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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
摩訶不思議な人間と
29/94

〈第一面〉いよいよ始まる武闘大会(後編)

今章、初の戦闘パートです。まあ、それほど長くはないですが。一応、武闘大会出場者は皆、最終的には『相手の手持ち武器を落とす』ことを念頭に置いています。まあ、そうでない人もいますけど・・・。

後、本文や後書きでは触れてないんですが登場する『手持ち武器』には様々な物があるとありますが、その全てが木製(・・)です。形状も色も見た目は精巧に元の武器に似せられていますが、剣の刃なんかも全て木製(・・)です。なので、ある程度は安心ですね。はい。


今回、最後に少し新たな登場人物が出てきますがその説明については次回ということで。

 主審「・・・では、決闘開始ぃ!!」

史織「先手必勝、速攻勝負!一瞬で勝負をつけ・・・!?」

柊「ふふふふっ、どっちが先手だって?」

史織「うわっ!」

フォンッ

カキィィィン!!

史織「くっ、やるわね・・・。」

柊「くすっ、史織ちゃんが相手だもの。」

柊さん、史織さんよりも早い先制攻撃を仕掛けます!ですが、史織さんもしっかりと柊さんの攻撃を受け止めます!

お二人とも選んだ手持ち武器は剣ですね。まあ、一番扱いやすい武器でしょうね。

すぐ距離を取る二人、しばしの膠着状態が続きます。

史織「(今の攻撃、何とか間に合ったからよかったけど結構危なかったわね・・・。柊も実力を付けているってことかしらね・・・。)」

柊「(今のを防がれちゃうのはさすが史織ちゃんってところよね。長くなるとこっちが不利なんだけど、ここは・・・。)」

少し柊さんの雰囲気というか気迫に変化を感じます・・・。

柊「ふぅぅ・・・、いくよっ!!」

史織さんとの距離を一気に詰める柊さん!

史織「(っ!?これは・・・、剣で一気に攻めてくるつもりだわ!)」

史織さんお得意の勘が働きます!

柊「やあぁぁぁぁ!!」

史織「甘いっ!!」

すっ

柊さんの横薙ぎを屈んでかわす史織さん。

史織「下が隙だらけよっ!それっ!!」

柊「っ!!」

かすっ

史織さんの攻撃を何とか紙一重でかわした柊さん。

柊「っと。あ、危ない・・・。」

史織「(あれ・・・?今のは確実に決められるはずだったのに、かわされた・・・!?)」

柊「も、もう一回!!」

今度は大きくジャンプして史織さんに飛びかかる柊さん。

史織「ふっ、宙じゃ回避が疎かになるのよっ!!」

史織さんが柊さんにキツい一太刀浴びせようと大きく斬りかかります。

しかし。

柊「ここっ!」

すっ

史織「なっ!?」

史織さんの振りかぶった一太刀は柊さんの見事なその場緊急回避によってかわされました。

おかげで、史織さんの正面が隙だらけに。

柊「はあぁぁぁ!!」

ズサァッ!!

史織「うぐぅっ!」

今度はしっかりと決まりました。史織さんは衝撃で少し後ずさってしまいました。

柊「っと、いい感じね。」

史織「うぐぐ・・・!ちゅ、宙にいながら、よく今のが避けられたわね・・・!なかなかやるじゃない・・・。」

柊「あら、これでも毎日訓練は欠かしていないつもりよ?私の()も、しは見直してくれたかしら?」

史織「・・・?あっ、しまった・・・。すっかり忘れてたわ・・・、アンタの()。そうか・・・、だからさっきのも・・・。」

柊さんも自警団大佐を立派に務め上げている実力はしっかりある、ということですね。こういった正々堂々とした一対一の決闘の場なら、柊さんの能力は存分に映えることでしょう。

忘れてしまった方のために一つ・・・。柊さんの能力は『身近な危険を予知できる能力』。一寸先の攻撃くらいなら事前に知ることができます。史織さんは()で相手の攻撃を先読みしていますが、柊さんのは本物の予知(・・)なので正確さは史織さんよりも上ですね。

柊「ふふっ、史織ちゃんに認めてもらえるって嬉しいわね。」

史織「ぐっ・・・。あんまり舐めてちゃいけないってのは、よーく分かったわ。だから・・・、もうここで決めさせてもらうわっ!!!」

ぶぉんっ!

柊「えぇっ!?」

なんと!史織さん、手持ち武器の剣を大きく空高く放り投げました!その動きに気を取られてしまった柊さん

すると。

ぱぁんっっ!!

大きく手を叩き・・・、構える史織さん。

ぼわぁん・・・

柊「っ!?ちょっ、これって・・・!!!」

柊さんが透けた青白い空間内に囚われ・・・。

史織「『平伏捕縛』!」

ズガァァン・・・!!!

柊さんの体が地面へと強く叩き付けられてしまいました。

史織「・・・んん。」

柊「うぅぅぅ・・・。」

とてとてとて

史織さんが倒れ込んだ柊さんに近づき・・・。

ぺしっ

からんからんからん・・・

柊さんの手に握られた手持ち武器の剣を蹴り飛ばしてしまいました。

そして、先ほど史織さんが高く放り投げた剣も落ちて来て・・・。

ひゅんひゅんひゅんっ

ぱしっ!

史織さん、頭上で見事に剣を掴み取りました。

史織「悪いわね、柊。少しは痛むでしょうけど、これで勘弁してちょうだい。」

柊「くぅぅぅ~・・・。」

主審「・・・!しょ、勝負ありっ!!!」

この決闘、勝負ありのようです。


 柊「いったたたぁ・・・。」

史織「わ、悪かったって。」

準決勝も終わり、決勝戦まで大会本部の控え室で一時休憩中のお二人です。

柊「別に史織ちゃんは悪くないでしょ?これは決闘だったんだから。」

史織「いや、まあそうだけど。」

柊「それに史織ちゃん、最後のあれ(・・)までは術式を使わないで戦ってくれたでしょ?私にも少しは見せ場を作ってくれてありがとうね。」

史織「べ、別にっ!術を使わなくても最初は勝てると思ったから使ってなかっただけよっ(焦り)!」

柊「うふふっ、はいはい。」

史織「まあ、アンタの怪我が『平伏捕縛』のだけで済んで良かったわ。あそこでもし持ちこたえられてたら、これよりかは深手になってたでしょうね。それでも手加減はするつもりだったけど。」

柊「くすっ。決闘なんだから決闘らしく、倒れた私にトドメを刺してくれてもよかったのよ?」

史織「ふんっ!私はそこまで鬼じゃないわ。アンタの武器を蹴り落とせばそれで済むんだから、そうしただけよ。」

柊「ふふっ、優しいのね。」

史織「んもうー!私のことはいいの!それで?もう片方の試合はどうなったの?決着は?」

柊「さあ・・・。決まったら、一応私のところに連絡が来るはずなんだけど・・・。」

史織「うーん、意外に白熱でもしてるのかしら。小冬も張り切ってたしなぁ・・・。」

柊「うふふっ。小冬ちゃん、史織ちゃんが大会に出るって聞いた時からずっと張り切ってたからね。史織ちゃんと力試しするんだー、ってね。」

史織「まあ確かに、こういう場でない限りまともに小冬とやり合う機会なんてないでしょうからね・・・。」

柊「普段からやってあげればいいのに。」

史織「嫌よ、面倒な。」

柊「もう、史織ちゃんったら・・・。」


 それから少し経ったくらいに柊さんが運営の人に呼び出され、更にしばらく経った頃。

柊さんが史織さんの控え室に帰って来ました。

柊「し、史織ちゃん・・・。」

史織「ああ、柊。どうしたの?」

柊「えっと・・・。少し前にもう一つの準決勝の方も終わって、それで、そろそろ決勝戦を始めようかって・・・。」

史織「ようやくなのね・・・。小冬にしては結構時間かかったわね。そんなに厄介な相手だったのかしら・・・?ま、そんなことはどうでもいいわ。さっさと小冬との決勝戦も終わらせて、『雷獣の爪』を手に入れてやるわよー!」

と、勢いそのままに史織さんは舞台の方へ向かって行きました。

柊「あっ・・・。ま、まあ、出場者の一人にあまり肩入れするのも良くない・・・わよね・・・。」


 午後三時過ぎ。武闘大会もいよいよ大詰めを迎え、観客の数も一層増えました。なんせ決勝戦な上にあの史織さんが出ていますからね。里の人たちも興味があるってものです。

堂々と舞台場へと上がっていく史織さん。大きな歓声が上がります。

史織「ふふん!なかなかこうゆー雰囲気も悪くないものね。さて、どう立ち回ろうかしら・・・。さすがに柊の時みたいに簡単にはいかせてくれないはず・・・。むむむ・・・。」

史織さんが悩んでいるとまたもや一方で歓声が。どうやら決勝戦の相手がやって来たようですね・・・。

史織「おっ、来たわね。アンタにしちゃあ、随分と時間がかかっ・・・たみた・・・いね・・・。」

???「・・・?ええ、そうですね。確かに、準決勝の相手の方は大変強敵でした。もちろん、貴方もそうだと思いますけどね?」

史織「・・・っ!!??」

???「更に言えば、貴方にとっての私も恐らく強敵だということも忘れないでくださいね?」


 少し時は遡り、場所も移って武闘大会東側舞台場運営部にて。

柊「小冬ちゃん!!!」

救護者「あっ、栄井さん・・・。」

柊さんが小冬さんの休んでいる部屋に到着したようです。

柊「手当て、ありがとう。少し二人だけにしてもらってもいいかしら?」

救護者「・・・分かりました。」

救護の人が部屋を出ていきました。

柊「小冬ちゃん・・・。」

小冬「うっ、うぅぅ・・・。ひ、柊さん、ですの・・・?」

柊「あっ、小冬ちゃん!気が付いたの?」

小冬「えっと、ここは・・・。」

柊「ここは運営部の休憩室よ。小冬ちゃん、準決勝で・・・。」

小冬「そう・・・ですのね・・・。あの方に・・・。」

柊「ねえ・・・。一体何があったのか、教えてくれない?」

小冬「・・・。思ったよりも強い方だったのは確かです。試合も長引きましたし。お互いにいい勝負をしていたと思うんです。あの時(・・・)までは・・・。」

柊「あの時(・・・)?」

小冬「ええ・・・。正直に申し上げると、何が起こったのか全く分かりません(・・・・・・・・・)でしたわ・・・。一体あの方は何者だったんでしょう・・・。名草(なくさ)千鶴(ちづる)さんは・・・。」


 そして、再び場面は舞い戻り・・・。

千鶴「私は名草(なくさ)千鶴(ちづる)と言います。貴方のお名前は?」

史織「・・・私は古屋史織。古屋図書館司書長、古屋史織よ。」

千鶴「ああ・・・、では貴方が・・・。まあ、そのことはいいでしょう。今は武闘大会の決勝戦ですからね。」

史織「そう・・・ね。今は目の前の事実に集中した方が良さそうなのは確かね・・・。」

千鶴「さあ!賑やかなお祭りに相応しい心弾む決闘を始めましょう?!」

史織「アンタには色々と聞きたいことがあるわ。けど、それは後で構わない。今はただ、アンタを叩き伏せる!それだけよっ!!!」

史織さんとの決勝戦の相手は小冬さんではなく、まさかの別人・名草千鶴さんです。

さあ、何か波乱が起こったような武闘大会。史織さん対千鶴さんの決闘が今始まります。

〇史織の技『平伏捕縛(へいふくほばく)

 対柊戦における勝負の決定打となった技。両手を強く打ち付けるように大きく手を叩き、構え、狙い澄ました相手を術的包囲陣で取り囲む。その後、包囲された相手はそのまま体を地面へと強制的に強く打ち付けられる。古屋一族に代々伝わる対人間用の術式の一つ。元々は逃げ足の速い泥棒や悪党等が逃亡する際に、それをひっ捕らえるための術式。透けた青白い色の結界内に囚われた時点でもはや逃亡できる術はない。対人間用とはいえ、並の人間には強すぎるためやはり罪人くらいにしか使わない方がいい。柊クラスの者であっても、打ち付けられた後はすぐには動けない。欠点は史織自身が大きく手を叩く必要があることだろうか。(何か手に持っていては発動条件を満たせない。)また、対人間用の術式は全て人間(・・)相手にしか効果がない。これも例外ではない。

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