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1 非通知の電話と都市伝説の少女

 佐藤正は、今日もカップラーメンを啜りながら、感情なくテレビを見ていた。

 時刻は午前2時、深夜アニメも終わり、通販番組でダイエット商品を紹介している。正は、自分のお腹に手を当て、さらに自己嫌悪に蝕まれていく。

 大学卒業と同時に就職した会社が運が悪くブラック企業であり、体に鞭を打ち10年間耐え抜いたが、今年春の桜が舞い散るある日ぷつんと自分の中で糸が切れてしまった。仕事を辞めてから半年が経ったが、働く気力が湧かず、ただひたすら自堕落に生きる肉塊となっている。

 そんな自分自身に嫌気がさしていると、テーブルの上のスマホが鳴った。画面には『非通知』の表示。こんな時間にいったいなんだと思いつつ、正は着信ボタンを押した。


「はい」


『もしもし、あたしメリーさん。今近くの最寄駅にいるの』


 一瞬で思考が止まってしまった。


「えっ都市伝説の。悪戯?」


『ふふふ、もうすぐ会えるね』ブツッ。


 通話が切れてしまった。怖いというより、ネタができた気分だった。これが深夜のハイテンションなのか、SNSにでも書こうかと思いながらカップ麺を捨てた時、再度スマホから着信音が流れ、画面には『非通知』の表示。


「はい」


『もしもし、あたしメリーさん。今近くのスーパーマイセンにいるの』


「あっ飲み物ないからコーラ買ってきて」


『えっ』


「えっ」


 マイセンとは近所にある24時間営業のスーパーだが、メリーさんがマイセンにいると聞き、ちょうど飲み物を切らしてることを思い出したため、コーラを頼んでしまった。

 着信が切れて、もう一度スマホが鳴る。


『あたしメリーさん。ごめんなさい道に迷ったんですけど、あなたの家1丁目だっけ?』


「2丁目」


『あたしメリーさん。今あなたのマンションの前にいるけど、オートロックで入れないの』


「505押して。そしたら開けるから」


 徐々にメリーさんは我が家に近づいてきたが、この時恐怖心もなく、だらけた生活に強い刺激を与えてくれたことに感謝すらしていた。


 そして、最後の着信。


『もしもし、あたしメリーさん。今あなたの後ろにいるの』


 振り返るとそこには、赤いパーカーを身にまとった銀髪の少女が立っていた。




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