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中間考査

 ある高校。

 その校舎内のひと気の無い階段に、二人の男子生徒の姿があった。二人並んで階段にこしかけている。

 スマートフォンを触っているのがイツキ。

 何やらA4サイズの紙をジッと見つめているのがヒロトだ。

「ねえ、イツキのクラスもテスト返ってきた?」

 ヒロトは顔を上げ、イツキに目を向けた。

「ん、まあ、返ってきたぞ」

 イツキはスマートフォンを見つめたまま、素っ気なく返事をした。

 その途端、ヒロトは口元に笑みを浮かべた。

「あ、その反応。さてはイツキ、あんまりよくなかったでしょ」

「別に、いつも通りだよ。よくも悪くもない」

 ヒロトは座ったまま、イツキとの距離を詰める。

「人に聞く前に、自分の教えろよ。お前はどうなんだよ」

 イツキはそう言いながら、ヒロトの手元の紙を覗き込もうとする。その紙には『中間考査 結果一覧』との題名が書いてある。しかし、ヒロトは素早く紙を隠し、各科目の点数は見えなかった。

「ふふん。当ててみてよ」

 ヒロトはそう言って、自信あり気な表情をイツキにむける。

「どの科目を?」

 イツキが尋ねると、ヒロトは「全部」と即答した。

「今回なんと、全科目よかったんだ。だから全科目当ててみてよ」

 イツキは大きなため息をつくと、スマートフォンを操作し始める。

「なんの教科から当ててほしいんだ?」

「現国!」

「86点」

 スマートホンの画面を見ながら即答したヒロトに、イツキは驚きの表情を浮かべる。

「……当たってる」

「お前は、わかりやすいからな。ほら、次は何の科目だ」

「じゃあ、古文」

「87点」

「正解」

「数ⅡB」

「79点」

「正解」

「英語」

「93点」


 それからイツキは全ての科目の点数をぴたりと言い当てた。

「イツキ……すごい」

 ヒロトは驚きの表情を浮かべている。

「お前、わかりやすいからな。点数くらいわかる」

 イツキはそう言って、スマートホンをポケットに片付けた。

「なんだか、面白くない。もっと自慢しようと思ったのに」

 ヒロトはつまらなさそうに頬を膨らます。

「まあ、お前にしてはいい点数じゃないか。頑張ったな」

「そういうイツキはどうなのさ」

「まあ、そこそこだ。自慢するほどの点数じゃない」

 そのとき、イツキのポケットから一枚の紙が落ちた。

「なにこれ」

 ヒロトはそれを拾い上げる。

「あ、ちょ……」

 A4を四つ折りにした紙。ヒロトがそれを開くと、それはイツキのテストの結果一覧だった。


 現代国語……93点

 古文……97点

 数学ⅡB……92点


 イツキの点数は、全ての科目でヒロトを超えていた。

「イ……イツキ……」

 ヒロトは紙を見ながら肩を震わせる。

「バカ、見るな!」

 イツキは紙をひったくるように取り返す。

「自慢か、自慢なのか! そんなの見せびらかして!」

 ヒロトは立ち上がって声を荒らげる。

「お前が勝手に見たんだろ。大体、俺はいつもこのくらいだろ」

 ヒロトはイツキに背を向け、階段を下りる。が、すぐに足を止めた。

「もう、イツキとは一緒にいられない。さようならだよ」

 しかしイツキは冷静に、落ち着いた様子で返す。

「そっか。じゃ、さようなら」

 ヒロトはさらに一段、階段を下りる。

「本当に本当にさよならだよ」

 ヒロトは真剣な表情で言うが、

「そっか」

 やはりヒロトは冷静に返す。

「ウソ。本当はトイレ行ってくるだけ」

「そんなことだろうと思った。さっさと行ってこい、バカ!」

 イツキが大きめの声を出すと、ヒロトは「漏れる~」と言いながら小走りで去っていった。

「まったく」

 イツキはため息をつくと、スマートホンを取り出す。画面を見ると、メッセージアプリの通知が来ていた。送り主はヒロトの妹である。

 アプリを開いて、内容を確認する。

『どうだった?』

 イツキは返信を打ち込む。

『俺の負けだ。全部妹ちゃんの言う通りだったよ。もっと点数低いと思ったのに』

 送信ボタンを押すと、すぐに妹からのメッセージが届く。

『でしょ、でしょ~。お兄ちゃん頑張ってたから、今回はこのくらい取ると思ったんだ』

 イツキは画面をスクロールして、数分前の妹とのやり取りを見る。

『お兄ちゃんのテスト、どんな感じだった?』

 妹からのそんなメッセージでやり取りがはじまっていた。

『いいみたいだぞ。何点か当ててみろって言ってきた』

 イツキはそんな返信をする。それに対する妹のメッセージは、

『う~ん、多分ね、現国が86点で、古文は87点かな? それから――』

 そこから、全ての科目の点数予想が書き込まれていた。

 実はイツキ、先ほどヒロトの点数を当てたのは、これを読み上げていたのである。

「予想の点数高すぎだろ、って思ったのに、全部当たってるんだもんな」

 イツキは独り言をつぶやく。

「テストの答えはわかっても、ヒロトのことはまだまだわかってなんだな、俺って」

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