良ちゃんと香菜さん
慰労会が終わって、良ちゃんと香菜さんは、香菜さんのマンションにいた。
香菜さんがワイングラスを持って、ベッド脇に座った。
寝室のローテブルに既にワインは置いてある。
香菜さんが、あっと言った。
「果物もあったけ」
そしてまた立ち上がろうとした。
それを良ちゃんが止める。
「もう、食べ物は要らないよ」
香菜さんが良ちゃんを見た。
「え? 要らないの?」
良ちゃんが香菜さんを両腕で抱き、膝の上に香菜さん座らせた。
香菜さんが言う。
「これじゃ、まるで子供みたい」
良ちゃんが笑う。
「そうか、そうだな」
そう言うと、良ちゃんは香菜さんの向きを変えさせた。
香菜さんは、良ちゃんの膝の上で向き合う形になった。
香菜さんが良ちゃんの肩に頭を乗せた。
香菜さんが言う。
「頭を撫でて」
言われた通り、良ちゃんは香菜さんの頭を撫でる。
良ちゃんが言う。
「甘えん坊だな」
香菜さんが言う。
「私が甘えるのは、良ちゃんと、麻さんだけだもん」
「そうかぁ」
良ちゃんは、香菜さんを抱きかかえながら、ワイングラスとり、ワインを注いだ。
そしてそのままワインを飲む。
香菜さんが言う。
「お酒は、程々にしてよね」
良ちゃんが頷く。
「そうだな。明日の仕事に差し障るからな」
「もう、体に悪いからだよ」
良ちゃんが笑う。
「俺は体は丈夫だから、平気だろう?」
良ちゃんが手に持っていたワイングラスを、香菜さんが奪って、床に置いた。
それから香菜さんが良ちゃんにキスした。
キスされて良ちゃんが言う。
「俺、されても、最後までしてあげられないぞ」
香菜さんが言う。
「知っているよ。それでもいいの」
良ちゃんが済まなそうに言う。
「病院行こうか?」
香菜さんが尋ねた。
「何しに病院行くの?」
「薬をもらいにさ」
香菜さんが困ったように言う。
「え――。行かなくて良いよ」
良ちゃんはかなり落ち込んでいた。
「ごめん。俺はセックスも出来ない」
「いいよ」
「でもこのままだと子供も出来ない……」
「私当分結婚とか、子供とか大丈夫だから」
「結婚しなくて良いの?」
「いいよ。このままで平気。だから気にしないで」
香菜さんが自分の考えを言う。
「私ね。良ちゃんの腕枕で、良ちゃんに絡みついているだけで、めちゃ幸せだから」
良ちゃんはまだ落ち込んだままだ。
「だったらいいけど。俺も、店と作った時の借金あるし。香菜さんと結婚して、俺に何かあると、香菜さんに迷惑をかけるからな。俺たち結婚しない方が良いかもな。どうせこのままじゃ、子供が出来ないからな」
良ちゃんが香菜さんを見た。
「香菜さんはこんなに綺麗なのに。俺のピコピコレーダーは無反応だ」
香菜さんが喜ぶ。
「綺麗だって思ってくれるの」
良ちゃんの表情が明るくなる。
「当たり前だよ。香菜さんは綺麗で、優しくて、可愛い。俺さぁ。明日からこのマンションに夜は来て良い?」
「え? どうして? 大変でしょう? 20時まで美容室やっていて、それからここに来るの?」
「今のままだと、なかなか香菜さんに会えないから、辛いんだ」
「辛いの?」
「そうなんだ。香菜さんの店は、土曜日が休みで。俺の店は月火だろう? このままだとすれ違いだよ」
「確かに」
「だから、俺は20時に仕事が終わったら、家で飯を食って、25時まで仮眠する」
「なるほど」
良ちゃんの話は続く。
「そして25時半に、香菜さんを店まで迎えに行って、このマンションに戻って、香菜さんと触れ合ってから寝るよ。それから朝7時に起きて、美容室に戻るよ」
「でも、大変じゃない?」
「香菜さんと会えない苦労に比べたら、全く大変じゃないよ」
香菜さんが良ちゃんに、ベッタと抱きつく。
「それ、セックスより嬉しい」
良ちゃんが聞き返す。
「本当?」
「本当だよ。私、幸せだわ」
麻さんの不幸をよそに、良ちゃんと香菜さんは幸せの頂点にいた。
ピコピコレーダの、只今調整中問題を除けば、だけれども。




