きっかけ(3)入門
(3)入門
あれから数日後。植木が通いつめているバー。
いつものカウンターに座りマスターの斉藤に席に座るなり一言。
「斉藤さん。いろいろ考えた結果なんですけどやっぱりボクシングはじめようと思うんです。」
「そうか!」うれしそうに話す植木。
「んでーいつから?」
「はい、言われた準備物は揃えたので明日にでも。」
「そうか、まあ後で連絡くれよ。」
「はい!」いつもとは違う植木が返事をした。
~翌日~
「お疲れ様です!」元気に挨拶する植木。
ジムにいる全員。「おつかれーっす」
「おおっ来た来た!」うれしそうに迎える斉藤。
「おいっまずこのジムの会長に挨拶しな。」
「はいっはっはっはじめまして植木と言います。よろしくお願いします。」
身長は165cmくらいでずんぐりむっくり体系で全身下ジャージの上Tシャツの黒ずくめの男が振り返る。「ん!?おお新会員か??」
「花田です。よろしくお願いします。」
「斉藤さん、とりあえずええっと植木君だっけ?彼に構えから教えてあげて。」
「はい。」
「優君、こっちこっち。」妙にやさしく誘う斉藤。
鏡の前。「えっとねまず構えなんだけど、聞き手右だったよな?」
「いえっ左です。」「えっ!!そうだったの??」
「前にお店で話したと思ったんですけど・・・・・・」
「そうかそうか。」
「んじゃーまず・・・・・・」
構えを教える斉藤。必死になりながら鏡の前で練習する植木。
するとここで斉藤。「まぁいつも本当は最初は準備体操をした後に縄跳びをやるんだけどね。」
「えっ!!縄跳びですか??」
「そうだ。縄跳びやろう。」妙になよなよしてきた斉藤に手招きされ準備体操をした後に縄跳びを挑戦する植木。
下に黒いゴムのような下敷きを敷いて上に立ち自分のサイズにあった縄跳びを持ち「んじゃーまずは次の3分で何回飛べるかやってみな?」急に厳しい面持ちでいう斉藤。
「はいっ。」タイマーの音が鳴る「ピッピッピッ」縄跳びを始める植木。「ビシッビシッ」飛び続けるが引っかかり何度もくじけずに飛び続ける植木。
3分経過。「ピッピッピッ」汗だくの植木。「ハッハッハッ疲れたろー?」うれしそうにいう斉藤。
「やーもう勘弁してくださいよー。」いやそうにいう植木。
「まだまだ!次の3分は高速で縄跳びをまわせよ!」急に怒りながら話す斉藤。
「うへーっ。」もう体力の限界の植木。
さらに3分経過後。。。
「もうっ疲れたーー。」
「なんんだよもうそんなんで疲れたのかよ。」
「わかったよ。んじゃーサンドバック打ってみるかい?」
「はい。」
休まされることもなくサンドバックに移る。
サンドバック前。
「よーし!んじゃーまずさっきの基本の構えでやってみな。」
「はいっ」ちょっとぎこちない構えの植木。
「まぁ軽くでいいから打ってみな。」
へろへろパンチでビクともしないサンドバック。
「まだっまだっ腰が入ってない!!」調教するかのように教え込む斉藤。
「腕を伸ばせよ腕を!パンチをもっと早く引っ込ませろよ!」熱の入る斉藤。
斉藤に応えようとするが体力が続かず意識がもうろうとしてきた植木。
「うはっああーああーもうっだめ。。。」倒れこむ植木。
「かぁーだらしねぇな。。。」落ち込む斉藤。そのまま植木を水道に引きずらせながら連れて行く。
バーッと水道の蛇口から首を持ち植木の頭にかぶらせる斉藤。「ブハッはぁっはぁっ」意識を取り戻した植木。
「おっ気がついたか?」軽い感じで気分をうかがう植木。
「おっ気がついたか?じゃないっすよ!」頭から水をピタピタと落としながら怒る植木。
「おおっ元気になったようだな!んじゃーもう一発やってきな」笑いながら次の練習に促す斉藤。
「もういいです。もう帰ります。お先に失礼します。」プンプン怒りながら帰る植木。
「おいっ待てよ!髪拭けよ髪!風邪引くぞ!」話を聞かずにバタンッとドアを閉める植木。
心配する花田「どうしたんだ?」斉藤。「いやー実は・・・・・・」
次の日植木の家。
植木の部屋。「ううっ頭いたい。熱が出たな。。。」
8度5分ある高熱だった。「あの時しっかり髪の毛拭けばよかった。」
「しかしあのジムもう二度と行かない。」
あの時の意気込みはどうしたのだろうか?
翌日、熱も下がり会社帰りあのバーに植木は立ち寄った。
「こないだはどうもです。」「いいんだよ。気にすんな。」
「あのう・・・マスターお話があるんですが。。。」