〈番外面・次〉安寧との邂逅
何だか、想定よりも長引きそうな番外面になりそうです・・・。説明しておきたいことがしこたまあるせいですね、うん。
史織「・・・。平気って、どういうことかしら。お嬢さん・・・?」
???「あなたは今、ちゃんとわたしとお話してる。伊戸でも伊予でもおねえさまでも、わたしの力を受けちゃうのに・・・。どうして・・・?」
史織「・・・。さっきの・・・アレ。アンタの力だったの?」
さっきの『ぽわぽわぽわわあぁぁぁぁぁ・・・・・・!』ってやつですね。あの力は、史織さんはすんでのところで回避しましたからね。
???「わたしの力を受けないあなたはだあれ?」
史織「私は古屋図書館司書長、古屋史織。人間よ。さっきのは、アンタの力をギリギリで避けたから効いてないだけだと思うわよ。・・・、アンタは何者?」
???「そう・・・避けただけだったの・・・。わたしは、リミュー・フィアラ。大気の怪異なの。」
リミュー・フィアラさん、フィアラという名前からするとウェンディさんの親類ですかね。先ほどの発言からすると、妹さんでしょうか。物静かな雰囲気を感じます。
史織「(この子・・・、見た目は幼いけど、もの凄い力を感じるわ・・・。ウェンディとは違うタイプの印象ね・・・。)」
リミュー「史織・・・は、人間さんなの?人間さんがどうして人里の外にいるの?」
史織「・・・えっ?ごほんっ、まあ普段から里の外にいる人間なんて私ともう一人くらいしかいないと思うわよ。今日は伊戸に話を聞きに来たの。」
リミュー「そう・・・だったの。ごめんなさい。わたし、二人のお話の邪魔しちゃった・・・。」
史織「ああ、いいのよ別に。館の中にいるんだし、今からまた聞きに行けば・・・。」
リミュー「今日はもうきっと、お話できないわ・・・。」
史織「あー、そういえば何か様子がおかしかったわね・・・。リミューの力の・・・せいなの?」
リミュー「うん・・・。」
史織「えーっと、あ、そうだ。リミューはこの館には住んでないの?(何か微妙に話しかけ辛いわね・・・。)」
リミュー「うん。わたし、いつもはお外にいるの。今日、お館には久し振りに帰って来たの。みんなに会いたくなったから・・・。」
史織「まだ小さいのにずっと外にいるなんて・・・。何で館に住んでないの?」
リミュー「わたしがいると、みんな、何もできなくなっちゃうから・・・。」
史織「(あー、また暗くなっちゃった・・・。えっと、どうしよう・・・。)」
リミューさん、何やら複雑な事情を抱えているようですね・・・。
史織「(そうだわ。この子も一応この館の住人なのよね。さっき伊戸が言ってた、他にクロマリーヌを知っている人物って、この子のことかも・・・。)」
伊戸さんは、現在館に住む三人とウェンディさんの友人の他にクロマリーヌをよく知る人物が一人いる、と言っていましたね。
史織「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど。いいかしら?」
リミュー「なあに?」
史織「リミューは、普段は外で何をしているのかしら?」
リミュー「・・・、わたしは・・・・・・。」
史織「(あ、あれっ?何かそんなに言葉に詰まるような質問だったかしら・・・。)」
リミュー「・・・ううん。待って、先にわたしが質問したいわ。」
史織「え?ええ、まあ別にいいわよ?」
リミュー「じゃあ、史織は今日お外で何をしていたの?」
史織「ん?私はそうねえ・・・。人里に行って、万能の湖に行って、そして今ここに来たって感じかしら。」
リミュー「んー?ここには伊戸とお話に来たのよね。人里と湖には何をしに行ったの?」
史織「え?んー、まあそうねぇ・・・。ざっくり言うと聞き込み調査かしらね。人里に送られてくる謎の鉱物の贈り物の件についてね。犯人を捜しているの。伊戸の話もそのことで来たのよ。」
リミュー「!?・・・。里の人間さんたちは、嫌がってる・・・の?」
史織「うーん、どうかしら。鉱物の贈り物自体はすっごい助かってるみたいなんだけど、いかんせん、知らぬ間に届けられてちゃ気味が悪くってね。(私が、だけど。)怪異の仕業だってことはもう分かってることだし、これと言って特に被害はないんだけど、私としては犯人を突き止めておきたいのよね。(ん?今何か・・・。)」
リミュー「・・・。史織は、もし犯人を見つけたらどうするの・・・?」
史織「そりゃあ、とっちめてやるわよ。気味の悪い届け方は止めろって、ね。」
リミュー「・・・でも、それじゃあいけないの。今届けるのを止めちゃったら、ダメなの・・・。」
史織「えっ・・・?」
リミュー「史織、ごめんなさい。まだ誰にも知られるわけにはいかないの・・・。そのお話のことは・・・、忘れてもらうわ・・・!!!」
ぽわぽわぽわわあぁぁぁぁぁ・・・・・・!!!
史織「あっ、あぅっ・・・!!」
ひゅぅぅぅぅー・・・、どさっ
リミューさんが謎の『ぽわぽわ』を放つと、史織さんも伊戸さんの時と同様、その力に飲み込まれてしまいました。史織さんも少し粘り耐えかけましたが、そのまま地面に座り込んでしまいました。
史織「ふわあああぁぁ~・・・、気持ちのいい夕焼けねえぇぇ~・・・。もうこのままぁぁ~・・・、寝ちゃいましょぉぉ~・・・。すぅぅぅ・・・。すぅぅぅ・・・。」
あらら、史織さん!?そのまま地面の上で寝てしまいました・・・。どうしてしまったんでしょうか・・・。
リミュー「・・・。ごめんなさい・・・。」
すぃぃっー・・・
っと、リミューさんもどこかへ行ってしまいました。あれれ?どうなるんですかね、この状況は?
しばらくすると、遠くの方から三人の姿が。
小冬「史織ぃぃ!!」
伊予「あら、また伊戸と決闘でもしたのかしら。」
ウェンディ「まさか?伊戸には庭を破壊した罰として、復興作業を最優先で進めるように言ってあるはずよ?」
古屋図書館にいた三人が揃ってクロマリーヌへとやって来ましたね。
小冬「史織!どうしたんですの!?」
史織「すぅぅぅ・・・。くぅぅぅ・・・。」
小冬「・・・。」
伊予「寝てますわ。」
ウェンディ「寝てるだけね。」
小冬「もうぅ・・・、史織ぃぃぃ・・・。」
伊予「お嬢様、史織がここで寝ているということは、やはり・・・。」
ウェンディ「ええ、そうね。多分、もう確定ね。」
伊予「・・・、伊戸の姿が見えませんね。あっ・・・(察し)。」
ウェンディ「ええ、そういうことね。仕方ないこととは言え、一応お仕置き追加ね。」
伊予「あら、手厳しい。」
ウェンディ「恐らくあなたに話した通りよ、小冬。史織を連れて帰るのは任せたわ。史織に話すかどうかは、あなたに任せるから。こちらでも、動きについては調べておくから。」
小冬「え、ええ・・・。」
史織「う、ううぅぅぅんん・・・。むにゃむにゃ・・・。」
小冬「もうぅ、史織ったら・・・!」
小冬さんは史織さんを抱えて図書館まで戻ります。ウェンディさんたちはクロマリーヌへと戻り、伊戸さんの所へと向かいます。
史織さんの前に突如現れたリミューさん。ウェンディさんたちも事情は知っているようですが、この問題、どうなっていくんでしょうか・・・。
(〈未公開〉)リミュー・フィアラ 種族・大気 年齢・(種族年齢)姉よりは幼い 能力・〈未公開〉
クロマリーヌ当主、ウェンディ・フィアラの妹。事理弁識能力は充分備わっているが、年齢自体はまだまだ幼い。昔は姉たちと共にクロマリーヌに住んでいた。が、ある時期から館を離れ、若鄙全土を放浪するようになった。年相応の考え方や気持ち、心を持っており、大人な対応や考えは持ち合わせていない。純粋な気持ちで考え、思い、行動する。本当に心の優しい性格。姉よりも実年齢は低いとは言え放浪期間が長いため、実は姉よりも世界を広く知っている。自然的な知識や原理なら、姉よりも遥かに詳しいだろう。心の優しい彼女は、長くを自然の中で生きたおかげで、多くの動植物たちの仲間や友達がいる。だが、動植物たちは話すことができない。そう、彼女は長らく一人ぼっちだったのだ。