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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
摩訶不思議な人間と
28/94

〈第一面〉いよいよ始まる武闘大会(前編)

今回は少し(かなり)説明が結構くどい回になっています。すみません・・・。一読みで理解し切るのは少し難しいかもしれません。だというのに、長々と説明した割にはその辺りの詳しい戦闘描写を省いていたりして・・・。説明がくどく、理屈っぽいのは作者の性によるものです。すみません(笑)。実際に説明が向けられているのは『大会出場者たち』なんだと割り切って、読み流してもらっても充分差支えないかと思われます。後書きの方にルールをざっくりと簡潔めにまとめておきましたので、そちらからでもどうぞ・・・。

 午後一時半頃になりました。お二人も充分にお祭りを堪能できているようです。

史織「ふふっ、いいわね。こういうの。」

小冬「ええ、そうですわね。」

さて史織さん、お楽しみのところすみませんがそろそろ武闘大会の会場に向かった方がいいと思いますよ?

そう言えば・・・、お二人ともそのこと(・・・・)については一切話していませんね・・・。

史織「あっ、と。ええぇーっとね、そうだ。ちょっとね・・・、そろそろ行かなきゃいけないところがあるんだけど・・・、いいかしら?」

小冬「え、ええ。き、奇遇ですわね。私もそろそろ向かっておきたいところがありまして・・・。い、行きましょうか。」

史織「あら、小冬も?そ、そう・・・。」

何だかぎこちない様子のお二人さん。・・・これはもう、そういうこと(・・・・・・)なんでしょうかねぇ・・・。


 二人は武闘大会本会場までやってきました。今は中の組の決闘が行われているようですね。観客もなかなかの盛り上がりを見せています。

史織「えっと・・・、も、盛り上がってるわね。」

小冬「うふふっ、そうですわね。」

柊「あー、二人とも。来てくれたのね!」

と言って、柊さんが近づいて来ました。

小冬「ええ。やってきましたわよ、柊さん?」

柊「ふふっ、嬉しいわ。そろそろだから二人とも、ついてきてくれる?」

史織「うっ・・・!ってことは、やっぱり・・・!?」

小冬「ふふん!ま、そういうことですわ。」

ああ、やはり。どうやら小冬さんも武闘大会に出場するみたいですね。

史織「ちょっと柊、どうして教えてくれなかったのよー?」

柊「ふふっ、いいじゃない。私としては元々、二人とも出てもらいたかったんだから。」

史織「ちょっと小冬、どうしてアンタまで大会に出るのよ?毎年ちゃんと断ってきたじゃない。」

小冬「あら?それは史織も同じではありませんか。」

史織「うぐっ、そ、それは・・・。」

小冬「まあ、どういうわけで史織が大会に出ると決めたのかは知りません・・・。ですが、史織が大会に出るとなっては、私も出ないわけにはいきませんからね!」

史織「あぁー、そうか。なるほど・・・。今ようやく全ての謎が解けたわ。小冬は柊から私が出るってことを聞いたから小冬も出ることに決めたのね。そしてこの一週間、(うち)に顔を見せに来なかったのはこの日のために念入りに修行に打ち込んでいたから。そして今日の朝、私より先に里へ来た理由は大会に出ている間は祭りを見て回れないから早めに下調べに来るため。そういうことなのね?」

小冬「ふふっ、さすが史織ですわね。」

柊「ふえー!すごーい。そんなにたくさん、史織ちゃん、よく分かったわね~。」

史織「ま、伊達に小冬と長く一緒にいないわよ。」

とりあえず、お二人のぎこちない雰囲気だった理由も解けたみたいでよかったです。

柊「さあ、二人とも。後もうちょっとで上の組も始まるから、ここで待っててね。」

と言って、柊さんは運営準備に戻ったようです。

小冬「ところで、史織?どうして今回の武闘大会に出るって決めたんですの?」

史織「え?うん、そうね。実は、柊からの前情報によると、今回の上の組の優勝賞品が『雷獣の爪』なんだって。」

小冬「『雷獣の爪』・・・?それが、欲しかったんですの?」

史織「ま、まあね!」

小冬「へえ・・・。史織ってそういう物、好きでしたっけ?」

史織「別に好きってわけじゃあないんだけど。まあ、ちょっと要り様でね。パパっと勝って、サクッと頂いていくわっ!」

小冬「は、はあ・・・。」

ふむ・・・。何か要り様ということらしいですが、うむむ・・・。何でしょうね?

史織「小冬はどうして?別に私が出るからって、一緒に出なきゃなんない決まりなんてないでしょ?」

小冬「ふふっ、何を言ってますの?史織と本気で(・・・)決闘できる機会なんて、そうそうありませんのよ?久し振りに、あなたと手合わせ願える最適な機会かと思いまして。」

史織「あー、そう・・・。」

小冬「別に『雷獣の爪』とやらに興味はありませんの。ですから、優勝した私が(・・・・・・)史織にその賞品を贈って差し上げますわ!」

史織「・・・ふふっ。いいわ、望むところじゃない!!」

おおっと!親友のお二人に漲る熱い闘志、これは見物(みもの)になること間違いなしですね!

柊「二人ともー!そろそろ始めるわ、こっちに来てー。」

史織「さっ、行きましょうか!」

小冬「ええ!」


 いよいよ武闘大会の目玉、上の組の決闘試合が始まろうとしています。出場者は結局計七名。くじ引きによりトーナメントの開始場所を決めます。七名のため一人がシード枠に選ばれます。残った六名がまずそれぞれ一回戦を行い、その後、シード選手を含めた四名が準決勝を行い、最後に決勝戦を行います。尚、次の決闘を控える出場者は他の出場者の試合模様を見る・聞く・知ることは禁止。次の対戦相手となる者の情報はなるべくなしで決闘に挑んでほしいとのことです。決闘場所もそれぞれ離れた舞台の上で行われます。その他ルールの説明は柊さんが説明してくれるようです。

柊「今年から武闘大会決闘ルールに変更があったので、詳細を伝えます。今回から全員に手持ち武器を選んで決闘に挑んでもらいます。武器は全て自警団が用意したもので、この中から一つ自分の好きなのを選んでください。決闘の開始・決着については例年通り審判が執り行いますが、主審一人と副審二人の計三人で判定します。そして決着条件ですが、戦闘不能、武器落とし、反則、この三つのうち一つでも審判二人に判定されたら、そこで決着となります。尚、戦闘不能の条件だけに関しては審判の公平な裁量が許されています。例えば、相手のどちらかに決定的な一撃が決まったと思われる時、審判はその一撃によって勝負を決着づけるか否かの判定をします。もしそれが認められたら、そこで試合は決着となります。要は、完全に動けなくなるまで叩きのめされていなくても決着することがあるってことです。また、去年まで採用されていた制限時間については廃止になったので心配しないで下さい。まあ、余りにも決着が付きそうにない場合、その時は審判の判断に委ねられることになるとは思いますが・・・。自分の力を最大限に使っていただいて結構です。このくらいですかね、何か質問ありますかー?」

史織「ねえ、柊。反則ってどんなのがあるの?」

柊「そうねぇ・・・。まあ、一応能力の使用も自由だし制限されていることは少ないわ。一対一の原則を破ったり、明らかに不正と思われることをした、とかかしらね。史織ちゃんたちが気をつけなきゃいけないことって言ったら・・・、ああぁ!飛行ね。」

小冬「飛行?」

柊「ええ。元々そんな反則規定はなかったんだけど、史織ちゃんたちが出てくれるってもんで急遽上層部が作ったのよ。ジャンプくらいまでの高さなら大丈夫なんだけど、高く飛んだり(・・・・・・)場外まで飛んだり(・・・・・・・・)浮遊し続ける(・・・・・・)のは反則扱いになっちゃうの。ごめんねぇ、普段から高く飛んでる(・・・・・・)二人には少し厳しいルールになっちゃうけど。」

史織「ふっ、いいわ。そのくらいじゃないとやり甲斐がなくなっちゃうってもんよ!」

小冬「そうですわね。元々、空高く飛べる方なんて滅多にいませんし。もし、私たちが高く飛んでしまったら、飛べない方には圧倒的不利ですものね。」

柊「ありがとう。他に何かある人はいませんかー?」

出場者の一人「あの、栄井大佐。武器落としと言うのは手持ちの武器が床に落ちてしまう、ということで間違いないんでしたよね?」

柊「ええ、そうよ。もし、一旦手から武器が弾かれたりして手元から離れても、武器が床に落ちる前に拾えたら大丈夫だから。」

出場者の一人「確認、ありがとうございます。」

柊「もう、他にないですかー?・・・。じゃあ、皆さん。この中から自分の手持ち武器を選んでください。」

選べる武器にも色々ありますね。一応、武闘大会決闘ルールも『決闘原則』に則っていますから弾幕勝負ということですが、弾幕が苦手な方でも大丈夫なように多種の武器が揃えてあるんですね。

柊「では皆さん、最後はトーナメントの開始場所を決めましょう。このくじを引いて、書いてある番号を私にそっと教えてください。後でまとめて皆さんの最初の決闘の舞台の場所を発表しますので・・・。」

ということで、皆が順にくじを引いていきます・・・。

・・・・・・

柊「では、トーナメント表はこうなりました!」

ばさぁっ!

白い布で覆われていた看板にそれぞれのトーナメント開始の場所が記されています。

一番左端に小冬さん、一番右端のシードに史織さんが。

史織「・・・シードか。」

小冬「史織っ!」

史織「?」

小冬「では、決勝で会いましょう。」

史織「・・・ええ。」

二人の間に固い約束が交わされたようです。

柊「うふふっ。ではでは皆さん、それぞれの舞台へと向かってください。皆さんの素晴らしい決闘を楽しみにしていますよー!」

そして、それぞれがばらばらに舞台へと向かって行きます。

すると。

史織「ねえ、柊。」

柊「あら、史織ちゃん。史織ちゃんはシード枠ね、良かったじゃない。」

史織「ええ・・・、まあそれはいいんだけどさ。上の組の出場者は本当に七人(・・)なのよね?」

柊「ん?そうよ?それがどうしたの?」

史織「だって、今さっきこの場には六人(・・)しかいなかったじゃない。」

柊「・・・ふふっ、何言ってるの?ちゃぁんと七人(・・)いたじゃない。じゃ、また後でね!」

と言うと、柊さんも運営準備か何かに行ってしまいました・・・。

史織「んー・・・?ま、いっか。私も先に舞台へ行って、相手を待ってよーっと・・・。」

何か気になりながらも、とりあえず史織さんの第一舞台の方へ向かって行きます。


 少し経ちました。設営された舞台の上でのんびりと対戦相手を待つ史織さん。

史織「ふああぁぁぁ、暇だわ。」

遠くの方から決闘の観戦の声でしょうか。大きな歓声が上がっています。

史織「向こうの方は盛り上がってるわねー・・・。」

ですが、史織さんのところにも徐々に人が集まってきました。

がやがやと人だかりができたくらいには、史織さんへの応援の声も聞こえてくるようになりました。

おばちゃん「史織ちゃん!頑張ってね。」

おじちゃん「気ぃつけてなぁー。」

こどもたち「史織ちゃーん、がんばってー。」

史織さんも応援の声には手を振って応えています。

すると、あっちの方から大きな歓声が上がって・・・。どうやら対戦相手が来たみたいですね。

史織「ふふっ、やっと来たわね。ま、誰であろうと手加減はしないわっ!」

プウシュゥゥー、という煙の音と共に舞台へと上がって来る対戦相手。その相手は・・・。

???「うふふっ。最初は乗り気じゃなかったんだけどやってみると案外楽しいものなのね。それもこれも、盛り上げてくれている里の皆と・・・史織ちゃんたちのおかげかしらね?」

史織「アッ、アンタはっ・・・!?」

柊「よろしくね、史織ちゃん?」

なんと!相手はあの柊さんです!これは意外・・・。

史織「柊・・・。アンタも出場者だったのね。なるほど・・・、だからちゃんと七人(・・)いたってわけね。」

柊「上層部がね・・・?『せっかくだし、栄井くんも出給え。』なんて言って、半ば強制的にね。でも、せっかくのお祭りだし史織ちゃんたちも出てくれるって言ってくれたし・・・。私も出る決心が着いたのよ。」

史織「アンタも毎年出てなかったもんね。」

柊「ふふっ。史織ちゃんと真剣に決闘するのって、もしかして初めてじゃないかしら?いくら史織ちゃんが相手とはいえ、簡単に負けるつもりはないからね。自警団大佐として示しが付くよう、精一杯相手をさせてもらうわっ!!!」

史織「ふっ・・・。パパっと勝ってサクッと終わらせるつもりだったのに・・・。ホント・・・、小冬といい柊といい、随分と私の予定を狂わしてくれちゃって・・・。いいわ、私の実力がどれほどのものか、その身に深く刻み込むがいいわっ!!!」

武闘大会・上の組準決勝、史織さん対柊さんの決闘が今始まります!


 後編へ続く

〈更に補足・武闘大会〉

 くどいルール説明を簡潔にまとめてみた。

・トーナメント方式で一対一の勝ち残り戦。上の組は三勝すれば優勝。(シード枠の史織のみ二勝で優勝。)

・出場者は他の出場者の情報を大会開始後、取り入れることは禁止。

・決闘の決着については全て、三人の審判の判定で決定される。(裁量あり)

・決闘中の上空又は場外への飛行、ルール破り、あからさまな不正等の反則行為は即失格となる。

・後は全力で決闘に挑めばよろしい。攻撃手段は問われない。


 広い人里の中、東西南北それぞれ四つの方角の端っこに一つずつ、決闘の舞台場が設営されている。舞台場の大きさは決闘するには充分な広さに作られている。下・中の組も上の組の前にこの四つの舞台を上手く運用して執り行われた。史織は本部前北側の舞台場で待機しており柊ともそこで決闘する。決勝の舞台も北側の舞台である。

 決着を判定付ける要となる審判の判定についてだが、これをイメージするには剣道の公式試合なんかが最も分かりやすいか。こちらの審判員は自警団の中でも腕利きの者が務めているので、しっかりと審判を務めてくれることだろう。

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