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プロローグ
「では受験番号〇一八三、前へ」
「は、はい」
「そう緊張する事は無い、自分の得意な魔術を使うだけだ。では始めなさい」
「あっ、えっと、はい……」
どうしよう、取り合えずどうしたらいい?
いつも通り魔術を使うのは良いとしよう。でもだ、いつも通り魔術を使ったらこの場合大変になるんじゃなかろうか?
そんな事を考えつつも試験管に言われた通り魔術の準備をする。
準備と言っても大した事は無い、ちょっとイメージするだけなんだから。
俺はいつも通りイメージする。今回イメージするのは水、そして球体、今までの受験生の魔術を見るからに本気を出さなくてもよさそうな気がするので一つ、大きさもさほど大きくなくて良いだろうからサッカーボールほどの大きさで良いだろうか。
イメージは瞬時に固まった。
そして俺左手を突き出し握っていた拳を開き一言だけ放つ。
「ウォーターボール?」
俺のはなった言葉とともに俺の左掌の前にイメージ通りの大きさの水の塊が具現化する。
そしてその水の塊を的に飛ぶようにイメージしたらそれは吸い込まれるように的へと飛んでいきおおよそ水がはじける音を立てて水の塊は霧散した。
「はっ? 詠唱は?」「あいつ一体何をした?」「えっ、なになに?私見てなかった」「てかあれ男?それとも女?」
等の声がそこかしこから聞こえる。あと、俺を男か女か言ったやつ顔覚えたからな……
そんな事を考えていたら試験管が声を詰まらせながら言った。
「じゅ、受験番号〇一八三、ご、合格!?」
まあ落ちるとは思っていなかったがどうやらちゃんと合格できたようだ。
内心ほっとしつつ周りを見ると、唖然としている者、俺をねめつけるように見る者、様々な反応だ。それを見た俺はホッとしたのもつかの間背中に嫌な湿り気を感じてしまう。
やっぱり、拙かったかな……
こうして俺は一応ではあるがこの王立魔術学院に入学することが決まったのだった。
さて、合格したのは良いがこれから先の事を考えると、いましがたの反応を見るからにちょっと拙い事になりそうな予感がして仕方がない。
まあはっきり言ってしまうとこの世界で無詠唱で魔術を使う事は一般的ではないようなのだ。
しかしながら言わせてもらえば、詠唱、そんなのははっきり言って無駄でしかない。俺は常にそう思いこれまで生きてきた。
と、このように言えば多少は格好がつくかもしれないが、実は詠唱が出来ないだけである。
はっきり言って何を言ってるのかさっぱりなのだ。
この世界の言語は十二歳になる現在までにまあ自然に覚える事は出来た。子供の頭の柔軟さを理解したね、うん。
俺は十二年ほど前はこの世界ではなく地球で暮らしていた。
だけどとある理由で、俺は地球での生を三十七歳で幕を下ろすことになる。
そして気づいたら赤子としてこの世界に生れ落ちていた。それも今行ったように過去の記憶を持ったまま……
最初は本当に訳が分からなかった。なんせ気づいたら赤子だぜ? 冷静でいられると思うか? いや普通の人間ならまず冷静でいられないと思う。いや断言しよう冷静でいられるものか!!
まあ少し、いや結構時間は掛かったけどまあ落ちつけはしたが。
そんなこんなで嬉楽し、そして恥ずかしい経験をしつつ、俺はすくすくと育つことが出来た。
しかし、俺はまだその時はこの世界の事を知らなかったんだ。
あれはそう、俺がハイハイで色々動き回れるようになったころだったか……
俺はまあとてもアクティブな子供時代を送っていたと思う。
まあ大人としての記憶がある中、赤子の身体でまともに動けないんだ、動けるようになったら動きたくなるってもんだろう?
そんなこんなで家の中を散々動き回った訳だ。
それまでに気づいていた事として言うと、俺が生まれた家はまあ良くも悪くもない感じのこの世界でいうのであれば一応貴族という事になる。
おかげで食べる物に困るとかそういう生活を送ることにならなくて良かったと思うが、まあ日本での生活に慣れている俺からすると少し貧しく感じるのはまあ仕方が無い事だと思う。
俺の生まれた家は、まあ貴族ではあるが別に裕福という訳ではなかった。
そこはまあ何というか、田舎の木っ端貴族とでも言うべきか……
そして家の中を動き回っていた時に見てしまったのだ。
うちのメイドさんが窯に火をつける瞬間を。
あれ? こういうと別に何も不思議ではない気がするが、違う。
その火をつける瞬間、普通ならライターとかまあ世界観的にいうならば火打石? 使ったことないから知らないけどさ。
まあそういう物を想像するのが普通だと思うが、メイドは何やらブツブツ一分くらい何かを呟いたら指先から火を出すじゃないか。
俺は驚いたね、そして驚いた拍子に腕の力が抜けて床に顔面をぶつける事になったのはある意味いい思い出だ。あれは何気に痛かった。
倉庫の世界にはよくわからないけど魔法じみたものがあったのだ。
初めは驚いたけど、色々なゲームをやったことある俺は正直ワクワクしたのはしょうがない事だと思う。
いくら三十七歳になったからと言ってそういうのには何気に憧れる者だと思う。
魔法が使えたらいいのにって考えるのが普通だと思うんだ。
それを見てからの俺と言えば、メイドさんに魔法の事を聞いてみたり、親にまほうのことをきいてみたり、真似してブツブツ唱えてみたりしたもんだ。
魔法に興味を持った俺を見て親はたいそう喜んだ。
まあこの世界では魔法は一般的であり、まあ言っては何だがほぼすべての者が大証問わずなら使える、そんな感じの一般的なもの。
そういう事もあり四歳になる頃、うちに家庭教師が来ることになった。
「っと、もう宿か」
考え事をしながら歩いていたせいもあり宿まで早く着いた気がしないでもないが、合格を貰った事だし今日は宿でのんびり過ごそうとおもう。
俺は宿泊している宿の扉を開いた。
「あら、おかえりなさい。試験はどうだったんだい?」
「あっ、はい、なんとか合格出来ました」
「おお、そりゃすごいね。王立魔術学院を受験したんだろう? という事はエリートじゃないかい」
「エリートかどうかはまあちょっと解らないですけど……」
「まあ何はともあれおめでとう。それじゃ今日の夕食にお祝いに何か一品サービスしようかね」
「あっ、ありがとうございます」
そのご他愛もない会話をして俺は部屋に戻った。
そしてさっき思い出していた事を思い出す。
初めての投稿になります。
稚拙な文章、物語かも知れませんがこれを読む誰か一人でも楽しんでいただけたらと思います。