お兄ちゃんと香菜さんの関係は微妙です
美容室のオープンまで、多くの時間を香菜さんと兄は共にした。
兄の傍らには、いつも香奈さんがいた。
麻さんが2人を見かけて、呆れ顔で言う。
「また一緒にいるの?」
香菜さんが言う。
「店の内装を決めて来たのよ。これから食事に行くけど、麻さんもどう?」
それで3人で食事に行く。
香菜さんと兄が並んで、麻さんの前の席に座った。香菜さんが甲斐甲斐しく兄の世話を焼く。
水を注ぎ。出たゴミを捨てて。兄の頬についたソースまで、香菜さんが拭いてやる。
麻さんが聞く。
「いつもそんな感じなの?」
兄が答える。
「まぁ、こんなだな」
麻さんが言う。
「香菜さん、駄目だよ。お兄ちゃんを甘やかしちゃ。本当、甘えん坊だから、際限ないからね」
香菜さんが言う。
「良いの。したいの。恩返ししているの」
そして香菜さんが兄を見つめた。兄は見つめられても、素知らぬ振りをしていた。
麻さんが兄に後から聞いた。
「どういう関係なの?」
「香菜さんは。俺とは本気で付き合えないけど、世話はしたいらしい。側にいつもいて、一緒に色々したいんだってさ。俺には香菜さんの考えが、良くからない。だから俺は少し距離をとるようにしているんだ。だって何か変だよな。友達にしては距離が近すぎるだろう? 何かいつも香菜さんに見つめられていて落ち着かないんだ」
麻さんにも、香菜さんの考えが分からなかった。
「そうなんだ。結局、恩返しなのかな?」
兄は少し考えて言った。
「多分そうだろう」
麻さんが兄に助言した。
「もう、流石にお世話は断ったほうが良いんじゃない? 悪いよ」
すると、兄は困ったように言う。
「何度も、もういいよって言っているんだけど。駄目なんだよ」
麻さんが兄を見て言う。
「女に強く出られると、お兄ちゃんは巻かれるタイプだからね。空手とかしていて、強いのに。本当、不思議だわ」
兄がしょげた顔で言う。
「面目ない……」
そして急ピッチで店の工事が行われて、美容室がオープンした。美容室がオープンすると、香菜さんは足繁く通って、美容室のために働いていた。知り合いにも美容室を宣伝し、客を連れてきた。香菜さんの店の女の子は、強制的に兄の美容室送りになっていた。
誰が見ても、香菜さんは、甲斐甲斐しく兄の世話を焼いていて、いきいきと働いていた。
その様子をみて、母親が憎々しそうに言った。
「まるで夫婦みたいだわ」
それを聞いて麻さんが言う。
「単なるビジネスパートナーらしいよ。香菜さんが、お兄ちゃんを男として相手にしないよ。香菜さんの歴代彼氏は超絶イケメンばっかだし。香菜さんはお兄ちゃんに助けてもらって、恩を返しているだけだと思う」
母親が言う。
「あんなクラブのホステスなんかにうちの息子はやらない」
「ママ、香菜さんはあのクラブのオーナーで経営者だよ」
ママが驚く。
「雇われじゃないの?」
「香菜さんは経営者だよ。社長だよ。しかも香菜さんのクラブの入っているビルは、香菜さんのビルだよ」
ママの香菜さんへの眼差しが変わった瞬間だった。




