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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
摩訶不思議な人間と
30/94

〈第二面〉決勝戦の行方

今回、少し長引いてしまいました・・・。終わりどころがなかなか決められなくて、つい・・・。すみませんねぇ。

 主審「では、上の組・決勝戦、開始ぃぃ!!」

千鶴「はあぁぁぁっ!」

ピュンピュンッ!

千鶴さんが光弾で先制攻撃を仕掛けます。

史織「・・・。」

パスゥーン・・・

史織さんは不動のままシールドで防御しました。

千鶴「っ、たあぁぁぁ!!」

パシュンパシュンッ!!

更に攻撃を続ける千鶴さん。

史織「・・・。」

パスパスゥーン・・・

これまた不動のままシールドで防御する史織さん・・・。何か探っているように感じられますね。

千鶴「・・・受けてばかりで攻撃してこないんですか?」

史織「・・・いいえ?ちょっと・・・ね・・・。」

千鶴「・・・。まあ、別にいいですけど。てぇぃっ!!」

パシュンッ!!

史織「・・・んっ!!」

パキィィィン!!!

千鶴「なっ!?」

千鶴さんの光弾を剣で弾き飛ばしてしまった史織さん。観客からも歓声が上がります。

史織「・・・。どうやってアンタが小冬に勝ったのかは分かんないけど、この程度じゃ私には勝てないわね。」

少し余裕を見せる史織さん。千鶴さんの実力を推し量ったとでも言うのでしょうか・・・。

千鶴「うぬぬ・・・。だったら!」

史織「(っ、ようやく本領を見せてくれる気になったようね。さあ・・・、きなさい!)」

千鶴「うぬぬぬぬぬぬ・・・、えやぁぁぁ!!!」

ぴちゅんっ・・・!

史織「っ!!??」

ちゅどぉぉぉぉぉん!!!

千鶴さんが声を上げたその瞬間、史織さんの頭上から一筋の光線が降ってきました。着弾と共に大きな爆発も起き、会場は強い突風に煽られています!

千鶴「(ふう・・・、何かとりあえず(・・・・・・・)上手くいってよかったぁ・・・。上手くいくか分かんないのはいつものことだけど。)」

さあ、光線と爆風を受けた史織さんは・・・?

史織「へぇ・・・。こんな真似もできるんだ・・・。だけど、これじゃあまだまだね。」

千鶴「えっ・・・、嘘っ!?」

さぁーっと煙が晴れていくと、そこには頭上の光線をシールドで受け止めている史織さんの姿が。さすがは史織さん、よくあの光線に反応できましたね。

史織「さぁてと・・・。じゃ、コレ(・・)は返すわ。」

千鶴「へ?」

史織「『返戻到来』!!!」

すかさずその光線を『返戻到来』で千鶴さんに返します!

千鶴「わああぁぁぁ!!!ちょっと待って待って待ってぇぇぇ!!!」

史織「う・る・さ・い!そぉらぁぁぁ!!!」

ぴぢゅぅぅぅん!!!

千鶴「あわわわわわわ!」

すると・・・。

千鶴「~~~~~!!!」

千鶴さんが何かを叫んだその瞬間。

パキィィィン!!!

ぴぢゅぅぅんん??!!

史織「えっ・・・。」

ぢゅどおおぉぉぉぉぉん・・・!!!!!

とても大きな爆発に見舞われる会場・・・。観客もその大きな爆風を堪えるので精一杯。

十数秒程経ったくらいでようやく煙が晴れてきました。

舞台場の上には・・・。

千鶴「うううぅぅぅ・・・。あ・・・、あれ・・・?」

しゃがみ込んで怯えている千鶴さん。どうやら何が起きたのかよく分かっていないご様子。

そして・・・。

史織「・・・うぐぅっ。・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

っ!!??し、史織さんが舞台端まで吹き飛ばされたのか、なぜか満身創痍に!壁に寄り掛かって何とか立てているような状態です。こ、これは一体・・・?

千鶴「・・・?ん?あれ、私、無事だわ・・・。どうして?」

史織「・・・っ、ぐはぁっ・・・!ア、アンタ・・・、い、今・・・、何を・・・!?」

千鶴「・・・えぇっ!?逆にどうして貴方がそんなボロボロに・・・?」

史織「(コ、コイツ・・・!今、自分が何したのか気付いてない・・・!?今、確かに私の『到来返戻』がアイツに届く直前で跳ね返って来たわ・・・!不意すぎてさすがにちょっと反応できなかったわ・・・。ギリギリ直撃は免れたけど、マズいわね・・・。今のダメージが大きすぎる・・・。)」

千鶴「えぇっと、よく分からないですけど。何だか私・・・、優勢?」

史織「ぐっ・・・!」

ダメージが大きいせいでその場から動けない史織さん!これは勝負あったか!?

千鶴「じゃあ・・・。悪いですが、貴方にはここで敗れてもらいましょう。私にも役目(・・)がありますので。」

何か攻撃の構えを取り、術のようなものを唱えながら史織さんに歩み寄って来る千鶴さん。

んー・・・。でも千鶴さん、目を閉じたまま歩くのは危ないですよ?

史織「うっ・・・!こうなったら、乾坤一擲よっ!」

ぶぉんっ!

バシュッ!

千鶴「あだっ!」

史織さんの投げた剣が千鶴さんのおでこに命中。剣はそのまま千鶴さんの頭上へ高く・・・。

そして。

千鶴「いったぁぁ~。もう何?何が・・・。」

しゅんっ!

史織「これで、仕舞いよ!!」

千鶴「へっ!?」

史織「『刹那魂砕』!!!」

ドキュオォォォォン・・・!!!

一瞬の・・・というよりもう少し長いくらいの油断をついて、史織さんは千鶴さんの懐へと飛び込み渾身の一撃。

・・・あれ?『刹那魂砕』って人間に当てて大丈夫なんですかね・・・、史織さん?

千鶴「うぐゅぅぅ!!!」

バシュコォォォォン・・・

千鶴さんが大きく空高く打ち上げられてしまいました。その間に史織さんの剣は・・・。

ひゅんひゅんひゅんっ

ぱしっ!

千鶴さんを打ち上げたその場で、またもや見事に剣を掴み取る史織さん。

ですが・・・。

史織「うぐぅぅ・・・、だあぁぁぁー。もうダメ。」

ばたん

舞台場にそのまま仰向けに大の字に倒れ込んでしまいました。

史織「はぁ・・・はぁ・・・。一体・・・さっきのは・・・何だったのよ・・・。」

その時。

シュンッ・・・!

史織「ん・・・?」

空高く打ち上げられた千鶴さんの体を掠め取って行くかのように、上空で何かが千鶴さんの近くを高速で飛んで行くのを見た史織さん。

主審「あ、あの・・・、史織さん?」

史織「ああ、そうね・・・。ちょっと待ってて。」

審判員たちも今の状況をどう判断すればいいのか分からない様子。そりゃそうですよね。史織さんは舞台上で動けずに寝転がり、一方千鶴さんは攻撃を受けて空高く吹き飛ばされている状況。どうすればいいのやら・・・。

すると。

史織「あっ。」

ひゅんひゅんひゅんっ

からんっ、からんころんころんころん・・・

空から千鶴さんの手持ち武器の長い棒が落ちてきました。

史織「アイツは・・・、降りてこないわね・・・。」

史織さん→意識はあるが動けずに寝転がっている。手持ち武器はしっかり持っている。

千鶴さん→空に打ち上がったまま降りてこず消息不明。手持ち武器は落下。

よって・・・で、いいんですかね・・・?

主審「えぇっと・・・。勝負あり!!優勝は、古屋史織さん!!!」

おおぉぉぉー、っという歓声が一段と大きく上がります。史織さんの優勝を称える声も数々聞こえてきます。

ささっと史織さんに近づく主審。小声で話しかけます。

主審「えっと、史織さん。名草千鶴さんですが・・・。」

史織「・・・ええ。そっちは先に閉会の準備をしててちょうだい。千鶴(アイツ)のことは私に任せておいて。」

主審「・・・はい。お願いします。」

確かに、さすがに千鶴さんを吹き飛ばしたまま放ったからし、というわけにはいきませんよね。千鶴さんはれっきとした人間(・・)なんですから。

会場は熱気に包まれる中、審判員たちや他の運営者たちは閉会式並びに優勝者式典の準備に取り掛かり始めました。

史織「あ・・・。任せてって言ったけど・・・私、動けないんだった・・・。」


 少し経つと観客も引き、一旦会場は静かになりました。

現在午後四時頃。五時から閉会式と式典が始まる予定ですから、その頃になればまた辺りも賑やかになるでしょう。

して、史織さんはというと。

史織「あー・・・、キツい。まだキツいわ・・・。」

なんと、まだ舞台の上で寝転がったまんまです。武闘大会優勝者だというのにこの扱いもどうなんでしょうかね(笑)。誰か助けてあげてくださいな。

史織「さすがは私の『到来返戻』よね。まさか私自身があれを受けることになるなんて夢にも思わなかったわー・・・。今までのヤツら(・・・)もこんな気分だったのかしら・・・。うぅー、効いたわー・・・。」

そこへやって来たのは。

柊「あっ、史織ちゃん。ここにいたのね。」

史織「柊・・・。」

柊「優勝、決まったんだって?おめでとう。」

史織「ええ。まあ、ね。ありがとう。」

柊「えっと・・・、どうしてまだここに?もうすぐこの舞台も片付けに入るんだけど・・・。」

史織「・・・動けないからよ。」

柊「ええ!?ちょっと、先に言ってよぉ!早く休憩室の方に!」

史織「だから、動けないんだって・・・。」

柊「あぁ~、じゃあ、おぶってあげるから!」

史織「助かるわぁ・・・。」

と言って、一先ず史織さんは休憩室に・・・。

柊「ていうか、終わってからずっとあのままだったの?・・・はい、お水。」

史織「だって、自警団の連中は皆忙しそうだったし。少し休めばすぐ動けるかと思ったのよ。ああ、ありがと。ごくっごくっごく・・・っぱぁ~!美味い!」

柊「もう・・・。言ってくれれば、きっと誰か助けてくれるわよー。自警団の皆って史織ちゃんに憧れてる人が多いんだから。」

史織「・・・そうなの?」

柊「表には出さないけどね。何でも問題を解決しちゃう、とにかく強い、かっこいい、何だかんだで優しい。憧れる要素はいっぱいあるのよ。・・・、私だって・・・。」

史織「ごくっごくっごくっ・・・。ふぅ~・・・、ん?何か言った?」

柊「いいえ、何でも。それで相手の方は?何かお話したりしたの?」

史織「あっ、そうだ。捜しに行かないと。体の方は・・・、もう大丈夫そうね。」

柊「え、捜す?」

史織「あっ、えぇーっと・・・。ちょっと空まで吹き飛ばしちゃって・・・。」

柊「ええぇぇぇ!!??」

史織「っ!?じ、じゃあ、行ってくるわね~・・・。」

柊「あ、ちょっと!史織ちゃん!」

そそくさと逃げる史織さん。柊さんがお説教モードに入ったのを感じ取ったようですね。柊さんのお小言は史織さんも苦手なようです。

柊「もう!いくら武闘大会だっていっても相手は人間なんだから少しは・・・。う~~~ん・・・、ちょっと私も調べてみようかしら。彼女(・・)のこと・・・。」


 その後、史織さんは千鶴さんを吹き飛ばした方向を捜してみたり、千鶴さんの近くを謎の飛行物体が横切った件、大会後千鶴さんを見たかどうかについて等を里の人にも聞いて回りましたが、全く情報が得られることのないまま午後五時前になってしまったので、一先ず大会本部に戻ることにしました。

千鶴さん消息不明のことが自警団内でも騒がれていましたが、一先ず、この武闘大会を締めくくることにしました。

優勝者式典にて史織さんは念願だった『雷獣の爪』を手に入れ大層ご満悦のようです。

これにて武闘大会は閉幕。

実は、明日の夜まで里はお祭り騒ぎが続きます。年に一度の武闘大会ですがお祭り自体は二日間続けて行われるのです。

史織さんはその後、柊さんに見つからないように小冬さんを捜していましたがなかなか見つかりませんでした。同じように小冬さんも史織さんを捜していたんです。

二時間程捜し回った頃、ようやく二人は再会できました。ちょうど里の門の近くです。

史織「あ、小冬ー!」

小冬「あっ、史織ー!」

史織「よかったぁ。柊に見つからないで。」

小冬「ん?柊さん?」

史織「ああぁぁ、ううん!なな何でもないのよ(焦り)。ちょっと私、今日疲れちゃって。少し早いけどそろそろ里を出ない?柊には内緒でさ?」

小冬「・・・うふふっ。さては柊さんを怒らせたんですのね?ま、いいですわ。私も今日は疲れましたし、一緒に帰りましょうか。」

史織「いやー、恩に着るわ。」

お二人が門を出ようとした時、門番がお二人を呼び止めます。

門番「お待ちください。史織さん、小冬さん。実は先程、自警団本部より正式な要請が出まして今晩は里に滞在していただきたいとのことです。」

小冬「あら、何かあったんでしょうか。」

史織「・・・理由は聞いてないの?」

門番「すみません、そこまでは・・・。もちろん、今晩の宿はこちらで用意させていただいております。こちらの地図に・・・。」

小冬「はい、ありがとう。・・・、あら?」

史織「この場所って・・・?」

ふむ・・・。何やら自警団の方に動きがあった模様ですね。一先ず、お二人は渡された地図の場所へと向かいますが・・・?

(謎の決勝戦進出者)名草(なくさ) 千鶴(ちづる)   種族・人間  年齢・十代後半  能力・〈未公開〉

 今年初めて武闘大会に出場し、決勝戦まで勝ち進んだ謎の人物。彼女が小冬との激闘を制したが、小冬のことを知る里の人間は誰もが予想していなかったことだろう。史織や小冬と同じくらいの年であり、史織と同様に何らかの術式が使えるようだ。小冬ほどの猛者であっても、決着については理解ができていないほど何か不思議な力を持っている模様。現時点では不明な点が多い。武闘大会での手持ち武器は長い棒を選んだ。だが、実際には小冬や史織との決闘ではこの手持ち武器は一切使われていなかった。どうやら物理など体術系は苦手なようだ。


〈術式と他攻撃手段について〉

 普段から史織は決闘時には術式を存分に活用している。『返戻到来』、『刹那魂砕』、『平伏捕縛』等の技を始め、防御用シールドも含めてこれらは全て術式である。今回千鶴が放った光線(・・)も術式に含まれている。だが、一般攻撃手段としての光弾(・・)は術式には含まれていない。光弾自体は、実は訓練さえ積めば誰にでも会得できるのだ。実際、小冬は術式を一切使うことが出来ないが、光弾を放つことは出来る。柊や一般自警団員も可能。若鄙における『決闘』の多くは光弾を放ち合うことでほぼ成立しているといっても過言ではない。一般怪異たちも同様である。

 ただ、史織は自身の術式に自信を持っておりそれを主に活用していること、小冬は自身の剣術を最大限に活用しようとしていることから、二人の決闘場面にはあまり光弾を放つ場面は見受けられないだけ。(もちろん、全く使用しないというわけではない。本文に描かれていない戦闘中には、使用されていることも多々。(例・史織対伊戸戦や史織対ウェンディ戦の時のような場面が切り替わっている間の戦闘中等))

 決闘には物理、魔法、術式、気、固有能力。主にこれらが使用されているのは確かだが、光弾はそのどれの分類にも含まれない最も基本的な攻撃手段なのである。だが、基本を疎かにする者は決闘には勝てない。術式や魔法にそれぞれ異なる性質の攻撃があるように光弾にも使用者それぞれに異なる性質があるのだから。

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