1.夢と現実
僕は夢を見てる。
幼い頃からよく見た夢。
僕はその世界は部屋の中しか知らなかった。
ただ、別に不自由は覚えなかった。そもそも周りは豪奢な家具やいろんな小物に囲まれているのであきはこなかった。
それに美味しいご飯もちゃんと出ていたような感じだから不満なんかなく穏やかに過ごしていた。
その世界には僕以外にも動くのはあって、一番見てたのはいくつなのか知らないけども女の子がいた。専ら、遊び相手はその子だけだった。
僕のお世話をしてくれてたり遊んでくれたりするけど、ほとんど寝てるし、ぐったりしていて偶に血を吐いたり咳をしたりすることがあって僕を心配させるけども、僕がそれを見て覗き込んだりすると
「だいじょうぶ」
って答えてにこっと笑ってくれた。
ベッドの周りにはオモチャやいろんな本が周りにあって、ベッドに備え付けられているテーブルの上には四角い箱が置いてあった。
四角い箱は『パソコン』っていうものでいろんなことができることを知っていた。
僕はいつも外の見える窓辺で女の子がそれに向かって遊んでいるのを見ていたし、たまに具合がいいときに僕を抱き上げて色鮮やかな画面と僕とを交互に見てお話してくれたから知っていた。
他にも女の子が僕にいろんなものを見せてくれたり、本を読んでくれたりして教えてくれた。
他に人といえばいろんな種類の白い服を着ている人たち。
その人たちがいろんな診察を女の子にしていた。
偶に綺麗な服着た女の人とピシッとした服を着た男の人が一緒に来ることがあった。
女の子はとくに綺麗な服をきた女の人が来るととても喜んでいたけど、男の人には笑顔はあったけどあまり嬉しい様子ではなかった。
そんな様子を高速で流れ、いつしか女の子が僕の世話をしなくなって、白い服を着た人しか見なくなって、そして、あるとき、女の子が目を覚まして
「ごめんね・・・・・いっぱい元気だったら・・・・」
僕をじっと見て、言ったあと、大きく血を吐いた。
白い服を着た人たちがあとからあとからきて、女の子をどこかへと連れて行って、そして、女の子はもう戻ってこなかった。
そのあとのことはあまり霞がかって言ってよくわからない。
少しご飯食べてころんとなったあと、疲れたのか夢の中なのに眠ったような気がした。
そして、場面が変わり気がついたら僕はどこともしれない白い空間にいて、一人の男の人に出会っていた。
そのときなにかを言ってくれて、そして・・・・
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「・・・ん」
僕は目覚めることとなる。
見慣れた木目の壁にベッド。
寝巻きを着てる。
「あー、またあの夢、か」
本当に昔からよく見てた夢。
少し不気味だけど、なんとなくいい感じのところもあったからまあいっかなって思ってる夢。
そもそもあの女の子、誰だろ?
ちょっと可愛らしかったなぁ。
でもなんで猫だったのかな。
とてもしっかりとした夢の記憶だし、あそこで女の子がお話してくれた内容はしっかり頭に入ってるんだもの。
きっとあれは前世というものなんだろうな。
ただ、男の人にあったあと何を言っているのかわからないことだけが気にかかる。いつもあそこで途切れる。
なんとも気になるところだ。
でも、以前よりはちょっと夢の内容が進んでるような気がする。
女の子と遊んで終わりってのが始まりだったような気がするからそれからしたら進んでるような気がする。
やっぱり気になるからもう一度、寝よ。
ねるたびに進むなら。
今度こそ最後まで見たいなぁ。
あ、あと、あの女の子とも遊びたいし・・・・。
だって、僕、友達、いないし・・・・
んぁ・・・寝よ。
ねてもっかい夢の中であそぼぉ・・・・
「おーい、まだ寝とんのかぁ?そろそろご飯じゃぞぉ」
・・・って、余韻にゆったり浸ってるのに、じっちゃんの声で眠気と女の子の像が一気に崩れた。
ぶぅ・・・・にしても、やけに明るいなぁ。
けっこう経ってるのかな?
いつもは畑仕事で忙しくて早めに起こされるけども、昨日までに一斉に収穫したから今日は畑仕事はしなくてもいいからってことで気を緩めすぎて遅寝しすぎたかな?
「あーい、くぉらぁ、寝とんなら、まぁた、顔面めり込ますぞぉ」
「うひっ!い、今いくよぉ」
うわ、ひょっとしなくても起こすのにまたあの極悪なやつくんのか?!
いやいやいや、急いで着替えて行かなくちゃ。
ん、朝ごはん食べに行こ。
ここは山奥の家。
周りには誰も住んでいないちょっと奥まったところ。
山を降りたら村があるけどなんでかここにずっとじっちゃんと僕との二人暮らししてる。
親はいない。
幼い頃に死んだってじっちゃんは言ってた。
冒険でっていってたけど深くは教えてくれない。
友達もいない。
僕は10歳になるし、下の村には僕以外にもたくさんの子供がいるんだろうけど、あまりこの家の周りよりも遠くへは出ることはない。
下の村とはいえ、それなりに距離も離れてるし、森の中には、人を襲う動物がたくさん出る上に、下級ながらも魔物がいてそれはそれは危険である。
実際に魔物を家の周りで、遠めながらも見かけたことがあって、そのときはほんとうに緊張してしまったものだ。それがため、子供一人では到底下の村へと行くのは無理だし、そもそも村への用事はほぼじっちゃんが一人で済ませてしまって、僕はお留守番することになっている。
村に行くことがないから友達も作りようがない。
どうしていけないのかわからないけど、でも、寂しいか寂しくないかと問われたら、実はあんまし寂しくない。
だって、いっつもうるさいじっちゃんがいるんだもん。
なんかそれで十分ではある。
あと、家の周りまでは魔物は一切入ってこない仕様である。
これはどうしてかわかるけども、それはおいおいに。
「なんじゃ?わしの顔になんかくっついとるのか?」
「ううん、なんにもついてないよ」
朝ごはん食べつつ、口周りの真っ白いヒゲをちょっとソースで汚しつつじっと見てる僕に声かけてくる。
別になんとなく見てただけですぅ。
じっちゃんは、顔とか手とかシワだらけだけど、昔は王都の騎士だったていうだけあって二の腕とか足とかまだまだすっごい太い。
首周りとかも猪みたいだし、ネックレスがはちきれそうなくらいかもしれない。まぁ、ネックレスは長めのものだけども。タンクトップの下には硬そうな筋肉で胸板はかなり厚い。
うん、棺桶に片足突っ込んでるって状態ではなく、死神すら敬遠しそうなじじいだよなぁ。
今は樵をして生計を立ててる毎日だけど、騎士の頃の貯金もあって、わりとゆたかに過ごしてる。
でも、そんなに豊かなら街の中に家立てたらいいのに・・・・
そしたら、遊ぶところとか友達とかいっぱいできただろうに。
でもまぁ、こうしてのほほんとしてられるのはいいかなぁ。
なんていうか、楽だし。
今日は畑仕事ないからもう一度、寝ようかなぁ。
「おいこら、ほら、ぼさっとしとらんとさっさと食え。今日は畑仕事がない代わりにみっちり剣の訓練じゃぞ」
「えー・・・・」
ただまぁ、楽でいいかもしれない環境だけど、このじっちゃんがいる限りそれは遠いかも。あと、その関係でなんていうかさみしいと思う間がないっていうのが当たりかも。
暇さえあればやれ「剣士になれ」だの「身を立てろ」だの「しゃきっとしろ」だの、挙げ句の果てに「せめて人の役に立てるようにしろ」とまでいうんだもん。僕が何をしたっていうの?
僕はただ、寝てたいし、のんびりと空でも見ながら過ごせればそれでいいのに。
向上心?なにそれ、美味しいの?だけどね。
でも今回はやりたいことがあるんだからね。
「僕だって、このあと忙しいんだよ」
「ほぅ、どう忙しいんじゃ?」
そういって、ニマッと笑う。うっ、でもそんあふうに笑っても僕にはちゃんと今回用意した崇高な使命があるんだい。
そう、今日こそはやるんだ。
「眠ってもっかい夢の続きをしっかり見るんだよ」
「・・・皿片付けて皿洗って、訓練するぞ!」
「い、イダイイダイ!!やめて、アイアンクローはやめて!!やる、やるから!」
頭もげるわれるもげるわれるもげるわれるぅぅぅ
「全く、この辺は獰猛な動物や弱いとはいえ魔物がいるんじゃ、気を抜かんとしゃんとせんか。でないと、命落とすぞ」
っていうか、じっちゃんの訓練のほうがよほど命落としそうなんだけども。
あと、
「でも、じっちゃん、僕、まだ10歳だよ。そんなに気張らなくっても」
「どやかましぃ!」
ゴンと、げんこつ一発!
「うがっ!」
「いっぱしの腕になってから文句言え。ほら、とっとと片付けして支度してこい、でないと・・・」
握りこぶしをじっちゃんの顔の前にあげて、なんか徐々に僕に近づいてきてるんですけども・・・・
「うー・・・・」
がちゃがちゃと大きな音言わせて片付けし始めた。
手馴れて感じでささっとお皿を重ねて洗面所へ行って組んだ井戸水から灰を交えて汚れをささっと洗う。
そして終わらせてから支度した。
なんかさらさらっとできてしまう慣れが悲しい・・・・。
お布団が恋しいよぉ・・・
うー、いつか、絶対、ぎゃふんといわしちゃる。
そして、ゆっくり昼まで眠れるようにしてやるんだから!!
だから、この片付けはそのための準備なんだからね。
早くに終わってしまうのは片付けが決して、嬉しくてやってなれてきていて気分一新しているわけではないんだからね。