表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/82

香菜さんが体中痣だらけでした

 猫さんがやってきて、2週間もしない頃、麻さんの家に、香菜さんが遊びに来た。そして居間に上がるなり言う。

 「麻さん、なんで猫さんがいるのだい?」

 麻さんがしらばっくれる。

 「さて、私にも謎なんだよ」

 香菜さんが乾いた笑い声を立てた。

 「あははは」

 同じ様に麻さんも笑った。

 「あははは」

 

 香菜さんは、いきなり笑うのをやめて、本気な顔をして言う。

 「もう、そんな訳無いでしょう?押し付けられたんじゃないの?」

 「う――ん」

 「もう、麻さんは、すぐ押し付けられるから」

 麻さんは、無理やりアイスで話題を変えた。

 「アイス要る?」

 そしてすぐ釣られる香菜さんが言う。

 「いただこう」

 

 麻さんが、アイスを渡しながら言う。

 「ところで、急に何よ。香菜さんは、どうした?急に来て」

 アイスを受け取りながら、香菜さんが答えた。

 「あたしもさー。この家に置いてくんないかな」

 「え?」

 「猫さんみたいにさ」

 

 「何?同棲中の彼氏と喧嘩した?」

 「した。彼氏と大喧嘩よ。見て、これ見て」

 香菜さんに、腕や太ともを見せられて、麻さんは声を上げた。

 「あ――――――」

 腕や太腿に痣がいっぱいだった。背中にも痣があった。香菜さんが痣を見ながら言う。

 「でしょう?酷いよね?暴力はないよね?」

 麻さんも同意見だ。

 「暴力はないわ。でもなして、暴力よ」

 「彼に、お金貸してって言われて、何度も貸したのよ。そしたらその金を女に貢いでいたのよ。問い詰めたら逆ギレで、暴力を振われてさぁ」

 麻さんは深く同情した。

 「あちゃー。絵に描いたような不幸」

 「そうなの。そうなの。不幸よ。不幸。それで新居が見つかるまで置いてくんない?ただとは言わない。ちゃんとお金入れる。一月分、電気光熱費家賃・ワイファイ代含んで5万でどうよ」

 「良いけど。でもさ。この家そうとう狭いんだよ。二人暮らしして、喧嘩にならないかな?」

 「少しの間だから。お願い!次の家探すから。ほら私の仕事がアレだから。すぐ次の物件が見つからないの。ねっ。おねがい」

 

 麻さんもそうだと思って、承諾した。

 「仕方ないか」

 香菜さんも言う。

 「うん、うん。仕方ない」

 麻さんが笑って、もう一度言う。

 「仕方ない。でも香菜さんのマンションは、香菜さんの買ったマンションでしょう?自分のマンションから家出して、彼氏が住んでいるっておかしくない?」

 香菜さんが玄関の扉を開けて、外にあった荷物を、玄関に入れながら言う。

「おかしいとは思うよ。でももうすでに全部おかしいんだからさぁ。後で彼氏を追い出すしかないね」

 

 布団袋を運ぶ香菜さんを見て、麻さんが驚いて言う。

 「布団まで、既に持って来たの?」

 「そっ、マンションから持ってきた」

 麻さんが言う。

 「どうやって?香菜さんは、車持ってないよね」

 香菜さんが答えた。

 「タクシーだよ。タクシーで来た。私は、商売柄、いつも酒が抜けないから、タクシーか店の送迎車だからさ」

 布団以外にも、トランクが2つもあった。香菜さんは、それを見せて言う。

 「持てるだけ持ってきたん。それと換金出来る物とかさ。実印とかさ。あいつマジヤバいわ」

 

 呆れ顔で麻さんが言う。

 「私に宿泊を断られたら、どうするつもりだったの」

 「ここに荷物置かせてもらって、ネカフェかな。もしくはカプセルホテル? でも麻さんは絶対私を置いてくれるもの」

 麻さんは軽く息を吐き出して言う。

 「ふーぅ。まぁ仕方ないか」

 「そうそう、仕方ない。仕方ない」

 麻さんが少しむっとした振りで言う。

 「自分で言うな」

 「あははは」

 「あははは」

 それから、二人で布団や荷物を、二階に運んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ