プロエピローグ
今思えばなんて中途半端なオタクだったことか。
幼稚園の頃は当然のようにバッタモチーフのライダーや赤と銀の巨人が大好きだった。
小学生の頃になると漫画オタクの叔母のコレクションを読み漁っていた。あまりにも幅広いジャンルの漫画が6畳の部屋に乱雑に積まれていてそれを片っ端から読んでいったものだ。
中学生になるとゲームに夢中だった。特にロボットを将棋の駒のように動かしていくシリーズが俺を熱くさせた。もちろん原作のアニメや漫画にも手を出した。ゲーム雑誌も毎週買っていたよ。
そして、高校生になった俺は出会ってしまったんだ。
バンド活動というものにーーーーーー。
「この景色が…、夢だった!この景色を見ることが!ここに立つことが…、夢だった!今俺は夢を見ているのか!?それとも現実か!?教えてくれ!!!」
ーーーーーーオオオオオオオオオォォォォォッッ!!!!!!!!!!!!!!
「現実だ!間違いなく現実なんだ!お前らは最高だ!最高のオーディエンスだ!だから俺が、六車 末蔵が最高の演奏してやる!」
ーーーーーースエゾー!スエゾー!スエゾー!
見渡す限りの人。純粋な人族だけでなく獣人、竜人、妖精、樹木人、そして魔族…。
ありとあらゆる種族がロックスター、六車 末蔵に興奮していた。
ステージ上のロックスター。奇跡の存在。
そのステージ袖には人族の王「聖王」マルコムと魔族の王「魔王」エプスタインの両名がこのイベントの成功に涙しながら固い握手を交わしていた。