兄ちゃんの元妻、南央美登場
南央美登場です。
南央美面白いんで、南央美を楽しんでいただけると良いな。
さて、オープンして、半月もたたない頃の夕方だった。
美容室の扉の、ドアベルの音を聞いて、兄が言う。
「あ、もう今日は、予約のお客様だけしか……」
店に入って来た女は、満面の笑みで言う。
「客じゃないわ。妻よ」
そう言われて、兄が女の顔を改めて見る。
「南央美……。お前、なんで……」
南央美が、抱いた子供の顔を、兄に見せる。
「あなたの子供よ。飛敏よ」
兄は驚きが止まらない。
「俺の子って、今更なんで。南央美……」
南央美が微笑む。
「この子を認知して、私とも婚姻して欲しいの」
「いや、俺はもう、お前とは……」
「何か結婚しできない理由でもあるの?」
兄の顔が引き攣った。
「もう終わったじゃないか? 俺は南央美とは別れただろう? 1000万も南央美のあげたし」
南央美はニヤッとした。
「預かっただけよ。ほら1円も使ってないもの」
南央美はバッグから通帳と印鑑を取り出して見せた。
それをちらりと見て、兄が言う。
「でも、俺のところから去って、南央美は他の男と暮らしていただろう?」
南央美は、そんな事は大した問題ではない、と言う口ぶりだった。
「よく知っているわね。あの男とは何でもないのよ。ただ置いてもらっただけ。それに私達、あの時結局、何も話してないじゃない?」
流石に兄も言い返す。
「それは南央美が、遺伝子検査すると言った俺を怒って、そのまま通帳持って出ていったから。てっきりそれで俺は終わったと思ったんだ。あれから結局南央美は、1度も俺に会いにも来なかった」
南央美は不貞腐れたように言う。
「忙しかったのよ」
奥で騒ぎを聞きつけて、話を聞いていたらしい母親が、店に出てきて言う。
「店がオープンしたから、どうせそれで来たんでしょう?」
南央美が血相を変えた。
「そんな事はありません」
母親は意地悪い。
「じゃ、一緒に暮らしていた男に捨てられたの?」
南央美は苛立ちを隠せない。
「お継母さん、あんまりな言い方じゃないですか?」
母親は饒舌だ。
「だって、そうでしょう? 今まで音沙汰もなかったのに、店がオープンしたら急に来て。おかしいじゃない? お店がオープンして、お客様もそこそこ入って、繁盛しているのを見たから。うちの息子を捨てた事が惜しくなったんでしょう?」
南央美が封筒をトートバッグから出して見せた。
「ともかく、これが遺伝子検査の結果です」
封筒の中身を出して、兄が書類を確認した。
そして驚いたように言う。
「え? 遺伝子上、俺の子だったの?」
南央美が鬼の首でも捕ったかのように、自慢げな顔で言う。
「そうよ。あなたの子よ。これで文句ないわよね?」




