3.基礎知識と冒険者のこと
「じゃからな、ゴブリンなんぞは棍棒を使って攻撃してくるがまれに剣を奪って攻撃をしてきての」
訓練が終わって畑仕事後は夕御飯まで授業。
今回は畑仕事がない分訓練にあてた感じで、しばし気絶から回復するまでちょっとまってくれて、水ぶっかけられてから授業である。
あー、なんか気絶できたことがありがたいというか・・・・・
って、ありがたいって思うのはやや異常か?
冷静な頭がそう囁くけども、これが日常なだけにまぁ、こういうものだろうと納得させる感じであった。
で、話は戻して、この時間は、世界について、魔物について、剣技や魔法、一般社会についてなどいろんなことをじっちゃんが教えてくれる。
社会に出た時には必要な事柄だし、何よりもこんなところに若いものがいつまでもいるのはよくないとのじっちゃんのお言葉である。
まぁ、僕は別に構わないけどね。
畑もあるし、そばでは狩りもできる。
食うに困らないし、家もあるからねるところも困らない。
服とかに関してはまぁ、行商人さんを手配するとかすればなんとかなるだろう。
一応、年に一回だけ、ここに行商人がくることがあるからそれに任せたら、もうだらだらとのんびりすごせるというのに・・・・
ともあれ、今はじっちゃんの授業に身をいれないと今度は棒とかでなく、チョークが額に飛んでくる。
あれって、地味に痛いから。
避けるにしてもなんでか百発百中。
眉間に当たる。
どんな腕してんだよ。
ともあれ、世界についてだけども、
今住んでいるところは山一つ越えたら海があり、大陸の東側に位置している。
一応、今の人類がわかっている範囲はこの大陸だけである。
とはいえ、大陸一つといってもかなり広大で、まだまだ未開の地が多くあったりする。
その最たる場所は大きな山脈と河とで隔てられた大陸の四分の一くらいの広さを占める北西部の魔族領である。
人を滅ぼそうとする魔族と呼ばれるものが現実にこの世界にはいてそれを統べる魔王までいる。また、それ以上に人を無条件に襲う大小様々な魔物がうろうろしている。
そのため人類が過ごせる距離的には広くても範囲は狭く、都市国家で各国は形成されて同盟で繋がっている形である。
他にも古代の遺跡とか魔術師や魔族たちが作りあげた数多の迷宮とかあったり、調べたらいろんな宝物が出てきたりするところもある一方、命を落とすようなところがごろごろしている。
また、魔物の頻度なんかは西に行くに連れて強くなり、このあたりなんかはまだ比較的平和な方である。
というよりも一番平和ともいえるのだが、それでも魔物が出没するあたりなかなかに油断はできない。
基本的に道中進むにあたっては子どもの場合は大人といっしょというのがこの辺では原則である。
それでもたくさんの大人と隊を組んで進むといった具合なのである。
無事につくためにはそれだけのコストもいるといったところか。
ただ、そのためにも強くなければならない。
実はじっちゃんとの訓練はこのあたりにも付随してきたりする。
訓練していっぱしに強くなれば、このあたりの魔物くらいならどうにかなるといった具合である。
ただ、それはあくまでおこのあたりの弱い魔物に限定したもので魔族ともなると勝手が違う。
ヘタをすれば瞬殺されてしまうとか。
じっちゃんでもそうなのかなと前に聞いたことがあったがじっちゃんは其の辺ちょっと、どころかだいぶ違うそうな。
それは、じっちゃんが冒険者機構に加入している人間であり、職業と称号つきの人だから
冒険者機構というのはいわば、強者を生むための人類の力とでもいうのか、そういうもので、そこで発行される冒険者カードを身につければ破格の力を得られるといったものである。
その効果範囲はこの世界全土を覆えるほどだとか。
じっちゃんがいつも首からぷらぷらと下げている一枚のカードがそれである。
切れないひも状の細い鎖に通されたネックレスに通されている。
どういう仕組みなのかわからないけど、偉大な聖王が学者や魔術師を数多く集めてどうにかこぎつけたとかいうものらしいけど内容は秘術であるので口外されてはいない。
ちなみに、これはオンとオフがある。
普段からそんな力があるとそれこそ一般人と一緒にいるときに不都合があるだろう。
また、このオンとオフは刹那で切り替れるものなので不具合はないだろう。
まぁ、詳しいシステムはどうでもいいか。
使えたらそれでいんだから。
で、この冒険者カードをもっているものはいわば強者として、持っていないものは一般人としてカテゴライズされる。
まぁ、それだけならいんだけども、このカードを持っていたら兵役と任務依頼を職業と称号ともちろんレベルに応じて受けなくてはならないもので・・・・
うん、受けたかないな。
僕自身、ぐ~たらして過ごせればそれでいいから。
そういえば、じっちゃんの冒険者カードはどんなものか内容が知りたいものだったけども、あまり見せてはくれない。
職業とか称号とかは詳しいことについては
「おまえがなれば自然とわかるぞぃ」
と、さも、僕が冒険者になるようなことをいってるけども・・・・・
なるわきゃないだろ。
とりあえず、食うに困らないんだし、この授業でも知識欲はみたせてもそれ以上は進歩ないだろうねぇ。
ま、仮になったとしても、低レベルのままでのほほんとしてるでしょうね。
ちなみに低レベル者は基本的に一定のレベルになるまでは強制的な兵役と簡単な依頼以外は受けられないことになっている。
高レベルの依頼はそれこそ巨額のものであるが、そういうのはほんとうに命を対価にのせるもので到底一般人ができるレベルでないもので・・・・
うん、ほんとうに面倒なものである。
ステータス欄とかスキル欄とかもあるみたいなので、そういうのをみるのは面白そうだけどね。
ちなみに、ステータスはともかくスキルというのも強者のみが使うことができるものである。
その種類たるやどのくらいあるものなのか見当がつかないくらいである。
潜在的なものなので何が出てくるかは本人次第。
スキルに関してはじっちゃんがちょっと実演して見せてくれたけども・・・・
いやすごいわ。
スキルなしでも岩くらいは素手で粉砕木端できるくらいなのであれだけども、あった場合、岩に穴が開いた。
それも穴の周りには亀裂なしで。
どんだけの貫通力よ。
ちなみにスキル名は『槍術:一閃突き』。槍スキルの一つだとか。
あと、職業に関してはステータスやスキルへの補正といったものである。
職業も数多あってこれは自分で選択可能なものなのだがもちろん適性があって、なれるなれないはあるそうだ。
そうそう、魔法というのも普通に存在するけども、これも強者のみが使用できるもので一般人は冒険者が作った魔道具を使用して火をつけたり水を出したりしていたりするんだとか。
もちろん、技術による道具もあるのでそれらをうまく使って人の生活は保たれていたりするわけだ。
ただ、これらは授業で習ったことなだけに実際にみたことがあるわけではないので実際にどうなんだろうなぁ。
あー、ほんと、実際にどうなんだろうなぁ。楽な道具があるなら是非取り寄せたいものだなぁ。
「・・・・おい、きいとるのか?」
「うぁ、きいてまふよぉ」
・・・・・って、あー、ぼーっとしてた。まぁ、なんか疲れもあるか、ねむひようなぁ・・・・
「おまえはほんとうにねむそうだな」
あれ?これってもしかして寝させてくれるのかしら?
きらきらした眼差しでじっちゃん見ると・・・・
「おし、それなら、もう一汗かくか。よし、表行くぞ!」
びくっとして逃げようと椅子をあげてダッシュをかけたが、さっと扉の前に回り込まれた。
「これがスキルの『縮地』というものだ。さて、にげようとするくらい元気なら、夕ご飯は少し遅めにしてがっつりやるぞ」
「いーやぁぁぁーーーー!!!」
首根っこ掴まれたままずるずると外まで引っ張られて・・・・・
「おらおらおらおらぁぁぁ!!」
「ぎいいいぃぃぃやぁぁぁぁ!!!!」
『針通し』を『一閃突き』に変更。なんかそのほうがよさげだから・・・・