真と電話
8月20日…
透と別れてから一月近く経った。しかし、連絡は未だない。
みちるが父親に聞いてみても現地で別れてからの消息はわからないそうだ。おぼろげな不安をみんなが抱えた状態で、変わらない日常を過ごしていた。
「おにいちゃーん!がっこうなんでしょー!はやくゴハンたべなよ!!」
アメリカに行っていた妹は少し前に帰ってきていた。翼はぼんやりしながらパンをかじる。
「うーん……めんどい……」
「だめー!がっこう休んじゃダメなのー!今日はまことがぜんぶするのー!」
小2の妹の真は帰ってきてからなぜかやたらと家事をしたがるようになった。……まあ、刃物とか火とかは使えないようにしてあるので一人で留守番させとくのは大丈夫なのだが。
「はいはい、わかったわかった。じゃ、行ってくるから、留守番よろしくな」
「うん!行ってらっしゃい!」
学校までの道のりを歩いていると自転車に乗った匠が横についた。
「翼おはよ」
「ああ、匠おはよ」
匠は徒歩の翼にスピードを合わせる。
「なあ、お前んところに透さんから連絡来たか?」
「いいや、来てない。……もうすぐ一ヶ月たつのにな」
「やっぱりそうか……お前のとこなら来てそうな気がしたんだけどな……」
翼と匠は一瞬顔を見合わせたあと沈黙した。すぐそこに学校が見えてきていた。
翼が出掛けて1時間ほど経った頃、自宅の電話が鳴った。真はそれに出る。
「もしもし!」
『……あっ、すいません間違えました』
男の人の声だ。彼は謝って電話を切った。
「……切れちゃった」
真はしょんぼりしながら電話を置いた。しかし、数分も経たないうちに再度電話が鳴る。
「もしもし!」
『……あれ……?あの、山下さんのお宅ですか?』
さっきと同じ男の人だ。
「うん!山下です!」
『西屋といいますが、翼くんはご在宅ですか?』
「……ござ……?」
『あっ、えーと、翼くんはおうちにいますか?』
彼は翼に用事があるようだ。だが、翼はいない。
「お兄ちゃんはいないよ。とうこう日でがっこうに行ったよ」
『うーん……じゃあ、何時くらいに帰ってくるかわかりますか?』
「わかんない。お兄ちゃんいつもまことおいてあそびにいっちゃうから」
『うーん……そうですか。また改めてお電話しますね』
彼はそういって、電話は切れた。
「そうだ!メモメモ!」
真は電話が掛かってきたことを書き残しておくつもりのようだ。
「えーと、だれだっけ?」
だが真は相手の名前を覚えていなかった。
「ま、いっか!おとこの人からでんわだよ!っと」
「つーばさ♪」
「……んあ」
放課後、クラスメイトで幼馴染みの村山秋人に声をかけられた。
「寝てたでしょ。翼終業式出なかったんだから、登校日くらい真面目に話聞こうよ」
秋人に入院していたことは話していない。超心配性で動揺する姿が目に浮かぶからだ。
「だって退屈じゃんかー。で?用事があったから声掛けたんだろ?」
「うん、新作パフェ試食してもらおうと思って」
その言葉を聞いた瞬間、翼の瞳は輝く。
「マジで!行く!……あっ、でも真が」
そこで、匠はある提案をした。
「俺がまこまこ見といてやろうか。ついでに留守番も」
「えっ!いいのか!?」
「その代わりにオムライス作ってくれよ。それがバイト代な」
「いいよいいよ!そのくらいならお安いご用だ!!」
「よっしゃ交渉成立な!じゃ、思う存分新作試食してこいよ」
「匠ありがとう!真のことよろしくな!」
と、いうことで、翼は秋人と一緒に下校していった。匠は翼から一応鍵を預かり山下家に向かうのだった。
再度電話が鳴る。ちなみに翼は秋人の家に向かっている頃だ。
「もしもし!」
『西屋ですけど、翼くんは帰ってきましたか?』
電話の相手はやはりあの男の人だ。
「ううん、まだだよ。お兄ちゃんきっとあきぽんとこ行ったんだよ。ずるいなー」
『うーん、そっか。じゃあ、お兄ちゃんが帰ってきたら透が向かってるって伝えてもらえるかな?』
「うん!わかった!」
『お願いね』
透と名乗った男の人はそう言って電話を切った。真はメモを書き足した。
「とおるが……むかってる……と、これでいいかな!」




