表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/82

お兄ちゃんに赤ちゃんが出来たので、麻さんピンチです

お越しいただきありがとうございます。

お楽しみ頂けたら幸いです♪

 麻さんは、朝起きて、キッチンへ行くと。兄と母親がダイニングテーブルを挟んで座って、何か話し込んでいた。兄は麻さんたちと別居している。28歳の麻さんは、離婚した独り身のママと、まだいっしょに暮らしていた。ママは麻さんが大学を出た時に、離婚したのだ。


 

 麻さんが兄に声をかけた。

「お兄ちゃん、来てたの?」

 兄は麻の顔を正面から見ないで言う。

「ああ、来てたよ。じゃ、俺行くわ」

 母親が笑顔でいう。

 「ええ、また来て」

 兄は、やっぱり、麻さんの顔を見ないで言う。

 「じゃ、麻さん、またな」

 兄はそそくさと帰って行ってしまう。


 

 あまり実家に訪ねて来ない兄の訪問に、麻さんは、あれっと思って聞いた。

 「お兄ちゃん、何の用事だったの?」

 母親は嬉しげに話す。


 「お兄ちゃんの彼女に、赤ちゃんができて、ここに一緒に住みたいって言ってくれているの」

 麻さんは兄の彼女の顔を思い浮かべた。

 「お兄ちゃんの彼女?同棲しているあの南央美さん?」

 「もう5ヶ月で、3日前にわかったんだって」

 麻さんは母親の言葉を反芻する。

「5ヶ月……」

 「南央美さんは、自分でも妊娠した事に、気が付かなかったみたい。生理の周期が乱れていたんだって。その上つわりもなくて。もうお兄ちゃんも31歳だし。南央美さんも32歳でしょう。だから子供は堕ろさせたくないって、お兄ちゃんが言っていてね」


 麻さんはそれより気なることがある。麻さんはダイニングの椅子に腰掛けながら聞いた。

 「それはわかったけど。なんで、ここに住みたいの?」

 母親が事情を説明した。

 

 「あの二人は、美容師同士じゃない?将来自分たちで店を持ちたいから、お金を出るだけ貯めたいんだって。アパート住みじゃ、家賃ももったいないしね。できたらこの家の1階を改装して店をやりたいって思っているらしいの」

 

 「この家でお店……」

 「そうなのよ。でもそれにはこの家が手狭よね?」

 「うん」

 「子供も産まれるしね」

 「うん」

 「1階は店にするし……。住居スペースも減るし」

 「うん」

 「麻さんも、今後のことを考えておいてね」

 「……」


 麻さんは、思う。

 (何を考えて欲しいの?)


 その時、麻さんの携帯が震えた。

 麻さんは携帯画面を見た。

 さっき出て行った兄からのメッセージだった。


 ――母さんのいない場所から電話くれ――


 麻さんは立ち上がった。

 「着替えてくる」

 母親にそう伝えて、麻さんは自分の部屋に移動した。

 麻さんは兄に電話した。

 「お兄ちゃん。電話しろって……。何?」

 兄が答える。

 「母さんがいると、話し辛いだろう?」

 「それで何の話なの?私に実家から出て行けって言う話なの?」

 「……うん。それもそうなんだけど……。金の話なんだ。実家を担保にして、実家を店に改築したいんだ悪いな。南央美がうるさいんだ。そろそろ美容室を開かないと、手遅れになるって言ってさぁ」

 

 麻さんは驚く。

 「家を担保にするの?」

 「申し訳ない。母さんが亡くなったら、本来なら家の半分は麻さんのものになるのにさ。担保にしちゃって。しかも相続権を、麻さんにいずれ放棄して欲しいと思っているんだ」

 

 あまりにも身勝手な兄の話に、麻さんは母親はどう思っているか気になった。

 「……ママはそれで良いって言っているの? ママの家を担保だなんて……」

 「まだ切り出せないけど。結局押し切る事になると思うよ」

 「……そうなんだ。ママはお兄ちゃんに甘いから」

 

 「それで、そうなるとやっぱり、もう麻さんとは一緒に住めないだろう?南央美は性格がキツいからさぁ。麻さんの今後の住まいだけど……」

 麻さんはなんて言っていいかわからない。無言の麻さんを無視して、兄は話を続けた。

 「……俺、父さんに相談したのよ。そしたら、麻さんが、死んだお祖母ちゃんの家に住んで良いって。」

 

 麻さんは仰天した。あんな場所は人が住む場所じゃないと、麻さんは思う。

 「でも、ゴミ屋敷に近い感じだよ?すごい量の物が置いてあるよ」

 兄はシラッと言う。

 「俺も手伝うよ。ゴミを処分するのさ。親父が処分費用は出してくれるって言っていたよ。どうせ家の中のガラクタは、親父が処分するつもりだったから、処分費用だけで済むなら安いもんだってさ」

 麻さんは、あの家を住めるように出来るのか不安になってしまう。

 「手伝ってくれるって言っても……」

 

 兄はいつになく強引だ。

 「ともかくお祖母さんの家を1回見てこいよ。俺、実家出る時、麻さんの部屋の前に、お祖母さんの家の鍵を置いておいたんだ。じゃ、また連絡するよ。俺これから仕事だからさ」

 そして電話は一方的に切られた。

 麻さんが自室の扉を開けた。

 麻さんは、扉付近の廊下の床を見る。


 「これかぁ」

 鍵がぽつんと廊下に置いてあった。


 麻さんはガギを握りしめた。

 「お祖母ちゃんの家は、立地しか良くないんだよね」

 それから麻さんは着替え初めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ