中学3年編②
お待たせしました(^O^)
誰も待ってない?
知ってます(T_T)
頭が痛い…
酒を飲んだとか変なクスリをしたとかの如何わしい理由ではない。
俺たちは数時間前に中学最後の試合でまけた。テンションがもう落ちるところもないくらいまで落ちていた。
宿舎に戻る道中のバスの中なんてもうお通夜だろうと思うくらい誰も喋らなかった。
今日はここでもう一泊して明日変える予定になっている。こんな雰囲気の中でもう一泊なんてただの拷問だと思っていた。
しかしそうはならなかった。
祝勝会用に用意されたであろう豪華な料理を前にすると今までのテンションが嘘のようにドンチャン騒ぎに突入していた。
ちょっと単純過ぎないかとも思ったが中学生なんてそんなもんなのだろう。
切り替えというか忘却力というか……そのテンションはどこからくるんだというくらいはしゃいでいる。
でも先ほどのような空気なら今の方がマシかと自分に言い聞かせながら遠巻きに眺めていた。
(俺もこれだけ単純ならもっと楽に生きれるのにな…)
なんか達観しているようなことを言っているが俺はまだ15のガキだと言うことも自覚している。周囲の人間がおかしいだけなので自身を俯瞰して見てしまうようになっていた。
自身に浮かんだ思いに『何をいってるんだ』とセルフツッコミを入れながら今度は反対の方向をに目を向けると大人たちがビールを飲みながら今日の試合の感想を言い合っているところだった。
「今日の貴史君は凄かった。」
「もっと打線が援護しないと。」
「エラーさえなければ。」
などと大変盛り上がっている様子である。
聞き耳をたてている限りでは貴史のことを称賛しつつ他のメンバーを軽くディスっているという感じだ。
(はぁ~……また始まった。)
このような祝勝会、残念会があれば必ず同じような光景が飽きもせずくりひろげられる。そんな中で貴史の母親はいつも引きつった笑顔で受け答えしている。
自分の子供が誉められるだけならばそれは誇らしいことだろう。しかし不可抗力だとしてもその為に他人の子供が多少なりとも貶されているのを聞かされればあのような顔にもなるだろう。酒も入ってその場の雰囲気もあるだろうがもう少し自重してほしいものだ。
そんなルーティンのような光景に辟易して飲み物を持ち一人会場を抜けようとすると貴史が話しかけてきた。
「今日はお疲れ。」
「ああ、お前もな。」
こいつはいつも図ったように俺が行動を起こすタイミングで声を掛けてくる。
「今日は勝たせてやれなくて悪かったな。」
今日の試合について言えば最後に気が抜けて細部まで気が回らなかった俺のミスだ。
「最後のことか?そりゃ、あれだけ真ん中に投げたら打たれて当然だろ。」
「いや、辻くんに集中するのは仕方なかったことだけど次の坂本くんの前に間を取るべきだった。」
辻くんを打ち取った時は上手くいったという高揚感で浮かれていた。その後にだしたサインすら今にして思えばなぜそんな入り方をしたのかも疑うレベルだ。
猛暑?高揚感?
言い訳ならいくらでもよういできる。
でも今はただただ申し訳ない気持ちしかない。
「俺も最後はなんも考えないで投げちまったからな。」
「…………………」
「なんだよ?」
「スマン。貴史が何か考えて投げているなんて思ってなかったからフリーズしてた。」
脇腹を殴られた。
痛い…
ガカイがいいから小突く程度でもそれなりの威力がある。それに貴史はリードを俺に丸投げしてるんだから投げることしか考えてないと思っていても不思議じゃないと思う。
「俺だって少しは考えてるよ。」
「そのわりに丸投げはするんだな。」
また殴られた。
痛い…
しばらく話していると他のチームメイトに貴史が呼ばれたので向こうの輪に加わるべく貴史は俺から離れていった。
ようやく一人になれたので気づかれないようにホールをでた。
(あの様子だと後1時間は続くだろう。)
そう思いレストルームにある自販機で缶コーヒーを買いロビーのソファーに腰をおろした。
時間を潰す為に最近マイブームのネット小説を読もうとスマホを取り出すとlainにメッセが来ていることに気が付いた。
(これは見たらダメなやつだな。)
スルーすると後で大変な思いをすると思いながらどうやって知らなかったことにするか考えているとポコポコポコポコと嵐のように新着の通知がスマホから鳴り出した。
なぜかここにいてはマズいという直感と上手い言い訳を考えるためにホテルを出ようとスマホをポケットにしまい入り口を目指しているといきなり肩を掴まれた。
「どこに行くんだ?」
「散歩だ。少し夜風に当たりたくてな。」
肩を掴んでいる奴なんて振り向かなくても声だけで貴史だとわかった。
(つうか、イテーよ!……どんな力で掴んでんだよ!)
絶対に逃がさないという意思の現れだろうか、全く逃げれそうにない。
ハンズアップの姿勢をとり降参の意思を示すとようやく掴んでいた手を離してくれた。
渋々ながら振り返ると貴史はスマホを俺の目と鼻の先に突き出してきた。
(近すぎて文字がぼやけて見える。)
これは貴史なりの気遣いだろうと内心感謝していると気付いた貴史がスマホをゆっくり俺の顔から遠ざけた。
(あ~……やっぱり世の中は俺に優しくないんだ……)
そう思った瞬間、俺は膝から崩れ落ち視界が涙でぼやけだした。
それでも貴史は無慈悲にメッセを読んだ。
「『今すぐ圭吾を見付けてこい!』だってさ。」
「…………………」
「友理からlain着てるんじゃないのか?」
「部屋に置きっぱなしだから知らなかったわ。」
ここはスマホを持っていないという体で乗り切るべくすっとぼけた。すると貴史がスマホを操作して1枚の写真を見せた。そこには先ほどまでの俺の後ろ姿が鮮明に写っていた。
「だったらこいつを有里に見せても問題ないな。」
「お願いします!見捨てないで!」
気が付くと俺は貴史の足にしがみつき涙まで流していた。
「気持ち悪い!離れろ!」
貴史が足を動かそうとするがおれは離してたまるかと必死にしがみつく。
ロビーにいた他の宿泊者は哀れみや好奇の目を向けていた。
確かに傍目からは男が男の足にしがみついて泣いているというなかなかに怪奇な現場に居合わせたのだからそのような目を向けたくなるのも解る。
そんな周囲の目すらも無視できるくらい今の状況は悪い。
なぜならば友里はメチャクチャ怖い。鬼か修羅の化身じゃないかと疑うくらいに怒らせると恐い。
「まだ死にたくない!」
「それは言い過ぎだろ。」
「小学5年の時にあいつを怒らせた中学生3人病院送りにしたじゃないか!」
「…………………」
「お願いします!なんか言って!」
「葬儀にはでるわ。」
「死ぬことが確定してる!?」
「まぁ、冗談はこれくらいにして……」
今だに足にしがみついている俺を放置してスマホをイジリだした貴史を見てとてつもない悪寒が走った。
貴史のスマホを取り上げるために立ち上がり手を伸ばすも軽くかわされてしまった。
「お前何してやがる!」
「幼馴染と連絡を取っているだけだが?」
「俺が死んでもいいのか!?」
「よし!完了。」
こね状況を逃れるべく思考を巡らせると俺は天啓を得た。
(スマホ壊せばいんじゃね?)
天啓に従うべくスマホを取り出し投げ捨て力の限り踏みつけようとした。
だが、足が届かない。遠くに投げすぎたとか足が短すぎたとかいう恥ずかしい理由ではない。
貴史が俺を羽交い締めにしているからだ。
「は、離せ!俺は今すぐあれを壊さないといけないんだ!」
「頭、大丈夫か?」
バタバタと暴れるもビクともしない。身体能力で勝てないとわかっていても拘束を解かなければ俺の安息はない。
時間だけがムダに費やさた。
そしてスマホから死刑宣告を告げる『ポコン』という機械音が響いた。
「友里からだろ。早く見ろよ♪」
貴史は俺をそっと離し楽しげに話しかけてきた。
(もう逃げるしかない……)
俺は回れ右して駆け出そうとしたが再び肩を掴まれた。
(デジャブかな?それよりも痛いんだって!)
左手で俺をつかみ右手で俺のスマホを操作しだした。
「ロック解除できなきゃ見れないぞ。」
これが最後の砦だ。
見なければ知らなかったことにできる。
言い訳は後で考える。
「おっ!出来たぞ。」
「なぜに!?」
「指の動き覚えてたからな。その通りに動かしたら出来たわ。」
(なにこの子………怖いんですけど!)
「やっぱり友里からだったぞ。」
「勝手に見ないでくれます?」
「そんなに怒ってないっポイからさっさと返事してやれよ。」
そう言って貴史はスマホを俺に渡しロビーを後にした。
怒ってないと聞いたので俺は胸を撫で下ろした。そして内容を確認するためにスマホを見た。
天を仰いだ。
俺は慢心していた………安堵からか知らい内に油断していたのだろう。
気づくべきタイミングならあった。
貴史が内容を口にしたときに……この場から去っていったときに……だ。
もう一度確認するためにスマホに目を向けた。送られてきたメッセが見間違いであることを祈りつつ。
『直ぐにlainしろ。殴る。』
しかしそんな都合の良いことは起きなかった。
そして思った。
(殴ることは決定事項なんですね。)
書いてみたくて書き始めたのですが構成とか考えて書けているときはメチャ楽しいです!
でも自分の語彙力のなさや表現力のなさにすごく凹まされてます(>_<)
これからも拙い文才を披露しますが今後ともヨロシクお願いします!