元カレを追い出しに行きました 後編
それを兄が止める。
「香菜さん。もう金を与えるのはやめろ」
「でも……」
「おい、お前は黙っていろよ。俺と香菜の問題だろう?」
「あいにく。香菜さんは、俺の大事な妹の親友なんだ。妹の大事な人は、俺の大事な人でもある。それに俺は昔から香菜さんのファンなんだ」
香菜さんが聞く。
「それ初耳だけど。本当の話?」
気不味そうに兄が香菜さんを見た。
「今は、その話を深掘りするタイミングじゃないですよ」
「ああ……」
「俺は絶対出ていかない」
「香菜さん、こいつの荷物まとめてやってください」
香菜さんは、落ちていた紙袋に、康ちゃんの私物を詰め始めた。
康ちゃんが慌てる。
「おい、やめろ! 香菜、香菜」
康ちゃんは香菜さんの行動を止めたかったが、壁に激突した足が痛くて、言葉でしか止めることしか出来ない。
その間に。兄が電話した。
すると、香菜さんのマンションに4人の巨漢が入ってきた。康ちゃんが慌てふためく。
「おい、誰だよ。こいつら誰だよ」
兄が答えた。
「俺の仲間です」
康ちゃんは絶望する。
「仲間って……」
兄が説明した。
「空手仲間ですよ。とっても気のいい奴らなんです」
仲間の一人が言う。
「良ちゃん。この美人さんは新しい彼女さんですか?」
兄が言う。
「違うよ」
兄が香菜さんを見て言う。
「こいつはヒデさんね。そんであいつが仲さん。そっちのがブンさん。最後にチカラ君」
4人は絶妙なタイミングで、合唱するみたいに言う。
「うーす」
香菜さんが、4人に圧倒される。
ヒデさんが、兄に確認した。
「ところで、山の中に捨てて来ればいいんだよね」
兄が指示した。
「ああ、でも死なない程度の場所に捨てくれる。今は冬だから、寒い山の中で頭を冷やせば、考えも変わるだろうと思うのよ」
ブンさんが、康ちゃんを見つめながら言う。
「ええ、そうでしょう」
康ちゃんがブンさんにガン見されて、震えて言う。
「捨てるって、なんだよ!」
仲さんが言う。
「そのままの意味だろう? 他にある?」
するとチカラ君が言う。
「あるなら教えてくれる。康ちゃん。楽しくドライブに行こうぜ」
そう言うと、空手仲間の男たちは、康ちゃんを縛り上げ。猿ぐつわをして、絨毯で簀巻きにした。
仲さんが言う。
「じゃ、バンを停めてあるんで、もう行くわ。ああ、そうそう良ちゃん、明日のフットサル、来るの忘れないでよ」
兄が言う。
「分かった。分かった」
チカラ君が言う。
「絶対ですよ。兄貴が来ないと、場が盛り上がらないんですよ」
その間に、康ちゃんは、屈強な男3人に担がれてマンションを運び出されていく。名残惜しそうに兄にへばりつくチカラにヒデさんが言う。
「おい、チカラ、行くぞ! 今日中に帰って来たいだろう?」
それでチカラも、部屋を出ていった。
香菜さんが兄に聞く。
「本当に山に捨てるの?」
「ああ。捨てて来てもらう。だめ?」
「だめって……。ちょっとびっくりしたから」
兄が捨てる山について、香菜さんに教えた。
「まぁ、そんな山々した場所じゃないから、すぐに自力で降りてくるよ」
香菜さんが心配する。
「仕返しされないかしら」
兄はあっけらかんとして言う。
「さぁ、どうだろう? でも仕返しされたら、またその時考えたらいいだろう」
香菜さんが兄を見る。
「あなたって……」
「何?」
「いいの。もう……。なんだか考える気力がないみたい。部屋は荒れているし」
香菜さんは悲しそうに部屋を見回した。
兄が申し出る。
「掃除を手伝うよ。このままじゃ部屋が使えないだろう?荒れ放題だ。どうなっているんだ。ゴミだらけだぞ!」
兄が部屋を見回し言う。
「寝室は俺が掃除しよう。香菜さんは見たくないだろう?」
香菜さんはうなずいた。
そして二人は、掃除を始めた。




