皆幸せになった
これで麻さんは最終話です。
実家の外に出ると香菜さんが叫んだ。
「久々、赤ちゃんから離れたわぁ」
香菜さんが両手を上げて伸びをした。
麻さんが聞いた。
「どう、子育ては?」
香菜さんが少し考えてから言う。
「そりゃ大変だよ。泣くしさ。すぐ汚れるしさ」
麻さんが聞く。
「でも可愛んでしょう?」
嬉しそうに香菜さんが言う。
「そりゃ可愛いよ」
麻さんは気になっていたことを聞いた。
「香菜さん、どうするの?」
「何が?」
麻さんは、香菜さんの今後が、気になっていたのだ。
「クラブだよ。お店経営しないの?そろそろ戻れるんじゃないの?」
「そうだよね。赤ちゃんを預けて働くのもアリだよね」
麻さんが真面目な顔で言う。
「そうだよ。香菜さん、お店が命だったじゃない?」
香菜さんが、素直な今の気持ちを話し始めた。
「でもさ。なんか今安定しちゃってさ。良ちゃんが稼いでくれているし。スポーツバーも儲かっているし。それを壊してわざわざクラブにして働かなくても良いかなって。子供がもう少し大きくなってから、何かまた事業を起こせば良いんじゃないかなって。クラブで働いて、子供と、夜一緒にいられないのは寂しいよ」
麻さんは納得して言う。
「そうなんだ。意外だわ。香菜さんは、母親になったんだね」
「うん、私も意外だった。12歳からずっと、働いてきたからさ。家で赤ちゃんの世話だけしている自分がとっても不思議なの。初めはさ、もし私に何かあったら、子供がいないと、私の遺産の半分がママに取られるからだったんだ。だから、急いで子供を作ったんだけど。今はそんなのどうでもいいもの」
香菜さんの、子供を作った理由に、麻さんは驚いた。
「そうだったの? お兄ちゃんも同じ考えだったの?」
香菜さんは否定した。
「まさか違うよ。良ちゃんは、単に子供が欲しかったのよ。サッカーやらせるんだってさ」
麻さんが笑う。
「お兄ちゃんらしいね。でも女の子じゃん?」
香菜さんが言う。
「今は女子もサッカーするし、女子サッカーも強いから。いいんじゃない?」
麻さんもそうかなって思って言う。
「なるほど」
麻さんが聞きにくそうに聞く。
「ところで、香菜さんのママどうした?」
香菜さんがびっくりした顔をした。
「洋さんが喋ったの?」
麻さんが気まずそうに言う。
「もう時効だろうって言って、教えてくれた。麻さんだけは知っていてあげた方が良いと思うって。それで最近知った。屋上の話し含めてさ」
香菜さんが必死に言う。
「良ちゃんには絶対言わないで」
「分かっているよ。洋さんにも私からそう言ったし。洋さんもお兄ちゃんには、そもそも言う気がないらしいよ」
香菜さんが胸を撫で下ろして言う。
「ありがとう。ママはあの後結局、消えたんだ。男と一緒に蒸発したよ」
「そうなんだ……」
「ママはぁ。あの男が好きなんだと思う」
麻さんが悲しげに言う。
「そっかぁ。香菜さんのママは、女なんだね。ところで、ママ繋がりで思い出したけど。うちのママは最近大人しいけど……」
香菜さんが嫌そうな顔になり言う。
「良ちゃんが、お金あげているんだよ。結構たくさん」
麻さんが「あー」と納得する。
「金かぁ」
「金だね」
麻さんが言う。
「香菜さんが学生の時、ネットやマスコミに叩かれた時あったじゃない?」
香菜さんが言う。
「あの時は、麻さんが私と一緒にいてくれて、本当にありがたかった」
麻さんが言う。
「うん。私もあの時香菜さんといられて、良かったと思っている。でもね」
香菜さんが麻さんを見る。
麻さんが言う。
「あの時の功労者はお兄ちゃんだよ」
香菜さんが驚く。
「え、なんで?」
麻さんが言う。
「みんな私があの兄の妹だから、私に手出しできなかったんだよ。だから私が香菜さんと居たら、学校では、私達に手出しできなかったんだよ」
「なるほど……。あのころから良ちゃんてそう言う人だったんだ」
麻さんが言う。
「まぁ、お兄ちゃんは。そのことについて何も自覚してないけどね」
香菜さんが言う。
「それでも、あの時の私といてくれた事は、麻さんにとって、大変なリスクだったと思う」
麻さんが言う。
「いたかったんだよ。香菜さんと。香菜さんが好きだから。ずーと友達だったのに、急に友達をやめられないよ。香菜さんが嫌がらせを受けたら、私は一緒に受けるよ。楽しい時も、辛い時も一緒に笑うんだ」
香菜さんが嬉しそうに笑う。
それから、香菜さんが聞いた。
「それで麻さんはどうするの?」
麻さんは何を聞かれたかわからない。
「何が?」
香菜さんがいたずらっ子のような目をして聞いてくる。
「子供だよ。作らないの?」
麻さんが困ったように言う。
「まだわからん」
香菜さんがしらっと言う。
「まぁ、いるしね」
麻さんが意味が分からず聞く。
「え? いるって?」
もったいぶった口ぶりで、香菜さんが言う。
「麻さんには、子供が居るじゃん?」
麻さんには、香菜さんの言っている意味の、見当がつかない。
「え? 何それ」
香菜さんが真面目な顔して言う。
「洋さん。洋さんは子供みたいだもん。なんか可愛いよね」
麻さんが聞く。
「やっぱりそう思う?」
「思うよ。昔はあんなんじゃなかったのにね。男って付き合っていくと、男らしいのが目減りしていかんのだよ!」
「でも私は洋さんの可愛いところも好き」
香菜さんが嬉しそうに言う。
「惚気かい? じゃ私も言っちゃう。私は良ちゃんに守られて幸せだぁ」
麻さんが笑う。
「あはははは」
香菜さんも笑う。
「あはははは」
麻さんが言う。
「2人のママの事は別にして、香菜さんが幸せそうで、私は嬉しいよ」
香菜さんが言う。
「私も、麻さんが幸せそうで、嬉しいよ」
香菜さんが言う。
「ねぇ、カフェがオープンしてさ。そこの白桃のチーズパフェが美味しそうでさ。行かない?」
麻さんが言う。
「行く行く」
香菜さんがはしゃいで言う。
「たまにはいいよね? 息抜きもさ」
麻さんが香菜さんの意見を強く肯定する。
「ウンウン、仕方ない。たまには息抜きもしないと」
「ウンウン、仕方ない」
「仕方ない!」
そして二人は、顔を合わせて、また笑った。
白桃チーズパフェは、最高に美味しかった事を、ここに一応書いておく。
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今まで読んでくださってありがとうございました。
最後までエタらず走り切れて良かったです。
評価をつけてくださる方がいらしたら、是非とも甘目でお願いします。
また評価頂いた方もありがとうございます。
お礼に、キャラクター設定アップしました。
↑この後また評価増えて。お礼に香菜さんの設定も追加でに載せました。
良ければ読んでください。
(追記)
麻さん最後アップした時より、評価が上がって。とても嬉しかったので、新しい小説をあげようと思います。
今週末(10月22日日曜日)からアップ始めようかと思います。そちらも良ければご贔屓ください。




