〈序談〉里はお祭り騒ぎ(日常編)
今回、後書きの設定はお休みです。
あれから一週間が経ちました・・・。
史織「ふっふっふ・・・。よし、じゃあ行くとしますか!」
午前九時前、絶好の天気に恵まれた今日はいよいよ武闘大会開催の日です。
人里へと向かう最中、史織さんは生命の森の方へと少し寄り道していくようです。どうやら小冬さんの所へと向かったみたいですね。
史織「小冬、柊が家に来てからの一週間は顔を見せに来なかったからね。豪く熱心に修行でもしてたのかしら。」
毎年の武闘大会にはお二人は出場者として参加はせずとも、人里でのお祭り自体には参加して普通に楽しんでいました。二人で打ち合わせはしていなくとも、一緒にお祭りを見て回ることは例年通りするようですね。今年は史織さんは武闘大会に出場しますが、小冬さんの出場の話は結局どうなったんでしょうかね?
少し進むと小冬さんの小屋が見えてきました。
史織「ここに来るのも、久し振りね・・・。おーい、小冬ー!いるー?」
しーん・・・
返事がありませんね。
史織「うーん・・・、おかしいわね。いつもなら小冬の方から私を迎えに来るくらいだったのに・・・。どうしたのかしら・・・?」
ぎいぃぃっ、っと小屋の戸を開けて中の様子を伺います。
史織「小冬ー?・・・いない。もしかして、今日のことを忘れてまた森の奥にでも修行しに行っちゃったのかしら・・・。」
うーむ、柊さんから小冬さんへと話は伝わっているはずですし、真面目な小冬さんが予定を忘れるなんて考えにくいですけどねぇ・・・。
史織「どうしようかしら・・・。奥の方まで捜しに行ってたら、さすがに時間に間に合わなくなるかもしれないし・・・。んっ?何かしら、これ。」
机の上に何か書置きのようなものを見つけました。
小冬『史織へ・もしこの書置きを見つけたのなら、その時はもう私は先に人里の方に向かっています。勝手に先に行ってごめんなさい。里で会いましょう。』
史織「これ、小冬からの手紙かしら・・・。じゃあ、多分もう私も里に向かっていいってことよね。急ぎましょ。」
ふむ、ということは、小冬さんは予め史織さんよりも先に人里へ向かうことを決めていたようですね。そして、史織さんが後からここにやって来ることを見越して書置きを残しておいた、と。
一先ず、史織さんは人里へと向かって行きました。ですが・・・、いつもの小冬さんらしくない行動が少し気にもなりますね。
さて、人里にやってきました。祭りの賑やかな声が門の外にまで聞こえてきますね。
史織「どうも。こんな祭りの日まで、ご苦労さんね。」
門番「おや、史織さん!いえいえ、こういう時こそしっかりとした門の警備が必要なんですよ。ささっ、史織さんはお祭りを楽しんできてください!」
史織「ふふっ、ありがと。」
門番「はいっ!あっ、小冬さんも少し前に来られましたので、中で合流なさってください。」
史織「ええ。」
小冬さんも書置きにあった通りちゃんと来ているようです。
史織「さて、まずは武闘大会の会場の方に向かってみましょうか・・・。」
武闘大会は本日の午前十時過ぎから行われる予定です。今が午前十時前・・・、あれ?ちょっと急いだ方がいいのでは?
史織「・・・ああ。私の出番は多分もうちょっと後からだから、心配いらないわよ。」
おっと・・・、そうなんですか?
と言うか、さらっと語りの言葉に返答されると肝が冷えますよ・・・。
・・・・・・
史織「お、この辺りね。」
武闘大会の舞台場傍にやってきました。
柊「あっ、史織ちゃーん!」
史織「あら、柊。」
柊「よかった、ちゃんと来てくれたのね。」
史織「当然でしょ?それはそうと、小冬見てない?」
柊「あれ?一緒に来たんじゃないの?」
史織「それがね、珍しく先に来てるはずなんだけど・・・。」
柊「うーん、私もまだ会ってないからどこにいるかは分からないわ・・・。あっ・・・、ひょっとして・・・。」
史織「ん?何よ。」
柊「ううんっ、なーんでもないわ(焦り)!あ、そうだ。武闘大会の件だけど、史織ちゃんの申し込みはもう私が先にしておいてあげたから安心して。後、分かってくれているとは思うけど、史織ちゃんの出場は上の組だからね?さすがに、中や下の組の人たち相手に史織ちゃんを出させてあげるわけにはいかなくて・・・。」
史織「分かってるわよ。上の組じゃないと、意味がないし・・・。」
柊「丁度もうすぐ下の組の人たちの決闘が始まるわ。その後に中の組、そして、最後に上の組。史織ちゃんは・・・そうね、お昼の二時前くらいにまたここに来てくれればいいわ。」
史織「・・・結構時間かかるのね。」
柊「今年から階級別に分けちゃったせいで、下と中の組の人の申し込みが思った以上に多くてね。私たち自警団としては嬉しい限りだわ。」
史織「ちなみに・・・、上の組の出場予定者は何人くらいなのかしら?(そわそわ)」
柊「えっと、一応今の時点では五人だったかしら・・・。でも、上の組だけは直前まで飛び込み参加ができるから、もしかしたらまだ増えるかもしれないわね。」
史織「ふっふっふ・・・。ええ、分かったわ。じゃあ、二時前になったらまた来るわ。」
柊「ええ、それまではお祭りを楽しんでおいてねー。」
そのまま史織さんは小冬さんを探しに出かけました。
まあ、まだまだ決戦の時間までは余裕がありますし、それまではお祭りをのんびり楽しみましょう。
史織「ていうか、そんなにまで時間があるんならもうちょっとゆっくり出てきてもよかったんじゃ・・・。」
一方その頃、クロマリーヌにて・・・。
リミュー「ただいまー。」
伊戸「おや、お帰りなさい。リミュー様。今日は早かったですね。どうかされたんですか?」
リミュー「ふふーん、伊戸!ちょっと一緒におねえさまのところまで来て!」
伊戸「あわわっ、ど、どうしたんですかー?」
伊戸さんの腕をぐいぐい引っ張っていくリミューさん。何だかご機嫌ですね。
バコンッ!
部屋の扉を勢いよく開けるリミューさん。
リミュー「おねえさま!」
ウェンディ「あら、リミュー。どうしたの、そんなに慌てて。」
伊予「どうか、落ち着いてくださいまし。リミュー様?」
リミュー「あのねっ、おねえさま!今日はねっ・・・!」
柊さんと別れてから少し経った頃・・・。
史織「あ、筑紫。」
筑紫「おや、史織さん。」
みたらし団子を食べながら歩く筑紫さんに遭遇した史織さん。
史織「アンタ・・・、一体いくつ買ったのよ・・・?」
腕には大量の袋を携えている筑紫さんです。どうやら全てみたらし団子のような・・・?
筑紫「え?いやー、私、ここのみたらし団子が大好物でしてねー。ついついいっぱい買っちゃいました!」
史織「いくら何でも買いすぎでしょ・・・。」
えぇーっと、手に持っているのも合わせて五袋はありますね・・・。
筑紫「いやいいんですよ!このお祭り中限定販売の品、そして、今の私は懐が凄く暖かい!これはもう買うしかないでしょっ!」
史織「あら、そんなにお金持ってるの?意外ね。」
筑紫「ふふん!実はつい最近、随分と貴重な品が手に入ってですね。まあ、それのおかげですよ。」
史織「へえー。あ、そうだ。私今、小冬を捜してるんだけど。知らない?」
筑紫「はむはむ・・・。んー、小冬さんですか?それならさっきあっちの方で見かけましたよ。んん~!美味しいぃ!」
史織「うっ、随分と美味しそうに食べるじゃない・・・。まあいいわ、ありがとう。」
筑紫「いえいえー。」
筑紫さんも存分にお祭りを楽しんでいるようで、何よりです。
午前十一時過ぎになりました。武闘大会の方もお祭りの方もいい盛り上がりを見せています。
史織「あっ、いたいた。小冬ー!」
小冬「あっ、あら・・・、史織。んんー・・・、まあ、仕方ないですわね。(ぼそぼそ)」
史織「え?何か言った?」
小冬「い、いいえ?特には。」
史織「もう、驚いたわよ。小冬の小屋に行ったら、あんな書置きがあってさー。」
小冬「ああ、いえ。ごめんなさいね。毎年、私が史織の所へ迎えに行ってましたのに・・・。」
史織「ま、まあ、別に気にしてないって・・・。」
んん?お二人さん、何か少しぎくしゃくしてますね・・・。
史織「え、えぇーっと・・・。そ、そうよ!お祭り!せっかくのお祭りなんだから、一緒に楽しみましょう?」
小冬「そ、そうですわよね!今までと同じように二人でまたあちこち見て回りましょう!」
うむむ・・・。何やら気になるところがありますが、まあいいでしょう。ささっ、どうぞ楽しんできてくださいな。
史織「ところで、小冬は早くから来てたみたいだけど、もう全体は見てきたの?」
小冬「ええ。史織と一緒に回っておきたい所は既に決めていますわ!そのために早く来たんですから。」
史織「あら、そうだったの。私はまだそんなに見て回れてないから、一緒に付き合ってくれる?」
小冬「ええ!もちろんですとも!」
史織「それで・・・、なんだけど・・・。」
ぐうぅぅぅ~~・・・
おやおや・・・。
小冬「・・・ぷふっ!少し時間は早いですけど、お昼ごはんにしますか?」
史織「う、うん・・・。お願い・・・。」
小冬「いつものことながら朝ごはんは食べていないんでしょう?ですが、史織にしてはお腹が空いているなんて珍しいですわね。」
史織「ううぅ~!だって、美味しそうな食べ物の香りがこんなにするんだもん~!皆、気合入りすぎよ~!」
小冬「うふふっ、お祭りですからね。私はきちんと朝ごはんも食べてきましたから。ですがまあ、私も少しは何か食べたくなってきましたわ。さあ、一緒に食べたい物を探しましょう!」
ふふっ、いつものお二人の調子に戻ったようですね。午後二時まではまだ時間がありますから、それまでにしっかりと腹ごしらえをしておいてください。