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episode0003

 幼少期 第三話


 箱の中に入っていたのは短剣だった。

 乳白色の皮っぽい素材に金属をあしらった豪華な見た目の鞘に収まった短剣、まあ今の俺身体からしたら結構な大きさになるんだけど。

 俺は木箱を机に置き短剣を恐る恐る持ち上げる。

 ずっしりとした重みを感じる。


「父上、抜いてみてもいいですか?」

「ああ、抜いてみなさい」


 俺は短剣を鞘から抜く、謝金とか音がするかと思ったけど特にそういうのは無くスッと抜けた。

 短剣はまっすぐとした白銀の刃を携えていた。

 こういったものに前世の俺自身詳しくは無かったからよくわからないけどおそらくダガ―とかそういうやつなのかなと思う。

 よく見ると刀身とでもいうのか、そこには不思議な文様が刻まれている。

 それがこの短剣の美しさをさらに際立てているようにも思えてきた。


「ありがとうございます。大事にします」

「うむ、先ほど言った事を忘れずにな」


 自然とお礼を口にしていた。

 そして父の言葉に対し頷く事で返事を返した。


 その後俺の誕生祝とフィアさんの歓迎会を兼ねたパーティは恙なく進み解散となった。

 デザートが去年よりも豪華だったのが印象的だっただろうか?

 因みにこの世界には日本にいた時のようなデザートは無い。

 豪華だったデザートと言っても本当にフルーツの盛り合わせとかそんなレベルである。

 小麦などはあるから一応クレープとかは作れるかもしれないけど、俺がこの世界で生まれてから四年間の間で見た事は無いのできっと無いに違いない。ないよね?


 そんな益体も無い事を考えつつ今日送られた短剣を眺める。

 今俺は自分の部屋で短剣は机の上に飾っているというか置いている。どのように保存すれば良いのかもわからないので取り合えずだ。明日メイドさんに聞こうと思う。

 そして俺は何故これを送られたのかを考える。

 あの時は場の流れ的なものに任して返事をしてしまったが、結構重大そうなことを言っていた。

 確かにこの世界は魔物などもいる世界で何処に身の危険が潜んでいるか解らないそんな世界だ。

 日本のように治安がいいわけでもない。

 よって身を守るための物これは解っているつもりだ。

 そして人を傷つけるための物でもない、これは日本人だった俺からすればまあ当たり前の事ではある。まあ日本でも刃物を使った犯罪はあったけど……

 大事な人を守るため、これもそう難しい事ではないと思う。

 ただこの世界のことだただそれだけの事ではないとちょっと思っている。

 そして何よりも大事な事を守るため、これが実を言うと少し意味が解らない。

 自分の命も、親しい人も大事だと思う。

 今、この瞬間にこの屋敷にいる誰かを襲う魔物などが居たら俺はためらう事なくこの短剣を手に取るだろう。


「ふむ、わからないな…… 何れ分かる時が来るのかな?」


 俺は思考を放棄して寝る事にした。


―――――


 翌朝、いつも通りの朝食の時間。時間はいつも通りだが今日は昨日までと違いファイアさんの存在が増えていた。

 まあ昨日から滞在しているので当たり前と言えば当たり前かもしれないが。

 因みにフィアさんはこの家の客人として対応されていて、いうなれば賓客扱いだ。


 朝食が終わりに近づいたころフィアさんに声をかけられた。


「本日より、魔術の指導を行おうと思ってます。なので朝食後、準備をしたらお庭に来てください」

「庭…… ですか?」

「はい、今日は魔術の指導というよりは今後の為に色々とした準備になりますので、そうですね多少服が汚れてしまうと思うので汚れてもいい服に着替えてくださいね」

「わかりました」


 汚れてもいい服装か…… まあぶっちゃけて言えばどれも大して変わらないんだけど…… 服を選択するのもメイドさんだしな。

 取り合えず後でアンに何かしら用意してもらおうっと。


 こうして朝食の時間は過ぎ、俺は今庭に出た。

 先に庭に出ていたのかフィアさんはルークが世話をしている庭木などを少し背伸びしながら眺めている。それも色々な角度から。

 ルークは庭木の剪定とかが趣味のようで、それはもう美しく剪定するのだ。

 そんな彼女をボーっと眺めつつ、なんと声をかけていいか迷っていたところルシオが現れた。

 仲間にしてほしそうに此方を見つめている。

 これはもう仲間にするかしない……


「ルシオも魔術の勉強がしたいのか?」

「まじゅちゅのべんちょーすりゅ!!」


 右手を高らかに上げながらの宣言にフィアさんがこちらを振り向く。

 うむ、気づいてもらえた。


 少し顔を赤らめながらフィアさんがこちらに近づきつつ口を開いた。


「来ていたなら声かけてくださればよいのに、ひょっとして見てました、か?」

「はい、えっと…… なんか楽しそうだったので声をかけれずにいました」

「たのしそー!!」


 無邪気なル氏をの発言にさらに顔を赤らめるフィアさん。

 何が恥ずかしかったのだろうか?

 まあそんな事はどうでもいいか。


「それで、えっと、弟のルシオなんですけど…… 多分邪魔したりはしないので一緒にいさせてもいいですか?」

「エレク様は本当にしっかりされていますね。 ルシオ様も一緒で大丈夫ですよ」


 ルシオに対してニコリと微笑んで見せたフィアさんは俺に向き直り説明を始めた。


「では、今日これよりエレク様に魔術の指導をさせていただきます。以後私の事はフィア先生と呼ぶように!!」


 ちょっと顔を赤らめつつも威厳のある表情でいうフィアさん、もといフィア先生。

 少し可愛いな…… おっといかんいかん。ああみえてももう二十四だ。俺が二十歳になる頃なんて四十過ぎのお…… おっとこれ以上は拙いな。


「それでは、まずエレク様に魔力を知ってもらうところから始めたいと追います」

「魔力…… えっ」

「にいたま、まりょくこねこねー」


 俺の言葉にかぶせるようにルシオが言ってくれた。

 そう、俺は多少の魔術を使うことが出来る。よって魔力を知っているのだ。


「こねこね? ん? エレク様は魔力知っているって事ですか?」

「あっ、はい―― メイドさ、メイドが魔術を使っているのを見て興味を持ち聞いたりして魔力の操作は少しできます」


 ポカーンとした表情のフィア先生。

 うん、やっぱりこの人は可愛い、これは間違いないという事が解った。

 しばらくした後再起動したらく……


「本当に昨日から驚かされてばかりです。ランドール様がとても才能あるので是非にと言っていた意味が解りました」


 ハァと小さく溜息をつきつつ、首を横に振るフォア先生だった。


「では、一応魔力操作ができるという事ですが、念のためやってみてください。あちらに魔水晶を用意してあるのでその中に形の良い球体を作れれば合格とします」


 そう言い手を差し出した先には小さな机と、クッションに乗った薄紫色の水晶が置いてあった。

 あれはメイドさん達に魔法の事を聞いた時にも使った事のある魔術を行う上で最も基礎となる魔力の扱いを練習するための水晶で、魔力をとても通しやすい物質なのだそうだ。

 そもそもこの世界に来るまで魔力なんてものが無かったから初めて聞いた時、見た時はびっくりしたものだ。

 そしてあの水晶、うちにある水晶よりきっといいものに違いない。

 透明度がうちにあるやつより高い。


 俺は魔水晶が置いてある机の前まで進み、魔水晶に手をかざす。

 そして指先から魔力を絞り出すかのように放出した。

 初めこれが出来るようになるまでは魔力って何さと思ったものだ。

 だがこうやってできるようになると体の中で何かが動いている感覚というのが解るのだ。

 不思議なものだ……

 暫くすると魔水晶の中心辺りに淡い光が宿る。

 今はまだ水晶全体が光っているような感じに見えるが、この後こねこねすると綺麗な球体のようになるのだ。これも魔力の不思議の一つである。

 やがて自分の思い描く形になったところでフィア先生の方を向くと、それを確認するために近づいてくる。

 魔水晶を確認したフィア先生は、一つ頷くと、俺の頭に手を乗せた。


「大変よくできています。素晴らしいですよ。四歳でここまでできるとは正直思っていませんでした。本当にここに来てから驚きの連続ですよ」

「せんせ、ぼくもやるっ!!」

「えぇぇぇっ? ルシオ様もひょっとしてできるのですか?」

「えっと、解りません…… でもルシオの事だから出来るような気もしないでもない?」


 ルシオは色々な意味で天才なのでなんかできるような気がする。

 俺の真似を良くしてるし、物覚えもいいからな……


―――――


 ルシオは結果だけ言おう。

 合格点はもらえなかったがフィア先生を驚かすには十分すぎる出来だったとだけ言っておく。


「なんか、ここに来て今までの一生分驚いている気がします…… あの庭木もそうですし……」


 なんかぼそぼそと呟いているフィア先生だったが気を取りなおすためなのか首を何度か横に振り、こちらに向き話し出した。


「正直今日は魔力を放出するくらいまでで終わると思っていたのですが…… まあ準備はしてありますので少し休憩を挟んでまたここに来てください。ちょっと準備しないといけないものがありますので…… そうですね準備が出来たら合図をします」

「合図ですか?」

「はい、よく見ててくださいね」


 そういうと右手を天に掲げフィア先生は詠いだした。

 そう、俺にはさっぱり理解できない魔術言語だ。

 しばらくフィア先生の詩を聞いていた。全く理解できなかったが……

 そして詩が終わるとフィア先生の掌から空に向かい何かが飛び出した。

 火を付けたりする魔術以外をはじめてみたので少し驚いたが、フィア先生から飛び出た何かは少し高いの位置、屋敷の二階の窓くらいの高さで停滞し五回ほど明滅を繰り返したと思ったら消滅した。

 うん、たしかに合図にはもってこいだね……


「これが見えたら、ここに来てください」

「はい、わかりました」

「ぼくもわったー」


 俺とルシオが答えてしばらくの休憩になった。

 準備をするって次は何をするんだろうね?

 ちょっとだけ楽しみにしながら俺は屋敷に戻った。


思ったより進まないものですね。

本当はもう少し進行が速い予定だったのですが……


投稿をはじめてから二日目にして100近くのアクセスを頂きました。

ありがとうございます。

今後とも拙作にお付き合いいただければと思います。

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