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幼少期 第六話
フィア先生の教えを受けてそろそろ二年になる。
二ヵ月後には俺も六歳だ。この世界で生まれ変わってから六年、長いようで短い毎日だった。
最初はやはりこの世界の異質さに慣れなかったものだが……
今となっては不思議な現象を巻き起こす魔術などもあり中々楽しめていると思う。
俺はこれまでに中級魔術までは合格を貰うことが出来た。
魔術は生活魔術を最も簡単な物として初級魔術、中級魔術、上級魔術、そして戦略魔術という感じで区分化されている。
ぶっちゃけ、生活魔術ができれば初級魔術もほぼ使う事は出来る。それをどう運用するかそれが魔術師とそうでない者の違いだろうか?
俺は生活魔術を詠唱で使えるようになった後、そのまま中級魔術を習う事になった。
中級魔術を教えてもらうようになって変わったのはフィア先生が俺の相手となり邪魔してきたりするようになった事だろう。
必死に詠唱をしている間に攻撃してきたり、とはいっても怪我をするような攻撃ではなくタッチされたら攻撃を受けたとみなされるような感じで邪魔をしてくるという表現になった。
流石に子供の俺には実戦はまだ早いからな。
ただ言わせてもらうと、フィア先生の攻撃を受けないようにしながら詠唱するというのはとても難しかった。
俺はただでさえ魔術言語を理解できない体質なのだ、フィア先生が唱えてくれる詩を拾いそれを真似て何とかすることになる。まあ何度も聞いていると所々で知っている単語というかそういうのが出てくるので何となくだが法則性はつかめた気はする。
因みにルシオはやはりというか精霊言語を自然と理解していた。
これは俺が生まれ変わりだから理解できないという説が濃厚になってきたと思う。
因みに中級魔術の合格ラインは、中級規模の魔術を一時間のうちに十回使用できる事と、動きながら詩を唱え終わり発動させることが出来る事だった。
それこそぶっちゃけてしまえば、俺は動きながらでも中級魔術を無詠唱で使う事はできたがこれは効率が悪い事に気付いた。
中級魔術になって気づいたのは詠唱の方が魔力の消費が少ない点だろうか?
こういうところで差が出てくるとは考えもしなかったが詠唱することにも利点があるという事を知れたのはこの二年のなかで最も大きなことではないだろうか?
そうそう、俺が詠唱をごまかして無詠唱で魔術を使ってる事はフィア先生にはばれてしまった。
無詠唱で可能という事を説明したらたいそう驚かれ、その後根ほり葉ほり聞かれはしたがフィア先生に知られたことによる問題は特になかった。
ただ、よほどの事が無い限り生活魔術や初級魔術以外は無詠唱で行わないように注意されたけども……
なんでも、生活魔術や初級魔術の一部なら無詠唱で魔術を使える人間は存在しているとの事だが中級にもなると現在では情報が無く、その位異質な事なのだそうだ。
そして俺はこの時に魔術言語が理解できないことを伝えたら、極稀にだが俺のように魔術言語を理解できない人間が存在するという事が解った。
もしかしたら俺のように生まれ変わったりした人なのだろか?
この辺はそういう人に出会ってみないと解らない事だが、もしそういう人がいるなら会ってみたいなと少し思う。
でも、もし俺のような境遇の人なら無詠唱で魔術を使える可能性があるんだよな?
それなのにそういう無詠唱の話題とか出てこないという事は違うのかもしれない……
まあ、今はそんなこと気にしても仕方ないのでその時にでもなったら考えるとしよう。
中級魔術の合格を貰った俺は上級魔術の指導を受けたのだが、これはレベルが違っていた。
まず詠唱がとんでもなく長い、フィア先生が使える最高の上級魔術にもなると詠唱だけで十分くらいだろうか? 長すぎて一人での運用は無理である。
フィア先生が言うには上級魔術は一人の時に使う事はほとんどないとの事で、仲間を集めて冒険するようになった時に効果を発揮するものとの事だ。
要は本当に魔法使いに立ち位置になるという感じだろう。
フィア先生は現役の三級冒険者でもあるらしく、固定の仲間という者は居ないが臨時でパーティを汲んだりすることはあるらしい。そういった時に上級魔術は役に立つそうだ。
前衛職の人達が敵を引き付け、魔術師は詠唱に専念し、大きな一撃を敵に与える。
そんな感じなのだろう。
そんな上級魔法だがもちろんこれも無詠唱で行う事は出来る。
ただ。イメージはとても難しくなった。
今俺が上級魔術を無詠唱で行うとなれば、規模も安定しなければ、一度上級魔術を発動させると一日動きたくなくなるくらいに疲れてしまう。
因みにイメージしている内容は、凄く大きな炎をあの位置に等適当なのがいけないのだと思う。
中級魔術くらいまでならイメージしやすかったのだが、上級の規模が規模だけにとても難しい。
もっと前世で勉強しておくべきだったと少し後悔している。
これが俺のこの二年の成果である。
今後も中級魔術の訓練を続けながら上級魔術の訓練をしていく感じだろう。
そしてルシオは中級の合格は流石にもらえてない。
ただ使うだけなら使うことが出来る。
これだけでも驚きなんだけどね。
やはり実戦運用を想定しているからまだルシオには早いようだ。
俺もぶっちゃけ未だ難しくはあるくらいだからな。
しかし俺はもうすぐ六歳になるので今後は武術の訓練も始まるので中級魔術の方がそれを機に成長を見せるのではないだろうかと予想している。
また新しい家庭教師が来るのかと楽しみにしたりしてたがそれはかなわなかった。
かわいい家庭教師大歓迎なのに。
俺の武術を見てくれるのは何と執事のルークである。
なんか武術にも精通しているらしく下手な家庭教師を雇うよりよっぽど凄いらしい。
本当ルークは何者なのだろうか?
パーフェクト執事、魔術もかなり使えて、武術も得意となると、彼に苦手なものはあるのだろうか? ルークが教えてくれるという事を知ってからこんなことをよく考えるようになった。
そうそう、あとこの二年での大きな変化といえばアンが正式に俺専属のメイドとなったことだろうか?
六歳になると、街にも自由に行くことが出来るようになる。その時のお目付け役的な感じで誰かがつかなくてはならないのだが、その役目がアンになった。
アンはとろいからはっきり言って役目をこなせるのか疑問しかわかないが、俺からすると接しやすいので助かる。
そして、俺が武術を習うようになれば一緒にアンもそれに参加するようになるという事だ。
アンに武術などできるのかと心配したが、それは不要だった。
そもそもこの世界のメイドさん達、何気にスペックが高いのだ。
読み書き計算は一般人よりもちろんできなければならないし、メイドになる為の試験には武術も組み込まれているようで、それを通らないとメイドとして働くことはできないとの事。
なのでアンはあんな感じでもそこそこ腕もたつらしい。驚きである。
アンについて後はそうだな――
最近は悪戯しても『はぁ、またですか』という感じで昔より反応が悪くなっている事だろうか?
アンコレクションは少し増えたくらいでこれといった変化はない。ないったらない。
そんな中でも一番反応が大きかったのは三日に一回ある湯あみを覗いた時の反応が見ものだったくらいだろうか?
この世界ではお風呂というのは貴族でもない限り早々入れるものは無い。
宿とかでは身体を拭くくらい、もちろん貴族が泊るようなところには風呂はあるそうだが……
しかしこの家ではメイド用にもお風呂が用意されている。さすがにメイド達は毎日は入れないが、アンの湯あみのタイミングで覗いたら本気で怒られた。アンがここまで怒るのは初めて見たのでかなり驚いてしまったな。
そのあとものすごい勢いで謝れたが……
因みに、メイドという事で俺達に強く出る事は出来ないそうだ。なので必死に謝ってきたわけであるが…… その光景を目撃した母にばれてしまい、その後物凄い叱られた。父にも軽く説教された。父は男だからか、そこまで怒りはしなかったが…… まあ厳重注意といったところだった。
さて二ヵ月後の誕生日であるが、これは今までの誕生日と違い大きな意味を持つ。
この世界で六歳は一つの節目である。まあ日本でも小学生に上がるタイミングと言えば節目なのだが、この世界ではまた違った意味の節目なのだ。
この世界には小学校に相当するようなものは無く、普通の家庭では本格的な仕事の手伝いなどを始める年齢になるのだ。
うちのような貴族の場合もまた、貴族としての在り方などを学んでいくことになる。
因みにだが貴族といっても俺が日本で抱いていたようなイメージとは違う物だった。
俺のもっていた貴族のイメージは簡単に言うと、街の住人から税金を取り立てて豪遊して遊んでいるようなそんなイメージが最初にあったのだが、この家に関しては全くと言ってそんな事は無かった。まあ町の人よりは裕福な生活をしていることは確かだけど、それでもフィア先生が言うにはそう大きな変化はないそうだ。
そしてこの世界の貴族、それは国王から領地を任されているのはイメージ通りであるが、かつての賢王はこういったそうだ。「貴族は治めている領地を豊かにしなければならない」と、自分達だけが豊かになるのではなく治めている領地すべてを豊かにする事、これが貴族としての責務である。
よって、領地に何か災害が起きた時、襲撃があった時など率先して動き領地を守るというのも貴族の役目である。そのため武術や魔術などを子供のうちから学ぶのだ。消して道楽などではないのだ。
まあ、フィア先生に聞いた話だと、それでもやはり腐ってる貴族はいるらしいが……
うちが腐れ貴族でなくて良かったと思う。
少し話は逸れてしまったが、この世界での六歳というのはこのようにとても大きな節目手になる。
そしてその節目には洗礼式という物があるので、明日から俺はそれの準備に取り掛かることになる。まあ洗礼式と言っても大したことをするわけではないのだが、当時に着る服などを準備したり、この家と親しい貴族に手紙を出したりしないといけないくらいだ。
何故俺が手紙を書かないといけないかというと、お披露目でもあるらしい。
今回行われる俺の六歳の誕生日は結構大きなものになる。
滅多に使う事のない大広間の準備をしているくらいだからな。
ちなみに招待状は半年以上前にちゃんと親が出しているので、俺の手紙は形式だけだ。
ようはこのようにちゃんとした手紙が書けるんだぞというアピールである。
まあ俺の昔の知識、そしてこの世界に慣れてきた俺の渾身の手紙をを書いてやるとしよう。
こうして誕生日まで俺は忙しく過ごすことになる。
幼少期も終わりに近づいてきました。
少年期は書きたい事がいっぱいなのでどうなるか心配です……
昨日240ものアクセスを頂きました。
いきなり増えたアクセス数に困惑していますが、引き続き楽しんでいただけるものが書ければと思っています。
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