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チート能力確認……。やっぱりおかしいよねこれ?

 「……」


 極彩色の空間から一転、気づいたら目の前にはかろうじて理解可能な世界が広がっていた。


 足下には魔法陣。冷たい石材に直接刻まれたそれは、どこか畏怖を感じさせる赤に光り輝いている。


 魔法陣からこの部屋の扉までは、魔法陣とは違う色合いの赤いカーペットが敷かれており、庶民感覚では分からない、どこかセレブな感覚を思い起こさせる。


 概してもとは石材だけの部屋に、なにか目的をもって整え変えたように見えた。


 その目的とは、俺がこの場所に召喚されたことでもはや明確だろう。


 採光までもを計算して魔法陣の位置を決めたのか、魔法陣と扉をつなぐカーペットの上、ちょうど光が降り注ぐ焦点となっている場所にて手を組みたたずむ少女が、伏せていた顔を静かに上げた。



 金髪に、銀の双眸。アルビノかと思うほどの白い肌を露出の少ない服の中に隠し、その桜色の唇を涼やかに結んでいる。


 アルビノの人というのはその白い肌故に日焼けに弱く、太陽光に当たらない生活をするのだ、という知識が頭の中をよぎる中、その少女は……おそらく俺を召喚した者は、この世界における俺が聞く第一声を発した。


 「ようこそ勇者さま。どうか我らをお救いください」


 そうして、俺は異世界に召喚されたのだ。




 ◆  ◆




 まず最初にやらされたのは、能力鑑定だった。


 この世界の魔法……ではない、『模倣神技』はネット小説のように自由・万能ではないらしく鑑定魔法の使い手は少ないらしい。


 その代わりに魔導師と呼ばれる、起こした現象から『模倣神技』を断定する役職が、鑑定士の代わりを務めているらしい。


 という訳で案内されたのは、茶色がかった石造りのコロシアムのような場所だ。


 広さはおよそ、直径100メートルの円ぐらいだろうか。勇者として召喚された者なのだから、安全マージンを大きめに取ろうとする考えは分からなくもない。


 「てぇ訳だ。ここでお前さんの『模倣神技』を使えば、あとはあっちが勝手に判断してくれる」

 「そう言われても、俺には『模倣神技』の使い方なんて分からないんだけど」


 俺と一緒にコロシアムの中まで入り、これから俺のすべきことを説明してくれた白銀の騎士鎧をきた男に、俺はそう突っ込み返す。

 

 彼はこの国の騎士団団長らしい。王国最強と謳われる彼ならば、俺の『模倣神技』に巻き込まれても大丈夫だという判断なのだろうか。


 もう『模倣神技』の大まかな性能を知っている俺としては、楽しみでたまらない。


 だがそれはそれとして、『模倣神技』の発動方法を知らなければ扱えないのだ!


 そんな俺の疑問に答えるように、騎士団団長は口を開く。


 「なんとなく、だ。」

 「え……?」

 「自分の中に魔力にイメージを伝える。これはなんとなくでしかできない」


 最初のインパクトに驚いたが、方法論自体はなんとか説明してくれた。なんとなく、って俺が今一番聞きたくない言葉だと、彼は分かっているのだろうか?


 (……魔力にイメージを伝える?)


 そもそも俺はまだ、魔力というものが何かも理解できてはいないが、彼の言葉を信じて忠実に実行しようと、体の中に集中する。


 そして、大きく燃え上がる炎をイメージした。


 瞬間。


 俺の体を、何かが漏れ出す感覚が支配する。しかし目を開けても何も見えない。ただ感覚として、液体でもない気体でもない何かが漏れてまとわりついていく感覚だけが残っている。


 (これが、魔力の感覚……?)


 そして、直後だった。


 「危なぇぞ!」


 そんな咆哮とともに、俺の体にすさまじい衝撃がかかり吹き飛ばされる。いや、騎士団団長の彼に突き飛ばされる。


 その理由は明白だった。

 

 さっきまで俺がいた場所が、一目でやばいと分かる炎に囲まれていたからだ。


 その終焔は魔力が漂っていた範囲へ執拗なまでに残り続け、地面すら微細な粒子へと分解……いや焼き滅ぼそうと、絶大な火力を以て蹂躙する。


 「……あれが、俺の魔法?」


 俺の呟きも、騎士団団長やコロシアムの観客席に当たる場所で待機している魔導師には届かなかったようだった。俺の『模倣神技』の威力は、それほどまでに常識外のものだったのだ。


 「こ、れは……。おそらく、『レーヴァテイン』ですな。神々の黄昏において焔王に振られ、結果として七つの世界すべてを滅ぼし尽くした、世界の滅亡と等しき威力持つ終焔の剣……」


 その言葉に、魔導師の後ろで待機していた大臣たちも納得したようだった。何を期待して召喚したのかまだ知らないが、十分な能力を持っていると証明できたらしい。


 そして、俺の能力はこれだけではない。

 

 俺がこの手で選んだ、魔法最強格とは対になる物理補正の能力があるのだから。


 俺は殺風景なコロシアムの中を見渡すと、手頃な大きさの岩を見つける。


 手心な大きさと言っても、もう一つの力補正を証明するのに手頃、というのが基準だ。それは背丈ほどもある巨岩と言っても遜色はないだろう。


 「……っ!!」


 それを、持ち上げる。


 「せやっ!」


 かけ声はあげたが、実質いらないほどだった。俺から見ればいとも簡単に、その岩は持ち上がる。手応えはまるでない。あたかも発泡スチロールでできた模造品を持ち上げているかのようだった。


 そんな俺を見て、外野の人間たちは盛り上がる。いや、絶句した後に熱狂したような反応を見せた。まるでここまでの力を持っていれば、何かに確実に相対できると確信するように。


 こうして俺は、とりあえず異世界にて迎え入れられたのだった。



 ◆  ◆



 一週間後。


 場所は王都近郊の草原。天気は晴天。


 騎士団から借り受けた白銀の鎧を着込んだ俺は、すっ、と目の前の魔物を見据える。


 魔物の群れは、ざっと100ぐらいというところだろうか。まだ魔物の種類のようなデータを教わっていないから脅威度はよく分からないが、100という数は決して単騎で挑むようなものではないだろう。


 遠目にも、兎や小人のような存在だけでなく熊や、低空飛行だが小型の竜のようなものまで確認できる。


 「ふう……」

 

 それらを見てあれる気持ちを抑え込んで、俺は今回の目的を思い出す。


 今回の目的は魔物の殲滅。そして俺の『模倣神技』操作熟練。


 練習ではなく、実戦での『模倣神技』発動は初めての俺は、深く息を吐く。


 「ヒロ大丈夫だ。お前さんならやれる」


 俺から少し離れた場所で、見守るように佇む騎士団団長はそう俺に囁いてくる。


 「ああ、分かってる」


 その信頼に応えるように短く言うと、俺は一言呟くために浅く息を吸い込んだ。


 「Levatein」


 『神名詠唱』。それは『模倣神技』をより強力に、より効率よく扱うための手法。


 俺の口から放たれた……真似事だがしかし原初の言葉で放たれる誰が神の御名は、染み込むように俺の魔力と馴染んでいく。


 瞬間、絶大なる焔が放たれる。


 効果範囲を広めに設定してしまった焔は、魔物だけでなく勢い余って草原の一部を焦土へと変えてしまった。



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