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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
始まりは大きな嵐から
22/94

〈番外面・末〉『大気』とのお話、微かな手立て

・・・はい、『末』ですがまだ終わりません(笑)。次回からの『完』で終わるはず・・・です。

 史織「いくわよっ!」

史織さん対リミューさんとショクムさん、一対二の決闘が始まりました!

一応ですが、『決闘原則』によると「一対三までの対多数決闘を認める」とのことです。

ショクム「そう簡単にいかせるもんかってーの!」

ビュンビュン!

史織「・・・。」

さっさっ

ショクムさんの攻撃を軽快に避けていく史織さん。

史織「大体、アンタは何でリミューと一緒にいたのよ。」

ショクム「えっ?別にー?ただ見かけたから、一緒に飛んでただけよ。」

史織「そう。でも、アンタはのどやかにはかかってないみたいね。元々、そんな感じ(・・・・・・)っぽいし?当然っちゃ当然かしらね。」

ショクム「何をベラベラ喋ってるのかは知らないけど、あんまりワタシを舐めてると痛い目見るよっ!!『フリースギフト』!!」

と、史織さんの周囲にショクムさんの毒霧が広がります。

史織「もうー。アンタに構ってる暇はないんだけど・・・。あれ?リミューが・・・いない?」

史織さんがショクムさんと少し戦っている間に、リミューさんの姿が消えてしまいました。どこに行ってしまったんでしょうか・・・?辺りを見回す史織さん・・・。

ショクム「かかったわねっ!今よっ!!」

史織「何っ!?」

リミュー「『ルーフットドラック』!!」

バビュゥゥン!!!

史織「うぐぅっ!」

ショクムさんとリミューさんの合わせ技が史織さんに決まりました。

ショクム「おおっ!アンタ、スゴイじゃない!」

リミュー「ショクムもね。いい連携だったわ。」

史織「ううぅっ、げっほげっほ!ったく、めんどくさい毒ね!」

ショクム「フッフーン!ワタシを甘く見てるからよっ!毒の効かない人間なんていないんだからねっ!!」

ショクムさんが縦横無尽に動き回り史織さんを撹乱し、リミューさんが一撃を放つ。なかなか息の合った二人ですね。

ショクム「アハハハハ!コッチコッチ!!」

史織「うぎぎぃ・・・、ちょこまかとぉ・・・!相変わらずリミューの居場所は分からないし、どういうことよ・・・!?」

リミュー「うふふっ、そんな風にイライラしているとよくないわよ?」

史織「っ、リミューの声!?」

リミュー「さあ、のどやかの安らぎを・・・、あなたにも・・・!」

ぽわぽわぽわぁぁ・・・

史織「(くるっ!!??)」

リミュー「『大いなる安寧の時』・・・!!!」

ショクム「おおっと、コレは避けなくちゃ。」

ぷふうぅぅぅ・・・!!!

リミューさんの意図的な(・・・・)のどやかの気が史織さんへと降り注ぎます!

史織「・・・ふふっ、避けられる(・・・・・)とでも思ってるの?」

ショクム「えっ・・・?」

リミュー「・・・うそっ?!」

史織「うん、いい感じね。さあ、避けれるもんなら、避けてみなさいな!!」

ショクム「あ、あの構えはっ!!(ガクガクブルブル・・・)」

あらあら、ショクムさん。少しトラウマになっていらっしゃるようで。

リミュー「ショクム、危ないっ!!」

史織「『到来返戻』!!!」

こっそりと史織さん、リミューさんの『大いなる安寧の時』を返戻用シールドで受け止めていました。返されたのどやかの気がショクムさんに襲い掛かります。

ショクム「ウギャアァァァ・・・。・・・アアァァ~・・・。何だか、ねむぅぅいぃぃ・・・。」

すぅぅぅー・・・

さすがのショクムさんでも堪らずのどやか状態に。ショクムさんが戦線離脱、そのまま地上へと降りていってしまいました。

史織「ふう。これで邪魔な方はいなくなったわね。後は・・・。」

リミュー「ショクム・・・。ごめんね。」

史織「アンタが気にすることじゃないわ。」

リミュー「でも・・・。」

史織「アンタが気にするべきことは、もっと別にあるでしょ?」

リミュー「え・・・?あなたのこと・・・?」

史織「うぅ~ん、別にそれでもいいんだけど・・・。今は、アンタのその不安定な心(・・・・・)を何とかするのっ!」

リミュー「わたしの・・・、心・・・。」

史織「ま、今はまず、忘れてる記憶を思い出してもらわないとねっ!はああぁぁっ!!!」

リミュー「むっ!くるのねっ!!」

二人の決闘はまだ続きます。


 一方その頃、史織さんに頼まれ伊予さんたちを探す小冬さん。

小冬「伊戸さんと伊予さんは堅くな鉱山の西側を探しに行かれましたけど、ウェンディさんを捜す当てはありませんからねぇ・・・。」

四人はクロマリーヌを出る際、史織さん組は東側、伊予さん組は西側に調査範囲を分けていました。実際には、ウェンディさんは北側奥、リミューさんは東側奥にいましたが。

小冬「とりあえず、私たちが捜さなかった北西寄りに向かいますか。」

・・・・・・

それから少し経った後、何やら人影が・・・。

小冬「あら・・・?誰でしょうか・・・。」

すぅー、っと近づいていく小冬さん。

筑紫「これはこれは、いつぞやの小冬さんではありませんか。」

万能の湖近くの上空で、何やら意味ありげに空に佇む筑紫さん。

小冬「あら、筑紫さん。水棲のあなたが、どうしてこんな空の上に?」

筑紫「ぬぬっ、いいことを聞いてくれました。実は今朝、とある怪異が湖にいましてね。何か訳ありなようで、私にずかずかと質問してきたんですよー。まあ、そのことは別にいいんですが。でですね、その後よくよく思い返してみれば、随分と昔に会ったことがある(・・・・・・・・)ような気がしましてねー。でも、何か思い出せないようで・・・。あの怪異、大気のようでしたし、広ーい空の中で考えていれば何か思い出せるかなー、なんて思いまして。」

ふむ。何やら詳しく聞きたいような話を聞きましたが、それは今は我慢して。

小冬「今朝・・・ですか。その大気の怪異はどちらに?」

筑紫「え、ああ。何か捜しているようで、湖から北の方に行きましたよ。まあ、捜し物の在処は私が教えたんですけどね。」

小冬「北ですか・・・。でも、何時間か前の話なんですのよね?」

筑紫「ええ、今朝方ですから。昨日の夜にそれ(・・)が北に行くのを見た、って教えると、ばびゅぅーって飛んでいきましたよ。その怪異もそれが昨日のことだ、ってことを分かってて行ったはずですよ。」

小冬「うーんと、どうしましょうか・・・。」

昨日の夜の情報を聞いたウェンディさんは今朝方北の方に向かった、ということは分かりました。かと言って、今からでは少し遅いですしね・・・。

筑紫「さっきの怪異を捜しているんですか?だったら・・・、えぇーっと・・・、ここから東北東の方に行けばいいと思いますよ。」

え?

小冬「え?どうして居場所が分かるんですの?」

筑紫「・・・?ああ。さっきからあの怪異、雷の力を何かに使っているみたいで。その電磁波が私には伝わるんですよ。」

なんと・・・、そんな芸当が・・・。

小冬「はえぇ~、凄いですのね。」

筑紫「電撃の運用に長ける私だからこそできる芸当ですね!伊達に長年電撃と付き合い続けていませんよ。」

小冬「(電撃って、不思議な力なんですね。)」

小冬さんは納得してしまっているようですが・・・、う~む。まあ、一先ずそのことは置いておきましょう。

小冬「ありがとうございます。早速そちらに向かってみますわっ!」

筑紫「ああっ、小冬さん!今からなら南東くらいの方角の方が丁度落ち合えると思いますよー!」

小冬「あ、ありがとうございますっ!(えっ?でも、南東って私が来た道じゃあ・・・。)」

少し違和感を覚えながらも、小冬さんは南東を目指して進みます。


 場面は再び舞い戻り・・・。

史織「はぁ・・・はぁ・・・。」

リミュー「ふふっ、あなた強いのね。ショクムが言ってただけのことはあるわね。」

むう、さすがリミューさん。ウェンディさんの妹なだけあって、相当お強いようです。史織さんは少し疲れ気味のようですが、でも、それは見えないだけでリミューさんにも言えること。

史織「(うーん、のどやかにいちいち気を遣ってないといけないってのが厄介ね・・・。喰らったら一発でアウトだなんて、神経が磨り減りそうだわ・・・。)」

リミュー「でもあなた、ぜーんぜんのどやかになってくれないんだもん。もうわたしも疲れちゃったわぁ。」

史織「・・・そうね。私も疲れちゃったから、少しお話しないかしら?」

リミュー「お話・・・。」

ピクッ・・・

史織「(んっ・・・?今何か・・・、揺らいだ?)」

リミュー「わたしお話するの、好きよ。お話しするってことは、ひとりぼっちじゃないってことだもん。」

史織「・・・。リミューは今まで、何をして過ごしてきたの?」

リミュー「わたしはずっと、この広い世界をあちこち見てきたわ。自然と一緒に過ごしてきたの。森に入って静かに過ごしたり、お山に登ってきれいな景色を見たり、いろんな物を触っていろんな場所に行って自由に過ごしてきたのよ。」

史織「そう。自由に過ごせるってのは、気持ちいいわよね。」

リミュー「あら、史織も分かってくれる?難しいことは考えないで、感じたままに生きていくの。朗らかで気持ちいいのよねぇ。」

史織「他には?誰かと一緒にいたとか。」

リミュー「・・・いないわ。わたしはずっと、ひとりぼっちだったんだもの・・・。動物さんたちや植物さんたちと仲良くなっても、みんなはわたしとお話できないんだもの。」

史織「他の怪異は?怪異は言葉を話せるし、さっきのショクムみたいに。」

リミュー「他の怪異さんはあまりわたしとは仲良くしてくれなかったの・・・。ショクムとはさっき初めて出会ったのよ?わたしとも仲良くしてくれるーって、言ってくれたの。種族が違っても、優しくしてくれる怪異さんもいるのね・・・。」

史織「人間の私にはその辺はよく分かんないけど、周りにいるヤツら皆が皆、敵ってわけじゃあないのよ。」

リミュー「わたしはずっとひとりで生きてきたから、もう寂しいのは嫌・・・。」

史織「リミューには・・・、帰れる場所があるんじゃないの?」

リミュー「帰れる・・・場所?」

史織「そう。ただいまーって言ったら、おかえりーって言ってくれるような場所。リミューにはそういうあったかい場所があると思うわ。あなたは、一人ぼっちなんかじゃないのよ。」

リミュー「・・・。わたしは、ずっとひとりだったの。そんなお館(・・)みたいな場所、わたしには・・・・・・!?」

史織「・・・うん?お館(・・)?あれ、私そんなこと言ったかしら・・・。」

リミュー「どうして・・・、お館(・・)なんて・・・。うぅっっ!!!頭がっ!!!」

痛みで頭を押さえるリミューさん。

史織「くっ・・・、私じゃあここまでが限界かしら・・・。」

リミュー「ううぅぅっ・・・。私、あなたとのお話は好きじゃないわ・・・。これ以上お話の時間はもう必要ないわっ!!!」

史織「(うぐぅ・・・。何とかならないもんかしら・・・?)」

リミューさんの攻撃開始により、再び決闘が始まってしまいました。何とかこの状況を打破できる手立てはあるんでしょうか!?

〇ショクムの技『フリースギフト』

 大気中に毒霧を撒き、相手を取り囲む。元々ショクムの吐く毒は純粋(?)で目にも鼻にも感知されないが、『フリースギフト』の毒霧は霧に取り囲まれた相手からは霧の外側は全く見えなくなる。見えなくなると言うか、外側の状況が一切掴めなくなる。誰かがいても見えないし、何かがあっても気付かない。ただし、音は聞こえる。


〇リミューの技『ルーフットドラック』

 大気種族の技の一つ。相手に大気の圧力を押し付ける。基本技だがリミューやウェンディがやると必殺技みたいに感じる。


〇リミューの奥義の一つ『大いなる安寧の時』

 リミューの意図的な(・・・・)制御が加わったのどやかの気。ご存知の通り、かかった相手は問答無用でのどやか状態に陥る。戦闘には絶大すぎる効果を持つ強力な精神技。元々効き目が薄いはずのショクムですら立ちどころにのどやか状態に陥るように、リミューが直接制御するのどやかの気は無意識時や暴走状態時の効力を凌駕する。一応精神技であるが技の性質が『気』であるので、シールドで防御が可能。ただし、史織クラスの猛者でないと対処が間に合わない。

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