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リモート  作者: 飛鳥 友
第1章 鬼畜と呼ばれたパーティにさえも見捨てられた超人見知りのこいつは、どうやって生きていくのだろうか?
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仲間の行方は?

12.仲間の行方は?


「……………………………………」

 サーティンの問いかけに、イチは何も反応できないでいた。


(ほら……ショックなのはわかるが、黙ったままでは真実に辿り着けないぞ!お前はダンジョン内で魔物たちの相手をさせられていたとして、ボスとも戦っていたのか?ボス戦は……仲間の担当だったんじゃないのか?仲間が倒したボス魔物を見たことはあったか?なかったんなら、そのように答えておけ!)


「あっ……あああ……たっ確かに……おお俺たち……ぱぱぱパーティ……ささ最深部……ぼぼボス魔物……そっ遭遇……なななかった。さささ最深部……ままま魔法……つっ使う……ままま魔物……ああああった……けっけど……さささ最強……まっ魔物……ななななかった。


 だっだけど……ぼぼボス……まっ魔物……だだだって……だだダンジョン内……はは徘徊……すすする……きき聞いた……たったまたま……だだだだと……おおお思っていた……。」


 頭から冷や水をかけられたがごとく、スーッと血の気が引いていくのが感じられた。あくまでも噂と言いながらも、サーティンの話はイチのチームが仕立てたパーティの、クエスト状況を言い当てていたのだ。


「恐らく事情を知らないお前さんが……今回の生贄だったのだろうな。血の匂いをさせたくはないので、臀部を焼くだけで動きを封じたかったのだろうが、お前さんはかなりのつわものだからな……念のために左足首の腱も断っておいたのかもしれん。なるべく出血させないように鋭利な刃物で一撃でな……。


 そうして集魔香を気付かれないように腰の裏側に結び付けておいた……眠り薬を飲ませたんだろうが、異常に気付いたお前さんが早く目覚めてしまい、最深部から逃げ出してしまった。それでも集魔香で魔物たちを引き寄せたお前さんのおかげで、お仲間たちは悠々とお宝をゲットして立ち去ったというわけさ。


 俺たちが到着したときに最深部にはボス魔物すらいなくて途中で仕留めたんだが、それはお前さんが全ての魔物たちを集魔香で惹きつけていたためで間違いないだろう。」


(そうなると……仲間たちはどこへ行ったんだ?)


「じじじ……じゃ……じゃあ……ななな……仲間たち……どどど……どこ……に……?」


「ああ畿東国での悪行も広く伝わり、そろそろお暇の時期と悟ったのだろうな。

 次の活動場所は、恐らくここ畿西国の可能性もある。蝦夷国から回っていると考えるとね。


 お触れが回っているからここでは研修生の募集に引っかかる若者は、まあいないだろうがね。ロックとハッチとで半年ほど時間が空いているから、ほとぼりが冷めるまでどこかに潜んでいるのかもしれないな。」

 サーティンの言葉には、イチが納得する以上の真実味が感じられた。


(恐らく奴の言っていることは正しいだろう。そうなると……イチのお仲間たちは……一体どこに?組合か?冒険者組合へ探しに行けばいいのか?)


「そっ……だだだ……だったら……ぼっ……冒険者……くくく組合……いいい行けば……。」

 イチは結論を急ぐあまり、なんでも口に出した。


「ああそうだろうな……いずれは現れるだろう。最後のクエストの清算をしなかったのは、チームの有力メンバーのお前さんがかけてしまって、ますます疑惑の目を向けられそうだから、組合での清算を取りやめたのじゃあないかね。お宝は恐らく闇ルートで捌くはずだ。


 そうして素知らぬ顔で、ここ畿西国でチーム名を変えて登録するはずだ。冒険者を続けるつもりであればね……どうする?組合に張り込んで、元のチームメイトが現れるのを待つのかい?


 もし現れたらどうする?もう一度同じチームに加わるつもりかい?それとも……生贄にされたことを恨んで……そいつらの息の根を止めてやるかい?


 どっちも……あまりお勧めできないね。それに今回で冒険者を廃業するつもりの可能性だってないわけじゃあない。ある程度以上の金がたまっていればだがね。保険料も節約するくらいだから、金も貯まっているだろ?もうそんなチームのことは忘れて……うちへ来ないか?


 お前さんの腕なら大歓迎だ。こないだの獲物……魔物たちの毛皮を清算に出したところ、思った通り高値の評価を受けた。仕留めた冒険者がもし一人でやったのであれば、A+のランクをつけてもいいとも言われた。だったら、下働きなんかしなくてもいい……すぐにうちの主要メンバーとして迎える。


 うちは見ての通り大所帯だ。冒険者だけでも123名いるし、その家族まで含めると2百はくだらない。

 すでに一つの村と言ってもいいくらいの大所帯だが、仲良くやっている。何よりも仲間を大切にする。

 だから……うちに来てくれ……仲間たちに裏切られた今のお前さんの、心が癒されるまででもいい。


 当面の間だけでもいいから、うちで静養がてら若いもんの面倒を見てやってくれないか?お前さんだったら、いいお手本になると思うよ。」


 サーティンはまたまた、自分のチームに入るよう勧めてきた。その言葉の一つ一つが……イチの胸に響いてくる。イチの置かれた境遇を考慮して、ただやみくもに強要してこないことが、サーティンの心根の優しさをうかがわせた。それでもイチの心は、サーティンの好意を受け止められずにいた。


(おいおい……即決じゃあないのか?ずいぶんと有り難いお誘いだぞ?暫定でもいいって言ってるんだから、とりあえずお世話になりますって、答えておけよ!)


(………………………………………………)


(おいっ、まあた無言かよ……自分に都合が悪くなると、思考も停止しやがるようになったな……。

 だがまあ、心を閉ざす瞬間までのお前の気持ちはある程度伝わって来たから、おおよそ推測は付く。


 イチのチームが鬼畜と称されたチームであると見て、まあ間違いないだろう。百歩譲って鬼畜行為が意識的に行われていたかどうかは、まだはっきりしてはいないとしても、噂の対象であったことは間違いない。


 お前は知らないうちに鬼畜と呼ばれるチームに参加していた……というか、お前がいたチームが鬼畜と呼ばれるチームに、成り下がったということだろうな。


 しかも……家族同然に育った仲間なんだよなあ……兄に弟に妹……そんなふうに思っていた兄弟たちに裏切られていたとは……何とも不憫だよなあ。そんな非情というか、狂暴な奴らだったのか?)


(………………いや………………)


(ふうむ……表向きは普通の冒険者を装っていたわけだよなあ。そうじゃなきゃ募集しても研修生だって、集まってこなかっただろうからな。同じチームの……親しいイチにも分からないように……なあ……。


 それでもおかげで、ずいぶんとイチだって助かっていたはずだぞ!非道な行いをしていなければ、お前の負担はさらに大きくなっていたはずだ。それこそボス魔物の相手だって、イチ一人に任されていたのかもしれない……もちろんその周辺の雑魚魔物含めてな……。


 だとしてもお前は恐らく、仲間である兄妹たちに不平を言わなかっただろう。だが向こうのほうが、お前に遠慮……というか、お前ひとりでボス魔物まで相手をするのは無理と判断して、生贄という手段を講じたのだろう。自分たちがほとんど戦ってないのがバレても気まずいし、なにより本当のことは言えないからな。


 生贄使わなければダンジョン攻略できないなんて知れたら、お前なら絶対ダンジョンへ出向くのを反対しただろうからな。お前の性格は、仲間たちははっきりと見抜いていたわけだな……。


 そうか……研修生の扱いが悪いと、兄であるゼロに不平を言い始めたところだったんだな?心を閉ざそうとしても、おれの言葉に反応して断片的に記憶がよみがえるのが伝わってくるぞ。


 そうだよな……辛い下積み生活しなくて済むように研修生として経験を積ませるって謳い文句で受け入れているのに、結局荷物持ちと食事当番じゃあ意味がないよな?ダンジョンの空気だけ味あわせればいいってもんでもないわけだ。剣の指導をしたり、たまには弱い魔物と戦わせてやらんとな……。


 だから……途中で逃げ出すんだろうとお前は思っていたのかもしれんが、実は違ったわけだ。


 それでもゼロは休みだって与えているし、手当だって払っていると主張していたわけだな?そりゃそうだろ、ダンジョン以外では、いつも家に籠っているお前が炊事当番から掃除に洗濯まで一手に引き受けていたんだからな。ゼロ達はせいぜい買い出しだけしていればよかったんだから、研修生は自由だわな。


 お前にあんまり騒がれると、チーム事情を研修生たちに悟られるかもしれないと考え、お前を排除することにしたのかもしれない……お前も心の中じゃあ納得してるんだろ?今回のクエスト前にも……ずいぶんとゼロとやり合ったようだな?それが引き金となったのかもしれんよな……・。


 だから……薄情な仲間のことは忘れて……ここでまた仲間を作ればいいさ。ご面倒をおかけしますが、厄介になりますって言って、頭を下げろよ!)


「…………………………」

(どうした?あくまでも仲間を探して回るなんて言い出すんじゃあないだろうな!)


(仲間……行方不明……探す……当たり前……。)


(ほんとの気持ちはそんなんじゃあないだろ?新たに仲間を作るのが怖いんだろ?また裏切られるんじゃないかと、心配しながら付き合うのが嫌なんだろ?……そんなのは……お前次第だろ!大体だな……お前が家族と思っていた、ゼロ達……同じ孤児院で育った仲間たちと……お前はどれだけ親密だったんだよ!


 いつも行動を共にして……なんでも話し合っていたのか?そんな訳ないよな……鬼畜と称された所業だって、お前には内緒で行っていたんだからな……少なくとも仲間のうちの何人かは、お前と心を通わせていなかった……ということだ。だがそれは……相手が悪いのか?お前のせいでもあるんじゃあないのか?)


(おおお……俺の……せい……だと……?)


(ああそうだ……人と人とのつながりだからな……相手に起因することもあれば、自分に起因することだってあるはずだ。お前はどうにも……相手に心を開こうとしないようだからな。


 お前の中に入っていても、考えが読めないことがあるからな。そんな態度を普段からとっていたなら相手だって……お前に自分のすべてをさらけ出すということには、行かないだろう。

 そもそも……クエスト以外でイチの兄妹たちとの思い出って、何がある?)


(お……思い……で?……………………)


(ほら見ろ……子供のときだって、孤児院にこもりっきりでゼロ達と違って遊びに外に出ることもなく、一人部屋の隅っこに隠れるようにしていたんじゃあないか。


 冒険者になってからでも辛い修業時代の思い出のほかは、ダンジョンへ挑戦した時と時々逃げるようにして引っ越しをしたくらいの思い出しかないじゃないか。


 たまの休みに食事に誘われてもイチだけは一人で部屋に籠って、携帯食の芋や干し肉かじっていたんだな?そんなんで人との付き合いができていたと思っているのか?)


(いや……だだだって……)


(そうだな……修業……訓練だな?冒険者として必要だし、朝早く起きたいから夜遊びはしたくはない……それも分かるよ。だけれども……お前の仲間だってたまには外で食事をしたいと思ってもいいだろ?いつも食事を作っているお前に、楽させたいという気持ちだってあったのかもしれないぞ。


 それなのにお前は折角の誘いを断って、自分は前回のクエスト時に準備した干し肉でもかじっているからいいとぬかすわけだ……。外で飯食いながら下らない話なんかしたことないだろ?ダンジョンへ出向く以外は遠出だってしたことがないんだものなあ。何が楽しみで生きているんだって、思われていたんだろうな。


 ゼロとニイは……お前もそうだろうが、お年頃なんだろ?彼女はいたのか?彼女というほど親しくなくても、女友達は何人いたか知っているか?サンやヨンだどうだ?どんな友達を持っていた?


 家族と思っていた仲間たちの私生活のこと……何か知っていたか?そりゃあ、お前が料理当番だから食べ物の好き嫌いは知っているみたいだが……そのほかにどんな趣味を持っているとか、流れ者の冒険者だが、将来どの町で住みたいと思っていたとか……あるいはどんなことで悩んでいたとか……知っていたか?


 もしお前が仲間たちと親密な間柄であったなら、もしかしたら鬼畜と呼ばれるような最低の行為に及ぶ前に、お前に相談してきたかもしれないぞ!魔物たちと対等以上に戦うことが出来れば、人の道を踏み外すこともなかったはずだからな。そうしてお前は十分以上に強かった……それなのにどうしてお前に相談しなかった?)

 心の声の問いかけの意味を、イチは理解できかねていた。


(どどど……どうして……?)


(お前が自分だけの殻に閉じこもって、誰とも心を開こうとしなかったからだろ?下手にお前に相談して、まともに戦えないんだったら冒険者やめろとか、寝る間も惜しんで訓練しろとか言われたらどうなる?


 ゼロやニイは、お前と一緒に修業したんだろ?それなのに……お前の記憶の断片では、奴らがまともに戦っている姿は見当たらない……戦えないのか戦おうとしないのか……どちらにしても、お前ほどの腕はなさそうだ。才能がないと言ってしまえばそれまでだが……彼らだって、好きでそうなったわけじゃないだろ?


 腕がなければ初級冒険者として攻略済みダンジョンの再解放だけを狙って、魔物肉と毛皮だけでささやかな生活をしていけばいいのだろうが……大半の冒険者がこういったレベルなんだろ?


 ところが……もっともっと上級の腕を持った奴が仲間にいるから……欲が出てしまうわけだ。同じように修行していたわけだから、同じレベルで戦えるはずと思ってしまうわけだな?


 中級ダンジョン以上ならお宝満載で稼ぎも大きくなるが……ボス魔物がいるから簡単には攻略できない。頼みのお前だって、さすがにボス魔物含めてダンジョン全ての魔物相手はできそうもない。


 だったら……どうする?お前に陽動作戦を取らせてダンジョンのあらかたの魔物を惹き寄せさせておいて、自分たちはボス魔物とその周辺の魔物を相手にするからと役割分担……ところが実際は、奴らは生贄を差し出してボス魔物の気を惹いておいて、お宝だけゲットして逃げ出していたんだ。


 お前がきちんと仲間たちと通じ合ってさえいれば……鬼畜と呼ばれる行為は起こってなかったのかもしれないぞ。)


(じゃ……じゃあ……どうする?……どう……すれば……いい?)

 イチは悲痛な面持ちで、心の声に問いかけた。


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