07.《魂交換》A
もう少し続く話ですが、まだ時間がかかりそうなのでパート分けしました。
書き終わった時に、まとめるかもしれません。
保健室に着いた私は、室内に誰もいない事を確認し、先の件で濡れてしまった制服を脱いで下着姿になる。
「……はあ」
まさか、こうも早くトラブルを起こしてしまうとは思っても見なかった。
私にはもう少し堪え性というものがあると信じていたのだが、さすがに今回は彼女達の過度な行いが仇となってしまったようだ。
誰の物かわからないが、ハンガーに掛かっていた制服を拝借する。今まで着ていた制服とは違う物のようだが、もしかしたら他校の制服なのかもしれない。
「……でも、水をかけるのはやりすぎよ」
もしも今回の事件が上履きを投げられた程度の事ならば、きっと私も《彼女》の反応を真似して、穏便に解決できただろう。
しかし、あそこまで派手ないじめに遭ってしまうと、さすがの私も理性を保つのが難しい。
当然の事ながら、《彼女》の持つ異能である《影》については、一般人に対して乱用していいようなものではなく、本来ならば厳重に秘匿すべき能力である。
今回の件が公になれば、私だけでなく、《彼女》の家族にも迷惑がかかってしまうだろう。
「……どうしよう」
次々と襲ってくる問題に頭を抱えていると、保健室のドアが開く。
「……よお。とりあえず、教室に居た連中は何とか言いくるめ……ん?」
頭をボリボリ掻きながら、やや疲れた様子で保健室に入ってきた彼は、私に視線を向けると、一瞬、目を丸くする。
「……お前、どうしたんだ、その制服」
きっと、違う学校の制服を着ていた事が目に止まったのだろう。
「あ、えっと……制服、濡れちゃったから。ここにあった制服を借りたの」
「……ふーん」
彼はどこか含みのある声と共に、何かを推し量るような視線を私に送る。
「……なあ。一つ聞いてもいいか」
そして、今度は先ほどよりも鋭い声で質問してきた。
「……うん? 何?」
私は、それにできるだけ真剣に応える。
「……あのさ、お前――誰?」
彼の言葉は予想外だった。
思わず、その場で固まってしまう。
この男、私の正体に気付いているのだろうか?
「……隠さなくていい。俺はアイツとガキの頃から一緒に居るんだ。今のお前が、俺の知っているアイツじゃないって事くらい、もう分かってる」
私の動揺を読み取ったのか、畳み掛けるように彼が言う。
「……わ、私は」
言い訳をするべきか、正体を明かすべきか、判断しかねる。
「……あいつを……いや、あいつはどうなったんだ?」
複雑な表情を浮かべる彼からは、あまり感情が読み取れない。
「……」
突然の質問に応えられず、依然として私は立ち尽くしたままだ。
よく見ると、彼の目が僅かに緩んでいる事に気付く。
「……教えてくれ。頼む」
悲しげな声を上げた彼に、私の胸が強く締め付けられる。
「か、彼女は」
……彼女、と言ってしまった。
もう、後戻りはできない。
「彼女は……もう、この世には居ないわ」
Bに続く予定です。
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