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待ち望んでいたのに

作者: 不眠

ひとつ 夜を跨ぐたび


ひとつ 自信がふり落ちる


あんなに待ち望んでいたのに



不安の影が 西陽に混ざり


ゆく先に 長く大きく延びている


あんなに待ち望んでいたのに



「逃げようか?」


と 心の声


「後ろを向いて 光の方へ


今ならまだ 気付かれないよ


今ならまだ 逃げられるよ」




あんなに待ち望んでいたのに


あんなに待ち望んでいたのに



-----------------------------




『すず』



すずの音がしたよ


 と、箸置きが言うと


いいえ あれは虫の音よ


 と、石鹸がこたえました。

 箸置きはよく茶碗やグラスやキーボードたちと一緒にYouTubeを観ていましたので、きっと自分は間違えていない、間違えているのは石鹸のほうだと思いました。


ちがうよ すずの音だよ

きみはその場をちっとも動かないから 本当のことなんてなんにも分からないんだ


 石鹸は悲しくなり、さめざめと泣きました。

 ぷかぷか泡を立てて泣く石鹸の姿を見た箸置きも悲しくなり、さめざめと泣きました。


 おしまい。




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