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お兄ちゃんの目覚めました

 兄は、ぼんやりと目覚めた。

 兄が最初に見たのは天井だった。天井が白かった。兄は自分の腕を見た。点滴の針が刺さっていた。

 そして兄は、思い出した。

 自分が刺されたことを。


  そして兄は言う。

 「あれ、俺……。もしかして、ここ天国? 病院?」

 「現世です。病院ですよ」

 兄は声の方を見た。

 香菜さんだった。香菜さんは兄のすく間近に顔を寄せて、兄を見ていた。

 兄は綺麗な香菜さんの顔を、間近に見ながら言う。

 「アレ、俺、生きてたの?」

 香菜さんの顔が歪んだ。そして香菜さんの瞳から、涙が溢れた。

 香菜さんが泣きながら言う。

 「生きてました……。もう、心配させて……」

 

 兄はつい謝ってしまう。

 「あぁ、ごめん。心配させようと思ったわけじゃないんだ。ただ結果そうなっただけでさ」

 兄が、泣いている香菜さんの頭を、いつも猫を撫でている要領で、思わず撫でた。

 「大丈夫。生きているから。泣かないでくれよ」

 香菜さんが兄の胸に、顔を埋めて言う。

 「だって、だって……。私、わたし……」

 兄が香菜さんの頭を更に撫でて言う。

 「いいんだ。気にしないでくれ」

 「ごめんなさい。ごめんなさい……」


 そこに麻さんが入ってきた。

 「あ、お兄ちゃん。目が覚めたの?良かったぁ」

 香菜さんが身を起こして、兄から離れた。

 兄が辺りを見回して聞いた。

 「母さんは?」

 「母さんは、怖くて看病に来られないって」

 兄が不審に思い聞く。

 「どう言うこと?」

 「死にそうなお兄ちゃんの顔は見ていられないから、病院には来ないって言っているの」

 

 「なるほどね」

 「でも、お陰で香菜さんが、病室に入れたけど……。ママがここにいたら、きっと香菜さんを許してくれないと思う」

 香菜さんが申し訳無さそうに言う。

 「ごめんなさい」

 兄が香菜さんを気遣って言う。

 「麻さん、もう良いだろう?母さんの話はもう良いよ」

 「あ、私、気が付かなくて。ごめんね。香菜さん。泣いてたの?」

 兄が気になっていたことを聞いた。兄を刺した康ちゃんのことだった。

 「それで、康ちゃんはどうなった?」

 

 香菜さんが状況を説明した。

 「警察に捕まって、取り調べを受けているわ。お兄さんの空手仲間も警察に呼ばれて、事情を聞かれているみたいで……。大丈夫かしら?」

 兄が考えながら言う。

 「うーん、どうだろうな?でも俺たち警察には知り合いが多いから、なんとなるだろう」

 

 香菜さんが聞く。

 「え?なんで?」

 「空手や柔道で繋がりがあるんだ」

 「そうなんだ」

 「ああ、それに結局刺されて死にそうなのは、俺だし……。だから香菜さんは気にしなくて良い。もしこれで俺も捕まったら、それは俺の問題だし。もう良いんだ。気にするな」

 兄が香菜さん涙を拭いてやる。

 

 それから兄が心配そうに言う。

「それより康ちゃんが心配だな。あとで上申書だして、減刑をお願いするよ」

 香菜さんがそれを聞いて言う。

 「上申書だなんて!一生刑務所に入っていたらいいのよ。兄さんは死にはぐったんだよ! あんな男は許せないよ!」

 

 兄は香菜さんの剣幕に押される。

 そして急に、兄は自分の頭が痛いことに気がついて言う。

 「それより、俺、なんか頭が重いよ」

 麻さんが兄の顔を覗き込む。

 「だいぶ出血したからじゃない?大丈夫?」

 兄の顔色は悪い。

 「俺、寝ようかな?」

 麻さんが慌てて言う。

 「私、先生を呼んでくるね。意識が戻ったって」

 兄が頷く。

 

 麻さんが病室を出ていく。

 香菜さんが兄に言う。

 「生きていてくれて、ありがとう」

 「なんだよ。なんかそんな事言われると、変な気持ちだ」

 「でも、嬉しかった。元気になるまで、私色々面倒見るから」

 「いいよ。麻さんもいるしさ。このくらいの怪我ならすぐ治るよ」

 「私、面倒見るから」

 「あ。でも……」

 「見させて」

 兄は言い合いが面倒になって言う。

 「……、じゃ、お願いします」

 「うん、絶対みるから」

 兄は頷いた。

 そしてもう、兄は喋るのをやめた。

 

 程なくして、医者が麻さんと病室にやってきた。

 

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