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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
始まりは大きな嵐から
11/94

〈最終面〉顕現する大気の機嫌(前編)

この()にて、本筋は一旦終了です。まだ、その後の話もありますけどね。

 ???「初めてお会いするよ、人間。私はウェンディ・フィアラ。この館、クロマリーヌの当主よ。」

史織「ウェンディ・・・。」

遂に現れました。クロマリーヌの館主にして、伊戸さん伊予さんのご主人さんです。とても凄まじい力を感じます・・・!

ウェンディ「して、人間よ。お前は何用でこのクロマリーヌを訪れたのかしら?」

史織「史織よっ!古屋図書館司書長、古屋史織!ここには人間代表として来たわ。ざっくり言うと、ここ最近アンタが起こした大嵐のせいで万能の湖が大変なの。だから、アンタに落とし前をつけてもらいに来たのよ!」

ウェンディ「ふむ・・・。よくは分からんが、北の湖に大嵐・・・?」

おや?何かウェンディさんは引っ掛かることがあるのでしょうか?

史織「そうよ!アンタが起こしてるって、私の勘が断言してるわ!それのせいで、人里が迷惑してるのよ。その面倒が私の所にこうやって回ってきたんだから。」

ウェンディ「ふむ・・・、少し待ちなさい・・・。・・・・・・。」

史織「ん・・・?」

ウェンディ「・・・なるほど。お前の勘とやらはなかなかどうして、やるじゃない。確かに、北の湖の嵐は私の制御下にあるらしい(・・・)わね。数週間前からずっとか・・・?」

史織「らしい(・・・)って何よ、らしい(・・・)って。アンタがやったことでしょ?」

ウェンディ「うむ。確かにそうなのだけど、北の湖を嵐にした覚え(・・)がないわね・・・。数週間前に散歩に行ったきり湖には行っていないし、その時も湖は平和だったはず。お前に話を聞くまで、北の湖がずっと嵐のままであったという事実さえ覚えていなかった。なぜ嵐にしたのか理由すらも分からない・・・。」

史織「ええー、ボケたんじゃないの?」

ウェンディ「失敬な。私はまだボケるような年じゃないわ。まあ何にせよ、人里に危害が加わっているのはマズいわね。明朝にでも嵐が止むよう調整をしておくわ。」

史織「あら、従者二人と違って話が分かるじゃない。まあ大人しく元に戻すのなら、今回は見逃しておいてあげるから。じゃあ、頼んだわよー。」

良かったです。事件も無事に解決しそうです。さて、史織さんも早く小冬さんを連れて帰りましょう!

・・・と、思った矢先。史織さんも帰りかけようとした矢先。

ウェンディ「待ちなさい。まだ私の用が済んでいないわ。」

史織「は?アンタに用なんてないでしょ?」

ウェンディ「私の大切な従者二人をいたぶっておいて、ただで帰れると思っているの・・・(威圧)?この落とし前はお前の命一つ程度で気が済む私ではないわよ・・・!」

史織「そ、そんなこと、アンタが人里にもたらした危害分で帳消しでしょ!」

ウェンディ「それとこれとは話が別だわ。嵐の方はしっかりと対応する。だから、二人の方もしっかりと対応するのよ!!」

史織「(ぐっ、この体力だから戦闘は避けたかったんだけど、どうやらもう逃れられないようね。)」

ウェンディさんの凄まじすぎる怒りが溢れ出ています・・・!

史織「いいわっ!どっちみち、最初は力づくで捻じ伏せるつもりだったし、アンタがそれを望むのなら受けて立とうじゃない!私の本気の力を、その身に叩き込んでやるわっ!!!」

ウェンディ「あっはっは!人間の分際で舐めた口を利いてくれるじゃない!『大気の機嫌』と呼ばれたこの私が、伊戸と伊予の分まで、お前を地の底へと叩き落としてくれるわっ!!!」


 さあ、最終決戦。本日最後の決闘は、クロマリーヌ上空で繰り広げられます!

ウェンディ「ふっふっふ、さあて始めようか・・・。伊戸と伊予を打ち倒したお前の実力、しかと見せてもらうわよ・・・!」

史織「正確には、私が倒したのは奉公人(・・・)の方だけだけどね。」

ウェンディ「ん・・・?ふっ、まあいい。」

ヒュルルルゥゥ・・・、シュパンッ!

おや?夜の暗さのせいでよく見えませんが、ウェンディさんは何やら手に武器のようなものを召喚したようです。剣・・・でしょうか?

ウェンディ「まずは・・・、一閃。」

シュンッ!

史織「(早いっ!!でも!)」

ズバアァァァ!!!

史織「・・・っと。」

ウェンディ「ほう・・・、よく避けたな。」

史織「生憎、勘と反応力には自信があんのよ。」

ウェンディさんの素早い斬り込みをまたもや紙一重で回避する史織さん。

史織「・・・。何かこんなやり取り、アンタんとこの従者二人ともやった気がするわ・・・。」

ウェンディ「うちの従者たちには、敵は一瞬でかつ一撃で仕留めるように言ってあるからね。ふふっ、しっかり言いつけを守ってくれてるのね。嬉しいわ。」

史織「何を嬉しがってるのよ・・・。」

ウェンディ「いいじゃない。じゃあ次は・・・、連撃で。」

シュンッ!

史織「ったく!」

ウェンディ「細切れになりなさい!!」

シュッシュッザシュッザシュッザァッザァッ!!

史織「(うぐぐ・・・!)」

ウェンディさんは素早い剣の連撃で史織さんに猛攻を加え続けます。

ですが、史織さんは史織さんでその超速の猛攻を全て避け切って(・・・・・・・)います。な、なんということでしょう・・・。勘と反応力の良さだけではこんな芸当、できるわけがないような・・・(呆気)。信じられないほどの地の強さ(・・・・)です・・・。

ウェンディ「はあぁぁぁっ!!!」

ブォンッ!

史織「うぐっ!?」

キィィーン!!

ウェンディさんの最後の一太刀だけは、さすがの史織さんもシールドで防御しました。

史織「はぁ・・・はぁ・・・。」

ウェンディ「・・・お前、余程術式を使いたくないらしいな。最初からシールドで守っていれば楽だったものを・・・。だが、私の連撃をほぼかわし切った技術には感服させられたよ。」

今の史織さんは体力も魔力もなくなりかけている状態。シールドを張らなかった理由は、体力よりも魔力を温存し、少しでも攻撃術式の威力を温存しておきたいからのようですね・・・。だとしても、そんな状態にも関わらずさっきの避けっぷりは、もはや人間業ではなかったですよ・・・。

史織「はぁ・・・はぁ・・・。まあ、おおむねアンタの考えは当たっているわ。秘薬のおかげでどうにか今はこうしていられるけど、もう私も体力の限界なのよ・・・。」

うむむ、やはり史織さんが危機的状況なのは揺るがないようです。

ウェンディ「あんな風に避けられちゃ、何だか剣の自身がなくなってきそうだわ。全く。」

史織「知らないわよ、そんなこと。」

ウェンディ「お前の体術の凄さは分かった。次は術式の方も見せてもらいたいわね。」

史織「そうおいそれと見せるわけないでしょ。逆にアンタら怪異はいちいち説明までしてくれるヤツらが多いから、助かるわぁ。」

ウェンディ「我々は、その力を相手に見せつけたいのよ。それが本能なのよ。お前のその力も・・・、見せてもらうわ!」

ウェンディさんが、腕を上から下へと振りました。すると!

ビュゴオォォォォォ!!!!

凄まじい突風が吹き荒れ、史織さんを襲います。

史織「うぐぐっ・・・!」

ウェンディ「私は自分の気ままに気象現象を操れる。雨や風、晴れにしたり嵐にしたり、色んなことができるのよ。その突風はさっき、伊予の『炎隼』を吹き消した風。さあ、お前はどこまで耐え切れるのかしら!?抑えてある魔力を解放してもいいのよ?」

なるほど。先ほど伊予さんを追いかけていた『炎隼』を撃ち落としたのはウェンディさんだったと。つまり、伊予さんと史織さんとの決闘を見物していたようですね・・・。

史織「ぐっ・・・!(これ以上は・・・!でも、この風の威力なら、返せば(・・・)アイツだって!!!)」

ウェンディ「ん?」

史織「アンタの風の力、きっちり返させてもらうわよっ!『到来返戻』!!!」

バビュゴオオォォォォォォォ!!!!!

史織さんの『到来返戻』がウェンディさんに襲い掛かりました!

史織「はぁ・・・はぁ・・・。ど、どう・・・、なっ!?」

ウェンディ「っとっと、危ない危ない。ちょっと遅れてたら巻き込まれてたわね。」

なんと!ウェンディさん目がけて突風が襲ったはずですが、全くその場から動いていません!それどころか、ウェンディさんが手を掲げている指の先に何やら突風の塊のようなものが抑え込まれています。

史織「な、何で・・・!?」

ウェンディ「いやー、今のがお前そのものの力(・・・・・・・・)だけだったなら、私はひとたまりもなかったでしょうね。でも、残念ね。その技の性質が気象なら、私はそれも制御できるの。つまり、いくらお前から放たれた技であっても、それが突風という気象(・・・・・・・)であるならば、私はそれも自在に制御できる。今もこうしてお前の放った突風返し(・・・・)とやらを、この手に抑え込んであるのよ。」

史織「そんな・・・!?」

ウェンディ「ああー。でも、お前の力が思ってた以上に強いせいでこれ以上は無理ね。」

パァァァン・・・!

突風の塊が解放された音が響きます。渾身の『到来返戻』はほぼ無効に終わってしまいました・・・。

史織「くっ・・・!」

ウェンディ「ふふっ。今の返し(・・)がお前のとっておきだったのかしら?上手く決まらなくて残念でしょうけど、この夜はまだまだ終わらないわよ・・・!」


 中編へ続く

(クロマリーヌ当主)ウェンディ・フィアラ   種族・大気  年齢・(種族年齢)幼い  能力・気象をやたら制御できる能力

 通称・大気の機嫌こと、大気の怪異。堅くな鉱山中腹に構える館・クロマリーヌの当主様。大気種族的に幼い(・・)だけであって、伊戸よりも年数は上。(怪異の中でも種族的な年齢が分かっている場合は、上記のように種族年齢で表記される。(通常は成熟年齢で表記されている。))努めて年長であろうと振る舞うものの、やはり細かい言動には幼さが見える。伊戸と伊予の二人の従者のことをとても大切に思っており、逆に二人からもとても慕われている、超理想的な主従関係にある。館の内外のことはほぼ二人に任せっきりだが、それも信頼あってのこと。館には普段伊戸、伊予、ウェンディの三人で暮らしている。が、昔は妹も一緒に暮らしていたらしい。気象制御の能力は応用性、汎用性が非常に高く、戦闘にも転用できる。また、ある場所一点だけに気象を起こす、といった芸当も可能。攻撃系の多くは雨、風、雷、雪と範囲系が多く一撃に欠けるため、その場に応じて気象を固形化させた武器を用いることが多い。今回使用している剣は風を固形化させている。別に、能力を使わずとも、普通に強い。

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