〈第一面〉湖までの道のりはまだ長い
この章からはしばらく戦闘パートが続きます。何か『日常』、『ほのぼの』タグがあるのに、当分の間はそんな雰囲気ではなくなります(笑)。登場人物たちは、『決闘』を介して相手を理解するような点があることと登場人物の結構多くが『決闘』好きという点の二つの合わせ技が、作者の演出的にイイ感じになるからです(意味不明)。
また、このお話には擬声語が多発して出てきます(何を今さら)。擬声語大好きな作者が、特に戦闘パート中では、よく使用しています。平仮名だったり片仮名だったりしますが、勘弁ね。要は、このお話が『小説』でないことをいいことに、作者が自由に言葉を綴っているんだという注意書きですね。
後、後半最後にある史織の片仮名の台詞、アレはドイツ語ですね。作者のドイツ好きな所以もありますが、この物語の多くの元ネタ(?)がドイツ語関連です。でも別に、舞台がドイツなんてことはさらさらありませんからー。
史織「はぁ、憂鬱だわ・・・。」
午前十一時過ぎ、今日も快晴。図書館を出発して少し経ちました。
まあ・・・、気の重そうな史織さんですが解決に向けて頑張ってください。柊さんも、解決報酬を弾んでくれる、と約束してくれたんですから。
史織「普段は目立つからしてないけど、やっぱり飛んでると目立つのよねぇ・・・。」
おっとっと(焦り)、これはこれは。飛んでいるとはまた酔狂なことを・・・、と思いたいですが、まあ彼女は間違いなく空を飛んでいるんです。実は、飛べる人間なんてのも少なからず若鄙には存在しています。もちろん、人間以外にも。
史織「飛んでると変なのが近寄ってくるから嫌なんだけど、歩いていくよりはよっぽど早いし。我慢しないとねぇ・・・。」
空のお散歩なんてのも、優雅でいい気持ちなんでしょうねぇ。
史織「でもやっぱり、久し振りの空ってのも悪くないわね。」
???「キャッハハハハハ!面白いのもの、見ぃつけた!」
史織「はぁぁ、何か来たわ・・・。」
???「アレー?アンタは・・・、昨日の通り魔!」
史織「あー?誰よアンタ。」
おやおや。近づいて来たのは昨日の人里からの帰り道に史織さんの近くを通っただけで撃退されたハブの怪異こと、ショクムさんです。
ショクム「ムキー!昨日ワタシをあんな目にあわせておいて、覚えてないなんてー!」
史織「昨日?・・・あー、ひょっとして私を襲おうとしたハブ?」
ショクム「襲おうとなんてしてないよ!近くを通ってただけだもん!」
史織「知らないわよそんなこと。暗がりに私に近づいたのが運の尽きよ。」
ショクム「ヒ、ヒドイ・・・。」
史織「さっ、私は今急いでるの。そこ、邪魔だから退きなさい。」
ショクム「・・・ルサナイ。」
史織「え?」
ショクム「ユルサナァイ!人間の分際でワタシに盾突こうだなんて、一生早いのよ!」
史織「なっ!くるのねっ!?」
ショクム「ワタシが夜より昼の方が凶悪だってこと、その身にじわじわと沁み込ませてあげるわっ!」
あらあら、どうやら『決闘』の時間のようですね。若鄙における決闘ルールは単純です。自分で負けを認めるか、力が出なくなるまで相手を叩きのめすか。攻撃の手段は主に「気」とか「魔法」とか「物理」とかですね。「自分の能力」を使うのもありです。でも、ルール上死を与えることはできないのでご安心を。
史織「こんな事で時間なんてかけたくないのにっ!」
パシュッパシュッ!
史織さんは一子相伝の「術式」が主な攻撃手段です。見た目は魔法ですが。
ショクム「アハハハハ!いつまでその余裕が続くのかしらね!」
すいすいーっ
史織さんが攻撃を続けますが、ショクムさんは避けてばかりですねぇ・・・。攻撃しないのでしょうか。
史織「ああぁーもう、かったるいわねぇ。もうー、何で避けてばっかりなのよっ!・・・、うぅっ!?」
ショクム「・・・アラ、ようやく回ってきたのかしら。結構かかったわね。」
史織「ううぅっ、視界が・・・、目が霞んできたわ・・・。気分も何だか悪くなってきたし・・・。」
おおっと、どうやら史織さんの調子がおかしいようですね。これはもしや?
ショクム「アハハッ、いつまでもおんなじところから動かないでくれたおかげで楽だったわー。」
史織「アンタッ・・・!何かしたわねっ!?」
ショクム「ワタシがアンタの周りをグルグル回っている間に、アンタはそこから動かず攻撃をし続け力を使い続けた。おかげでワタシの吐いた毒霧はアンタの周りだけに集中し、徐々に体を蝕んで、力を吸いつくしていくことでしょうねっ!」
史織「毒っ!?」
ショクムさん、毒が扱えるみたいですね。これは厄介な相手です。
ショクム「最初こそアンタの攻撃を避けるのは苦労したけど、毒が効いてきて、今じゃアンタの攻撃なんか簡単に避けられるよー。ワタシの毒はねー、純粋なんだよー。ワタシ以外には目に見えないし、臭いだって分からないからねー。」
史織「くっ!?」
どうやら史織さん、苦戦中のようです。大丈夫でしょうか・・・。
史織「と、とにかくこの場から脱出しないと!」
ショクム「させないよっ!『フェルギフトサーケ』!」
史織「うわっ!!!」
バッシャー!!
上へと脱出しようとした史織さんを阻むようにして、上からショクムさんの毒水しぶきが炸裂しました。ああぁ、史織さん大ピンチ!
ショクム「やったぁー!決まったぁー!いぃやっふぅぅー!」
あらら・・・、何ともマズい発言をしてしまったショクムさんです。
史織「・・・ったく、手間かけさせんじゃないわよ。」
ショクム「アレ・・・?何で声が聞こえるのかな?やられて落ちていったはずじゃ・・・?」
史織「この毒って・・・、アンタにも効くのかしら?」
史織さん、術のシールドで毒水しぶきを受け止めたようです。シールド上に、ゆらゆらと毒水しぶきがうごめいています・・・!
ショクム「っ!?ワタシの毒!?」
史織「お返しよっ!『到来返戻』!!!」
ショクム「そ、そんなこと、効くだなんて言えないじゃないのよ~!!!」
ブワッシャアァー!!!
ショクムさんの毒の力が一心に詰まった『到来返戻』が、ショクムさんに炸裂します。
史織さんの奥義『到来返戻』。体の内部に存在するあらゆる力を抽出してシールドを張り、受けた相手の攻撃エネルギーを送り返す反撃技。威力は受け止めた技の攻撃力の大体五割増しくらいです。
ショクム「ギャアァァァ・・・!!!」
ショクムさんが、地上へと落下していきました・・・。
この決闘、勝負ありのようです。
史織「全く・・・。今回は私の体に入ったアンタの毒エネルギーを使わせてもらったから。この決闘での私の被害も疲労も特にないわね。久々の肩慣らしには丁度よかったわ。」
さすがの戦闘能力です、史織さん。そんじょそこらの怪異程度には負けません。やや押され気味だった気がしますけれど。
史織「あら。過程がどうあれ最終的に勝てたからいいのよ。過程の善戦苦戦はカインプロビリームよっ。」
おっと、語りの言葉に勘づかれてしまったのでしょうか。すみませんね、史織さん。
正午前、まだまだ快晴。万能の湖に向かって史織さんは引き続き飛んでいきます。
(通りすがりの怪異)ショクム 種族・ハブ 年齢・並以下 能力・息するように毒を吐ける能力
前回ではただの通りすがりとして撃退されてしまったハブの怪異。本当にただの通りすがり。少し可哀そう。通称・昼の方が動ける夜行性。怪異なので普通の人間よりはよっぽど強い。でも、怪異の中では弱い方。本能は夜行性なのだが、昼間の方が本領を発揮できる。意味が分からない。息するように毒を吐けるが、常に吐き続けているわけではない。と言うか、決闘以外では基本吐かない。何故なら注意しないと自分も自身の毒でやられてしまうから。吐くのとは別に、噛みついても相手に毒は与えられる。ハブとしての本来の力は持っている。普段は何も考えずフラフラと自由気ままに過ごしている。
別件として、年齢が「並以下」と表記されているのは、怪異は基本人間よりも長寿であり不明な場合が多いため人間とは別に、『成熟年齢』が用いられているからである。現時点での成熟年齢表は、低い順に、「生まれたて」→「幼い」→「盛り時」→「若い」→「並」→「一般」→「成熟」といった段階に分けられている。ここから更に、修飾的な用語が付く場合もある(例・以上、未満、やや、気味など)。
また怪異は実力が低いほど、精神年齢も低い傾向がある。彼女もその一人。
〇ショクムの技『フェルギフトサーケ』
いかにもな色の毒水しぶきを前方に噴射する。意外と散布するので、全てを避けるのは難しい。この毒成分は体調不良成分に加え攻撃判定成分が入っている。
〈決闘〉
若鄙における決闘は、怪異側におけるいわゆる「暇つぶし」に当たる。自身と相手との力比べという意味合いが強いので、純粋な「戦い」ではない。なので、「決闘」はルールを守って行われている。これが若鄙における絶対原則の一つ、『決闘原則』。以下の三つは決闘の、開始・決着・その後の取り決め内容である。
①相手に決闘宣言を行う、やり方は自由。相手に意思が伝わればよい。相手の承諾は不要。
②負けを認める、力が出せなくなる、行動不能になる、いずれかに該当した者が負けとなる。
③敗者は勝者の要求を受け入れ、又は、自分の意思を妥協する義務を負う。
その他、決闘宣言前の不意打ちと死を与えることは禁止等、細かいこともいくつか規定されている。
ルールに則り、正しく「決闘」を行うことが若鄙での絶対原則である。