表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/82

女と対決してしまいました


 洋さんの後を追って、病院の中を、香菜さんと麻さんがついていく。

 入院病棟に洋さんは入って行き。

 二人は、洋さんを見失わないように、後を追う。

 

 すると洋さんが入っていった病室では、女のヒステリックに喚く声がした。

 病室を香菜さんと麻さんが覗くと、その声の主の女は、病院で一人大暴れしていた。

 

 女が叫けぶ。

 「死んでやる!私なんか死んだら良いんだ!」

 そこに洋さんが入って行く。

 すると、女に手を焼いていた看護師が言う。

 「洋さんが来てくれましたよ。だから機嫌を直して……」

 

 洋さんが女をなだめるように言う。

 「晴海さん、暴れたら看護師さんに迷惑でしょう?」

 晴海は洋さんを見て、甘えた声で言う。

 「だって、だって、今日は洋さんが来られないって言うから。私、私……」

 

 香菜さんが病室に踏み込んだ。香菜さんが割って入って言う。

 「洋さん。入院した友達って、この人なの?」

  洋さんが、香菜さんの顔を見て、驚きの表情を浮かべた。

 しどろもどろで洋さんが言う。

 「香菜さん……。あ、いや、彼女は、その」

 

 さっきまで暴れて居たはずなのに、晴海は平然と答えた。

 「晴海です。昔洋さんとはお付き合いしていて。また仲良くさせてもらってます」

 晴海がわざとらしくよろめく。

 それを洋さんが支えた。

 晴海が洋さんの腕に絡み付いた。

 

 香菜さんが、晴海を値踏みするように見た。

 「あ、そう。でも洋さんには彼女がいるの、晴海さんは知らないの?」

 晴海が意地の悪そうな顔で聞いた。

 「彼女って、失礼ですが、あなたですか?」

 香菜さんも負けていない。香菜さんの表情に悪意が籠もった。

 「違うわよ。後ろにいるわ」

 香菜さんが振り返ると、麻さんは病室の外の廊下で、目立たぬように立っていた。

 

 洋さんはやっと麻さんに気が付いて、叫んだ。

 「麻さん!」

 麻さんの立っている場所に行こうと、洋さんが動きだした。

 麻さんは、咄嗟に自分の携帯電話を、香菜さんに投げ渡して走り出す。

 

 麻さんを追おうとした洋さんの腕を、晴海が更に絡みついて離さない。

 「行かないで。行ったら、私死ぬわ。今から病院の屋上に行って飛び降りてやる」

 洋さんは晴海を見て、洋さんを掴む晴海の手を払った。


 そして洋さんが言う。

 「ごめん」

 洋さんは麻さんを追って病室から去っていく。

 

 その様子を香菜さんと晴海が眺めた。

 完全に洋さんが見えなくなると、香菜さんが晴海に言う。

「飛び降りに、屋上に行かないの?」

 晴海は答えない。

 「死にたいなら、一人で大人しく死になさいよ。誰かを巻き込んで騒いで、騒動を起こして! バカじゃないの?」

 

 香菜さんが更に言う。

 「あんたの携帯貸してよ」

 晴海が香菜さんを見る。香菜さんがもう一度催促した。

 「早く、携帯貸して」

 しぶる晴海から、香菜さんが携帯電話をとりあげた。険しい顔で晴海が香菜さんを見て言う。

 「何するの?」

 晴海から逃げながら、香菜さんが言う。

 「晴海さんの携帯電話から、洋さんの電話番号とラインを消すのよ」

 「やめて」

 「やめない」

 

 厳しい口調で晴海が言う。

 「他人の携帯を勝手に弄っていいと思っているの?」

 香菜さんも負けていない。

 「あんたこそ、他人の男に手を出して、ただで済むと思っているの?」

 晴海は持論を述べた。

 「恋愛は自由でしょう?まだ結婚もしてないって聞いたわ」

 

 香菜さんが怒って言う。

 「恋愛じゃないでしょう?勝手にあんたが洋さんにからみついただけでしょう?どうせもう洋さんはここに越させないし。洋さんの携帯からも、あんたのラインも電話番号を削除させる」

 晴海は同情を引くように言う。

 「酷い。そんなの酷い。私は病人で、これからは杖なしでは、歩けないのに。麻さんは健康で、若いんだから、私に洋さんをくれたっていいじゃない?」

 

 晴海の身勝手な言い分に、香菜さんが驚いて言う。

 「洋さんをくれてもって……。洋さんは猫の子じゃないんだから。洋さんにも意思があると思わないの。いまここに洋さんがいないのが、答えでしょう?麻さんの方が大切だから、洋さんは麻さんを追いかけたんだ。それくらい本当はあんたも分かっているんでしょう?」

 

 そして無常にも、香菜さんに洋さんの電話番号とラインを消されてしまう。

 それから香菜さんが言う。

 「私が病院の保証人になってあげる。洋さんが保証人になっているから、晴海さんが暴れると、いちいち呼ばれているんでしょう? 介護人が必要なら、誰か人もつけてあげる。だから早く元気になって、自分で生きていきなさい」

 

 晴海が悪態をつく。

 「クソ! クソ! クソ!死ね!死ね!死ね!みんなぶっ壊れろ!」

 そして松葉杖を振り回した。

 香菜さんが言う。

 「暴れたいなら暴れて。でも洋さんはもう来ない。あんたにはちゃんとした介護人をつけるから、その人が毎回、洋さんの代わりに病院へ来るから、安心して」

 その場で晴海は崩れるようにしゃがみ込んで、泣き始めた。

「死んでやる! 死んでやる!」


 香菜さんが言う。

「苦しいのはあんただけじゃないんだ。みんな耐えてんだよ。苦しいからって、人のものとるな。甘えんな。ボケ!」

 

 香菜さんが看護師に言う。

「申し訳ありません。姉がご迷惑をおかけして。今後は私が姉のことはきちんとしますから」

 そして香菜さんは、何処かに、電話をし始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ