美少女ハーレムは終わらない!?最終話
朝の光がふわっと差し込む通学路。
秋の風が優しく吹いて、まるで背中を押してくれてるみたいだった。
角を曲がった瞬間、俺の時間が止まった。
「……ふ、風花……!」
「しゅーくん……おはようのちゅー、してくれる?」
な、ななななに言ってんのこの子は。
にこーっと無防備に笑うその顔は、反則だ。
ふわふわの髪が朝日に透けて、天使かってくらい眩しい。
「いきなり何言ってんだよ!」
「だって……しゅーくんが夢の中で、してくれたんだもん。だから、現実でもしてくれないと、私……さみしくて死んじゃう」
「……それは、困るな……」
「でしょ?だからほら……今ならほっぺ、あったかいよ?」
そう言って、風花が俺の前にちょこんと立つ。
首を傾けて、つん、と差し出した頬。
「ちょ、ちょっとだけだぞ……!」
覚悟を決めて、俺はそっと唇を近づけて——
「ちゅっ……」
「ふふ……しゅーくん、今日も大好き」
な、なんなんだ……!
朝からこんなの……心臓が持たない……!
「ほら、手もつなご?今日の空、教えてくれたの。“手つなぎ指数100%”だって」
「それ絶対天気予報にないやつだろ……」
「あのね、しゅーくんのぬくもりが今日のラッキーアイテムだって」
ふわっと俺の手を握る風花の手は、柔らかくて、あったかい。
「……恋人つなぎ、しよ?」
「……ん。うん」
俺の指に、自分の指を絡ませるようにして、ゆっくりと歩き出す。
もう、ドキドキが止まらない。
どっちの手が震えてるのかもわからないくらいで。
「風花……今日も、かわいいね」
「うん、知ってる」
即答かよ!
「あとね、今日は……しゅーくんと“世界一イチャイチャしていい日”だから」
「何その記念日!?」
「私がさっき決めたの」
「決めたのって……勝手すぎるだろ」
ほんとに溶けるわ、俺の理性。
この子と一緒にいると、毎日がとろける甘さで満たされていく。
通学路に並ぶ家々の前を、二人で歩く。
ふと、風花が俺の顔を覗き込んできた。
「ねぇしゅーくん……私たち、ホントに付き合ってるんだよね?」
「……うん、そうだな。なんか、まだ夢みたいだけど」
「夢じゃないよ……ね、しゅーくんのほっぺ、つねっていい?」
「いやいや、そういうのは普通、自分にやるもんだろ!?」
「えへへ。でもしゅーくんのほっぺ、柔らかそうで……誘惑に勝てない……」
「……ったく、朝から何言ってんだよ……」
恥ずかしいのに、顔がにやけるのは止められなかった。
これが、好きな子と歩くってことなんだな。
あたりまえのようで、でも奇跡みたいな時間。
彼女と歩くこの道が、いつまでも続けばいいのに。
そんな風に、本気で思っていた。
風花が笑って、俺もつられて笑って。
この時間が、ずっと続きますように——って。
でも、教室に入った瞬間——
「修也~!!」
元気爆発ツインテールの日菜が猛突進!
「わっ、日菜!?いきなり抱きつくなって!」
「だって修也がかっこよすぎて、朝のテンションMAXになっちゃったんだもーん!」
「俺、風花と付き合ってるんだけど……!」
「知ってるよー?でも修也は修也、私の大事なお友達だもんっ!」
「スキンシップ激しすぎだろ……!」
そこへさらに——
「おはよう、修也くん。朝から騒がしいわね」
美麗登場。黒髪ロングが今日も完璧。
でもその手には、手作りらしき小さな包み。
「これ。あなたの好きなクッキー、焼いてきたの。友達への差し入れよ?」
「え、あ、ありがと……」
「誤解しないで。風花ちゃんのことも、ちゃんと応援してるわ。でも、友達としての好きと恋愛の好きは、違うから。」
「そ、そうだけど……!」
「私は修也くんの特別な友達でいたいな」
「私もーっ!世界で一番仲良しな友達希望~!」
日菜が手を上げてにっこり笑って言った。
「……俺、風花と付き合ってるんだぞ!?」
「知ってるよ?」
「知ってるよー?」
2人とも同時にさらっと言った。
「私たち3人、修也くんを巡る恋の取り合いはこれにて終了。でも、これからもずっと、友達よ」
「そうそう!みんな仲良しが一番でしょ♪」
……こっちのHP、残り2なんだけど。
でも、なんか。
「……ありがとう。俺、ほんと、みんながいてよかった。」
「なにそれ、イケメン発言~!」
「……調子に乗ると、風花ちゃんに怒られるわよ?」
「……もう怒ってるよ。ぷんぷん。」
——って、言いながらも笑ってる風花の手を、そっと握る。
彼女はちゃんと、ぎゅっと握り返してくれた。
昼休み。今日はなんか……教室が静かだ。
いや、違う。俺の席の“まわりだけ”が、やけに静か。
美麗、日菜、風花――3人が俺の机の前で、無言で弁当を広げてる。無言で、にこにこ笑ってる。
「……え?なに、この空気。なに?こわっ!」
3人が一斉にお弁当箱を開けた瞬間、俺は震えた。
「……これ……まさか……」
そこには、3つの“謎のおにぎり”があった。
嫌な予感がした。というか確信めいていた。
そう。以前、風花が持ってきたブルーハワイ味のおにぎり――あの記憶が脳裏をよぎる。
「風花ちゃんのおにぎりすごかったから、日菜バージョンを作ったよ!」
「あのおにぎりの進化版を、私たちが挑戦するの」
「ふふ、先に言っておくけど……覚悟してね?」
――俺に逃げ道はなかった。
まずは美麗のおにぎり。
彼女が差し出したのは、三角形ではなく完璧な六面体の、超精密に握られたおにぎり。中身はなんと――
「納豆、オクラ、もずく、ゴーヤ、青汁パウダー。そして……昆布」
「何その健康の鬼盛り合わせ!?ネバネバからの苦味で俺の舌が泣く!!」
「修也くんの健康は私がしっかり守るから、安心してね」
「色々混ぜすぎぃ!!」
次は日菜のおにぎり。
まず見た目がおかしい。七色に輝く謎の光沢を放ち、上にはマシュマロがのっている。
「これ、日菜スペシャルおにぎり〜!キラキラパウダーたっぷりで可愛いでしょ?」
「マシュマロは……どのタイミングで食べれば……?」
「修也の食べたい時でいいよぉ?最初に食べる派?最後に食べる派?」
「いや、ショートケーキのいちご扱い!お米とマシュマロの組み合わせがカオス!!」
そして風花のおにぎりは――
『……しゅーくん……食べて……』
おにぎりが喋った。
「ぎゃああああああ!?ホラー演出やめてえええ!!!」
「ふふ……気持ちが伝わるようにって、録音したの。昨日の夜中に……」
「寝ろ!夜は寝ろ!!てかおにぎりに声帯いらないからぁ!!!」
3人のとんでもおにぎりを前に、俺のHPはすでにゼロ。
けれど、3人の笑顔を見ていたら――なんだかんだで、全部食べてしまう俺。
3人「どう?どれが一番よかった?」
「ぜ、全部違う意味でやばかったよ……!」
でも、こうやって笑い合いながら食べる昼ごはん――悪くない。むしろ最高かも。
風花が、俺の袖を引っ張る。
「……次はね、もっとすごいの作ってくるから、楽しみにしてて?」
「……こわいけど、ちょっと気になるのが悔しい」
――ああ、なんか……胃は死にかけてるけど、心は、めちゃくちゃ満たされてるかも。
「……お前ら……ほんと、愛が重すぎるんだよ……(でも、嫌いじゃない)」
笑って、騒いで、心臓バクバクして、でもめちゃくちゃ楽しい。
ドキドキして、キュンとして、ちょっと泣きそうになって、でも——やっぱり笑っちゃう。
こうして、俺のラブコメ全開な毎日は、
終わらない友情と、始まった恋とともに続いていくのだった——
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
男の子を主人公にするのは、私にとっては挑戦でした。でも美少女ハーレムは書いていて楽しかったです。
3人の女の子、全員大好きなので、みんなが前向きな気持ちで終われてよかったです。
次回作はまだ構想を練っているところですが、連載を開始したら、またお付き合いくださるとうれしいです♪