可愛い彼女が欲しいな
いつものように、なろうを読んでたおっさんは、妙な広告を見つけた。
君も異世界へ行こう。剣と魔法の世界でフィバー。
とうとう広告まで異世界か。異世界大好きだな。なろう。
俺もだけど。
もちろん信じてはいないけど、とりあえず広告を押してみた。
東京某所に明日集合か。暇はいっぱいあるけど、金が惜しいな。
思い切って行った。そう、俺は騙されてでも異世界に行きたかったのだ。
東京某所には大勢の人が居た。馬鹿ばっかりだ。こんなのインチキに決まってるのに。中学生ぐらいの男女が多くて、おっさんもそこそこ居た。いい歳をして、いつまで中2をやってるんだか。情けない。
某所の公園には、大きな魔方陣が描いてあった。その真ん中には、いかにもな服装の魔法使いみたいなジジイが居た。
「それでは皆様。異世界へ行きますぞ。くれぐれも確認しますが、一旦異世界へ行けば、二度とこの世界に戻ってこれなくなりますぞい。それでも良い方はどうぞ魔方陣の中に入るのじゃ」
俺は迷わず魔方陣の中に入った。他にも何人も魔方陣の中に入って来た。
「それでは異世界へGO」
「地球からお越しの勇者様方。ようこそユーロシアへ」
おいおい。本当に来ちゃったよ異世界へ。
周りは王族見たいのや、貴族みたいのや、騎士みたいのや、魔法使いみたいのがいっぱいいて、宮殿みたいな場所で、宰相みたいなおっさんに、テンプレなセリフまで言われたよ。
「とりあえず皆様。ステータスオープンと言って、自分のステータスを確認して下さい」
「ステータスオープン」
俺も周りの人達も、みんなが同じセリフを言った。
「どなたか勇者とか聖女とか剣聖とか賢者とかは居ませんか?」
「あっ俺。勇者です」
「私。聖女かも」
「剣聖でござる」
「賢者ですね。僕が」
俺のステータスは微妙かなぁ?
「それではその四名の方は、我が国シベリで優遇します。それ以外の方は、この世界ユーロシアの、我が国以外の各国と交渉して下さい。交渉が失敗した場合は、金貨10枚を支給しますので、自由にこの世界で暮らして下さい」
宰相みたいなおっさんがそう言うと、俺たちの周りに居た貴族みたいな人達が、俺の周りの人に声を掛けて来た。
この国以外の人も、この場にいっぱい集まってたみたいだ。
貴族みたいな人達は、若い男女に声をかけていた。
俺たちおっさんは無視かい。
しばらくすると、人の流れは落ち着いて、俺たちおっさんだけがその場に残った。
それで並んで金貨10枚をもらって、俺たちは宮殿から街に出た。
見ず知らずのおっさん同士が、急に仲良くなるはずもなく、俺たちはバラバラになって自分の道を歩き出した。
可愛い。可愛い。可愛い。この子もあの子もその子も
みんな可愛い。異世界はまるでアニメの世界のように、可愛い女の子だらけだった。
本当に異世界に来て良かった。
しかしこのままでは金が少ない。ここは当然、冒険者ギルドだな。
でもここまでテンプレだと、アレがありそうだな。
やっぱりあった。冒険者ギルドでいきなり絡まれて殴られて、俺は吹っ飛んだ。
痛ってえ。
「キュア」
おお。痛みと腫れが引いた。魔法が使えた。
日本の都市伝説、合ってたな。
おっさんでも清い体で良かった。
「そこのデカイおじさん。弱い者イジメは許しません」
紺色の髪の美少女が、俺を殴ったおっさんを指差してそう言った。
「はあ?なんだ姉ちゃん。俺とヤりたいのか?」
見えなかった。
美少女の、おっさんを蹴り飛ばした型だけが、そこに残ってた。
おっさんはギルドの外まで蹴り飛ばされていた。
「大丈夫でしたか?」
「はい。キュアが使えるので、それで治しました」
「そうなんですか、凄いですね。キュアが使える冒険者は、少ないです」
「使えて良かったです。でもそれより先ほどは、助けていただいてありがとうございます」
「イジメダメ。絶対です」
「はい」
紺色の髪の美少女は、もう目が潰れるかってほど綺麗で、まともに見る事が出来なかった。それでもチラ見しまくると……
少女モデルみたいな細いスタイルは、抱いたら片腕だけで一周出来そうで……
そのウエストは、俺の両手の指で作ったワッカに収まるぐらい細くて……
艶のある髪は、思わず触りたくなるぐらい滑らかそうで……
あとは神々しくてよく見れなかったけど、とにかくめちゃくちゃタイプの美少女だった。
「あの。私の顔に何か付いてます?」
「いえ、そんな事はないです」
「顔真っ赤ですけど大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」
なんか、このままでも充分幸せだよ、俺。ありがとう異世界。
「あの、何か冒険者ギルドに用事があったのじゃないですか?」
「はい。登録に」
「それならあちらの窓口ですよ」
美少女に教えてもらった窓口に行くと、そこには受付嬢が居た。まあ普通に美人だけど、それだけだな。紺色の髪の美少女とは、まったく比較にもならないや。
受付て貰って、俺は冒険者になった。今日は他にも冒険者登録のおっさんが何人か来たらしい。
他のおっさん達、俺がテンプレな目にあってる間に、テンプレスルーしやがったな。ラッキー野郎達め。
冒険者の内容もテンプレで、ランクはSABCDEFで、一つ上のクエストまで受けれて、ランクが上がるのはポイント制でBランクからは強制依頼ありの、試験ありってことだった。