5.一人でいて
「あれ~~~?」
あの厳格なじっちゃんが、まず約束破ったが最後こっちが「やーめーろー」って叫びまくってもアイアンクローかましてくる体罰じじいが約束守らずに返ってこなかった。
ちょっとこれって異常なことな気がする。
だって、これまでの僕の人生で一度としてこんなことなかったもの。
確か、どこぞの崖っぷちに生えている薬草とってくるからちょっと待ってろと、山無効の崖に生えている薬草をなんの装備も持たずに軽装で半日かからずにそれこそ朝飯前な感じでとってきた化物じじいだよ。
それが、帰ってこなかった・・・・・
ということは・・・・
「にまぁ」
つい、言葉に出てしまったけども、これってチャンスでは?
あのじっちゃん、確か、約束したもんね。
ちゃんと誕生日までには帰ってくるって。
なのにすっぽかして帰ってこなかった。
こっちは帰ってこないもんだからやけっぱちで作った料理を全部食ってやったもん。
けっこうおいしくできてたのに・・・・
でも、それをだいなしにしちゃったんだから、帰ってきた時には盛大にからかったあと、いっぱい寝させてのんびりまったりできるようにしてもらおうかなぁ。
うん、よし、それいい考えかも。
だってじっちゃんが悪いんだもんねぇ。
さーて、片付けぱぱっと終わらせて、もっかいねよぉ。
帰ってきて怒鳴られても約束破ったじっちゃんが悪いんだから・・・・
よし、また、ベッド周りにいろいろおいてぐーたらしてよぉ・・・・
ほへぇ~・・・・・
と、このあたりまでは、僕もね、のんびりのほほんをいっぱいできると思っていたよ。
そうしてあったかい布団にくるまれつつもぐ~たらできると思ったよ。
けど・・・・
なんだろ、やたらもやもやする。
つい、昨日まで気にならなかったのに、しーんとした家の中ってほんとうに異様に広く感じて、心もとない感じがする。
静かなんだけど、なんかやけに静か過ぎて寝付けない。
体動かしてないからかなぁ?
っていっても、片付けとか全力でやってそこそこ疲れているはずなんだけども・・・・・
って、わかるよ。
原因はわかるよ。
あのじっちゃんがいないのがあれか、原因か?
というかなんていうか完全にぼっち状態でいるのは初だと思うんだ。
うー・・・・・なんか落ち着かないなぁ。
頭をかいてぼんやりして・・・・
んー、これでもし今日も帰ってこなかったら・・・・・
探しに行くか。
確か、街にいるんだよなぁ。
あー、っても、どうやっていくかなぁ。
そもそもこの家の周り以外は山の奥くらいしか行ったことなくて
って、どうやって街まで行こう?
いや、まぁ、村までの道は見えてるんだけどそっから先はどういこうかなぁってところだし、そもそも備わっているコミュ力はじっちゃんだけの引きこもりだし、あと話したことがあるのは年一に来る行商人のあんちゃんだけだし・・・・・
コンコン?
って、じっちゃんか?
「もう、じっちゃん、遅いぞ!」
と、一投足でドアに立つ。
別にうれしいわけでもなんでもなく、そう、じっちゃんにぷくーっと怒って、ご機嫌ななめアピールして明日以降の訓練はまけてもらってその分、寝る時間かさ増ししてもらうためであって・・・・・
「おう、やっぱし起きとったな、不良坊主」
って、思ってたらじっちゃんとは違う声?!
ちょっと思考フリーズしかかったけども・・・・
でも、やたら馴れ馴れしいこの声はちょいと聞き覚えがあるような・・・・
「って、誰?」
「おいおい、忘れたんかいな。あんちゃんやで、あ・ん・ちゃ・ん・☆」
行商人の兄ちゃん?
「え?あんちゃん?」
慌ててドアを開けるとそこには背の高い無精ひげの、ちょっと目の尖った目だけどやんちゃそうにギラギラ光ってる、もとは白いんだろうけど薄汚れて茶色っぽくなってるローブに大きく背負ったリュックサックがトレードマークの年一に来る行商人のあんちゃんがたってた。
「おっす、久しぶりやなぁ、一年弱ぶりってちゅーとこかいな」
そう気楽に声を出す。
うん、この軽さ、紛れもなく、あんちゃんだ!
「久しぶり!ささ、上がってよ。お茶くらい出すよ」
「お、なんやなんやえらくサービスええなぁ」
そりゃね、一人でいるよりか、こういうときはもうひとりくらいいてもいいってもんさ。
たまには、だけどね。