07.《魂交換》B
二ヶ月経ってますが、再び書きました!
時間が経つと、いろいろ手直しをしたくなりますね……。
という訳で、既に書いてあった話も色々と推敲しました。
二人の間に、しばらくの沈黙が訪れる。
「…………そうか」
何かを決心した様子の彼は、深い悲しみを含んだ声で一言そう呟く。
「……ええ」
私はどう応えていいかわからず、彼と同じように一言だけ返事をする。
「……あいつは殺されたのか? それとも、何か事情が?」
彼の表情は今も暗いままだが、なるべく冷静であろうとしているのか、落ち着いた声だった。
「……彼女は何も悪くないわ。たまたま、運が悪かっただけよ」
「……たまたま? どういう事だ?」
状況が理解できないのだろう。彼からは説明しろという意思が伝わってくる。
「もちろん説明はする。でもその前にどこかに掛けましょう。長くなると思うし、立ち話は辛いわ」
彼はやや呆気にとられた様子を見せたが、近くにあった診察用の安っぽい椅子に腰掛ける。
私も同様に、保険医用に用意されていた安物の椅子に腰掛ける。
そして大きく深呼吸をしてから、私は説明を始める。
「まず、私はこの時代の人間じゃない。あなた達よりも、ずっと昔の時代の人間なの。そして、ある方法を使って、この現代まで生き続けている」
突拍子もない上に、あまりに簡潔すぎた説明に、ずっと曇ったままだった彼の表情が崩れる。
……さすがに説明が簡単すぎたか。今までにも自分の正体を明かした事は何度かあるが、この話を聞いた人間は、大体同じような反応をする。
「なんだそりゃ? 昔の時代って……、ある方法っていうのは何なんだ?」
「私は《魂交換》と呼んでいるわ」
「……《魂交換》?」
「ええ。この彼女の《影》の能力と同じように、私には生まれつきある特異能力があってね。一つは、自分の死期が分かるというもの、そしてもう一つは……他者と自分の精神を強制的に交換するという能力よ」
「……」
「死期が分かると言っても、正確に何年の何月何日に死ぬ、というのが分かるのではなくて、なんていうか、予兆や勘みたいなものかしらね。もっとわかりやすく言えば、嫌な予感、という感じかしら。その嫌な予感を感じると同時に、死ぬ直前の光景が浮かび上がってくるのよ。死ぬ時の決定的な瞬間まではわからないのだけれど、まあ、死ぬ前の状況がわかれば、死期もある程度の察しがつくわ」
「……それで?」
続きは?と彼が視線で訴えかけてくる。
「……それで、もう一つの能力、他者と自分の精神を交換する、というのは、これは言葉の通りね。自分と他人の精神を交換するのよ。人間相手にしか通じないけれど、大体どんな相手にも乗り移る事ができるわ」
「その交換対象に選ばれた相手の精神はどうなる?」
「……私の精神がその相手の身体に宿る代わりに、相手の精神はその時に私が使っていた身体に宿る事になるわ」
少しの沈黙の後、彼は口を開く。
「……なら、あいつは今」
そしてそれを遮る形で、私は事実を告げる。
「私には死期を悟る能力があるのよ。この子に《魂交換》をする前に使っていた身体は…………既に死んでいるわ」
例によって、次回更新は不定期で!
ていうか、一話の出来が一番悪い……。
いつか丸々書き直したいと思いつつ、めんどくさくてやってないという!