表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

路地裏の楽器店

「お、ここいい感じの路地裏じゃないか。こういう所に穴場の飯屋があるんだな♪」

 俺、六車ムグルマ 末蔵スエゾーはバンドのツアー先で地元飯ってやつを食べるのが大好きだ。それも有名な店じゃなく、ちょっとくたびれた外観だけど店員のおっちゃん・おばちゃんが元気いっぱい迎え入れてくれる、そんな下町っぽい店が大好きなんだ。

30前のバンドマンってのはバンド活動以外にも楽しみが必要なんだよ…。



 その日もいい感じにくたびれた飯屋を探しに路地裏にグイグイと入っていったわけなんだが、見つけたのはくたびれにくたびれた楽器店だった。


「楽器店…か、古臭い店だな。こういう楽器店って定価のまんま売ってたりして高いんだよなぁ…。でも、生産中止されたパーツとかも定価のまんまで安かったりするから…。入ってみるか!」


カランコロン♪


「いらっしゃい」


 店に入ると聞こえてきたレトロなドアチャイムとしわがれた声。

声の主は…と、いたいた。黒いローブをまとった恐らく婆さん。恐らくってのは口元しか見えないのと、先ほど聞こえた声からの予想だ。

胡散臭い、とは思ったけれども顔には出さずに店内を物色する。


まずはドラムコーナーだ。俺の本職はドラムだしな。

しっかし狭い…な…、っておい!ビンテージの山じゃないか!60〜70年代のものは当たり前、40年代の単板まで置いてある!極め付けはSONORのベルブラスだ。リムまでベルブラスってことはコレって…。

あまりにもレア過ぎるものに俺はゾクっとした。

いや、店主がドラマーだからドラムコーナーだけ充実しているんだろう。


次は弦楽器のコーナーだな。

店主はドラマーって推理は外れていそうだ。

こっちもとんでもない代物の山。それも恐ろしく状態がいい。

ここまでくると逆に怪しいな。パチモン屋かここは?

とは思ったものの目利きには自信がある。ここにあるのは全部本物だ。


「婆さん、こんだけの商品があるのになんでこの店は路地裏にあんだよ?もっといい立地じゃないとこの楽器たちも使ってくれる奴に出会えないんじゃないか?」


「おや、アンタここにある子達が本物だってわかるのかい?他の客はニセモノだ贋作だって騒いで帰るんだけどね。」


「そりゃあこんだけの宝の山じゃな、胡散臭くもなるんだろうよ。けど俺は目利きに自信があるんだ。ここにあるものは全部1級品で間違いない!」


「へぇ、弱いとはいえ一応認識阻害をかけてあるっていうのに…。どうやらアタシ達の待ち人はアンタのようだねぇ…。」


「あん?何言ってんだよ?」


「もっと見たくはないかい?店頭に出せないようなものをさ。」


「は!?これよりすごいものがあるのかよ!?いや、見せてくれるってんなら是非見たい!…けど、俺金ないから買わないぞ?」


「いいよいいよ。来るのかい?来ないのかい?」


「行くよ!行くに決まってんだろ!で、行くってどこにだ?裏に在庫でも置いてんのか?」


「ふふふ、言ったね?向かう先がどこかは、そこで出会った者にでも聞けばいいさ。」


「ん?楽器の話だよな?」


「世界を鳴らしておいで。」


「なんのこ…と…」


視界が真っ暗になる。

ドサッ!

俺の背中に何かぶつかってきた。いや、俺が倒れたのか?

前後上下左右がわからない。

う…、眠い…。なんだこれ…?


「救っておくれ。」


最後に婆さんの声、ではなく知らない女の声を聞いて俺の意識は途絶える。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ