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家を出るとママに話すと、ママがキレました

 粗大ごみを業者に引き取って貰って、それから麻さんと兄は、いったん実家に戻った。麻さんの引越しのことを、母親に伝えるためだ。


 話を切り出されて、麻さんの母親が、ひどく驚いて言う。

「そんな、お祖母ちゃんちに住むって! なんでそんな話になったの? お父さんはなんて言っているの?」

 

 麻さんが住もうとしている家は、父方の祖母の家だった。

 「パパは住めって。家の中のものは全部捨てて良いって。捨てる為の費用はくれるって言っていた。修理は自分でしなさいって」

 

 母親の顔は歪んだ。

「酷い、あの人は何時だって勝手に許可して。私の気持ちなんか1つも考えてくれない。麻さん、家から出ないで、この家にいなさい」

 「でも、ママは私に今後を考えろって言ったから」

 「それはそう言うことじゃなくて」

 「じゃぁ、私はどうしたらいいの?」

 「まだ、お兄ちゃんたちだって、この家に移って来たわけじゃないし。そんなに急いで出ていかなくてもと思っただけよ」

 

 話を聞いていた兄が口を出す。

 「母さん。俺たちも後数ヶ月したら、引っ越してくるからさぁ。もうばあさんちは、だいぶ手入れが終わったんだ。家電も明日入る。そうすれば、明日から住めるよ」

 

 母親はかなり怒っている。

「私に一言も言わないで、住む準備をしていたの?」

 兄が言う。

 「言う必要ある?言えば邪魔するだろう。だから俺が麻さんに、色々終わってか母さんに話せって言ったんだ。母さんは、何時も矛盾したこと言って、結局前に進めないんだ。それだと、麻さんだけじゃなくて、俺も困るからさ」

 

 母親はいきり立っていう。

 「いいわよ、そうでしょうね。老いた母親の意見なんか、聞く気もないでしょうよね?」

 

 兄が母の目を見て言う。

 「南央美も後3ヶ月で産休だからさ。そしたら引っ越してくるよ。年末までにはここに住む」

 

 息子の話は、母親には寝耳に水だった。

 「え?産休って?ママ聞いてないよ。南央美さんは、仕事辞めないの?」

 息子が当たり前だと言わんばかりに言う。

 「辞めるなら、わざわざこの家に越す必要がないでしょう? それに美容室がオープンしたら、当然南央美も店に出て働くし。保育園の送り迎えも母さんにやって欲しいんだ。母さんには赤ちゃんの面倒を見て欲しい」

 

 母親の言葉が殺気立つ。

 「ママだって、仕事しているわ。赤ちゃんの面倒は見られない」

 

 兄が母親を諭すように言う。

 「でも、全然見られないって事はないでしょう?長時間のパートってだけで、一月のうち半分は休みでしょう?休みが多くて暇だろう?」

 

 母親は言い返す。

 「暇だなんて!失礼ね。私はあんたたちの面倒を見るために、同居を許したわけじゃないの。生活が大変だからって言うから、この家に暮らして良いと許可しただけなのよ」

 

 兄が自分の言い分を言う。

 「でも、もう俺たちは、お母さんに一度許可貰って、この家に住むって決めたし。すでに居間のアパートの解約手続きもしちゃったんだ。今更困るよ」

 

 母親が麻さんに頼み込む。

 「ねぇ。麻さん。引っ越すなんて言わないで」

 兄がごり押しして言う。

 「もう、麻さんは決めたんだ。母さんが口を出すなよ。それにこの狭い家に、小姑まで置けないだろう。南央美が気の毒だろう?」

 

 兄はハッとして、麻さんを見た。

 麻さんが兄を気遣うように言う。

 「良いの。その通りだから。私はママと南央美さんとお兄ちゃんが、仲良くしてくれたらいいの。じゃ、私はこれから友達と約束あるから。手伝ってくれた友達に夕飯奢る約束なの。ママの食事は昨日の夜、カレーを作っておいたから。冷蔵庫に入れてあるの。お兄ちゃんもどうぞ。食べて行ってね」

 

 麻さんが立ち上がる。すると兄も立ち上がって言う。

 「じゃ、俺ももう行くわ」

 母親が、大きな息子を見上げて言う。

 「お兄ちゃんは、もう少し居たら?晩御飯でも食べて行けばいいのに」

 

 しかし息子はけんもほろろだ。

 「いや、アパートで南央美が待っているから。最近あいつ足がむくむんだ。マッサージしてやらないと。じゃぁ」

 

 母はひとり家に取り残された。母は無言で、ダイニングテーブルの椅子に座ったまま、微動だにしなかった。

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