシルちゃんに質問してただけなのか。また早ちりとんしちゃったな。」
シル「ネリーちゃん・・・、それを言うなら早とちりだよ・・・。」
ネリー「おお!そうかそうか。おい、人間。シルちゃんはちょっとだけ、恥ずかしがり屋さんなんだ!ゆっくり丁寧に話すんだぞ!そういや、名前は何だ?あたしはネリーっていうんだぞ。」
シル「わ、わたしは、シルビーティン・・・です。」
小冬「これは、ご丁寧にどうも。私は小冬といいますわ。」
お互いそれぞれ自己紹介もできたところで。
小冬「それでですが、お二人に少し聞きたいことがありまして・・・。」
・・・・・・
ネリー「う~ん・・・。人間って、人里の外にもいっぱいいるんだっけ?」
シル「えぇっと・・・、あ、あんまりいない・・・と思うよ。」
小冬「ま、まあ、私を含めて二人いることは分かっているんですけど、今話した後もう一人がいるんじゃないかって思っているんですの。ご存知ありません?」
ネリー「むむむ・・・。あたしは知らないなー。シルちゃんは?」
シル「わ、わたしも・・・。」
小冬「そうですか・・・。うむむ・・・。」
ネリー「・・・。じゃあ、捜すの手伝ってあげるよ!」
小冬「えっ、いいんですの?」
ネリー「急いでるんでしょ?だったら、一緒に捜した方が早く見つかるよ!ね?シルちゃん!」
シル「う、うん!わたしも、手伝います・・・。」
小冬「ありがとうございますわ。助かります。」
ネリー「いいってことさ!さっきの早ちとりのお礼ってことよ!!」
シル「ネリーちゃん・・・、それを言うなら早とちりのお詫びだよ・・・。」
ネリー「あっはっは!そうかそうか。じゃあ、あたしたちは他の友達に色々と聞いて回ってみるよ。何か分かったら教えに行くからー!」
シル「あっ・・・。で、では、また・・・。」
そう言うと、シルちゃんさんとネリーさんが情報収集しに行ってくれました。史織さんの時と同様、何か収穫があることを祈りましょう。
(恥ずかしがり屋)シルビーティン 種族・消極 年齢・盛り時以下 能力・声が相手の心に響く能力
ふらふらとお散歩中、小冬に話しかけられてしまった消極の怪異。通称・寡黙なる声。臆病で引っ込み思案なので、初対面の相手とはほぼ確実に話ができない。ただ話ができないだけで、本人は何とか頑張って意思疎通を図ろうと奮闘している。決闘はあまり好まない温和な性格。好みはしないのだが、実は強い。種族性ゆえにあまり友達は多くなかったのだが、ネリーと友達になってからは顔も広くなってきている。ネリーは数少ない強力な理解者。普段から声は小さいが、思いを込めた大きな声は相手の心に必ず響く。
(早ちりとん)ネリー 種族・積極 年齢・盛り時以下 能力・元気分を分け与えられる能力
シルビーティンの下にすぐさま駆け付けた積極の怪異。通称・潔い元気。思いやりがあり、とことん元気な性格。誰とでも仲良くなれるタイプだが、友達を傷つける者には強い敵意を向ける。思いは真っ直ぐなのだが、いかんせん早とちりが過ぎる。ヤバい。シルビーティンも本当に手を焼いている。後、同年代の怪異と比べても、知能がやや低い。言葉を間違えてシルビーティンに訂正されるのは、もはやお決まり。まあ、その分元気でいいやつなので大目に見よう。全ての生物は『元気分』と呼ばれる元気の源のようなものを一定数持っている。ネリーはそれを操ることができ、自分の分を誰か(植物などでも可)に分け与えて相手を元気にすることが可能。ネリーの元気分一割だけで百人分を元気いっぱいにすることができる。それくらいネリーの元気分は強力かつ多量である。