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喫茶村山

「よしみ!いこう!」

「えっどこに?」

みちるに唐突に声を掛けられ、よしみは少しだけ戸惑う。だが、いつものことなので本当に少しだけだ。

「村山くんの喫茶店!」

「ああ、隣のクラスの。翼と仲がいいって言ってた」

「うん!そう!今日登校日でしょ?だから、翼くんにも会えるかなって!」

「でもみちる……この前お金ないって言ってなかった?」

みちるはその言葉に待ってましたとばかりに食いついた。

「聞いて!実はね!一枚だけ買った宝くじが当たったの!一万円!!」

「あらよかったじゃない。おごってくれるの?」

「いいよ!」

「よし、じゃあ行きましょ!」


「あっ、いらっしゃい!翼、来たよ!」

みちるとよしみが店内に入ると、秋人がカウンターの裏にいるらしい翼に声を掛けていた。

「待ってたぞ!お前ら二人が来るのを!」

翼はばーんと立ち上がった。

「え?なんでなんで?」

みちるが聞こうとしたが、翼はサッとカウンターの裏に隠れてしまう。

「サービスだって。本人は自分で言って恥ずかしくなって隠れちゃったけど」

秋人は水とおしぼりと一緒に翼からのサービススイーツを持ってきた。ドーム型のチョコレートケーキっぽいものがテーブルの上に置かれる。

「なにかしら、これ」

「うわっ!ふわっふわだ!なにこれチョー美味しい!」

みちるは既に食べていた。

「……早いわね」

よしみも一口食べる。

「……プロかっ!?」

突っ込みを思わずいれてしまうほど美味しい。ふと、みちるの皿を見ると既に完食してあった。

「美味しかったー。次なに食べようかなー」

「私抹茶パフェ」

よしみはみちるに注文を任せ、自分はサービススイーツを引き続き食べる。

ささやかな疑問が生まれたが、それは暇になった頃に本人に直接聞けばいいやと思ったのだった。


「すいませーん」

「はーい!」

秋人が注文を取りにやって来る。

「チョコイチゴパフェと抹茶パフェ、ひとつずつお願いします」

「はい、かしこまりました」

「……ねえ、村山くん」

「ん、なあに?」

「翼くん、何で調理系学科のある高校入らなかったんだろう?」

「ああ、私もそれ思ってたのよ。なにか知ってる?」

よしみが思ったささやかな疑問はまさにそれだった。

「学校自体が遠かったって言うのもあると思うけど、大半は家庭の事情だと思うよ。ちょうど受験シーズンにおじさんとおばさんの転勤が決まったらしくて、大喧嘩もしたみたい」

「そっか……だから、翼くん一人暮らしなのか……」

「えっ?翼、一人暮らしじゃないよ?」

「えっ?」

みちるとよしみは顔を見合わせる。

「秋人ぉ、できたぞー」

「あ、はいはーい」

詳しく聞きたかったのだが、秋人は呼ばれていってしまった。

「えっ、えっ?翼、誰と住んでるの?ペット?いや、いなかったじゃない……」

「もしかして彼女いるのかな……?同棲……!?」

「だったら私たちのこと呼ばないでしょう?」

「あ。そっか……!」

二人でヒソヒソ話しているとお客さんがひとり入ってきた。小学校低学年くらいの女の子だ。

「あ、まこまこ!翼、まこまこ来たよ!」

「お兄ちゃんずるい!まことだってあきぽんち行きたいもん!」

お兄ちゃん……

「あっ」

二人は察した。同居人は彼女でもペットでもない。妹だった。

「どうしたまことー、留守番できなかったのか?」

「ちがうよ!たくみんのメガネまことがこわしちゃったから、新しいの買うついでに来たの」

「何で壊しちゃったんだ?踏んだのか?」

「たくみん来る前にとおるお兄さんが来てね」

『えっ!!??』

真の話の途中だが、この場にいた関係者3人は同時に驚く。

「え?翼?秋山さん?河野さん?どうしたの?」

秋人は訳もわからず3人をそれぞれ見る。

「……真、その、とおるお兄さんは今どこにいる」

「ん??いっしょに来たよ?」

その言葉を聞くやいなやみちるとよしみが店を飛び出した。

「あっ、秋人!ちょっと抜けるな!」

「う、うん、空いてきたから大丈夫……」

翼もエプロンを脱ぐと、店の外に出た。

「あきぽんはまことがたくみんのメガネこわしちゃった話きいてくれる?」

「……う、うん」

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