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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第80話 事後処理すんぞ(1)


空高くに鎮座する月が明瞭な光を翔太達のいる崩壊しかけたギルドハウスに送ってくれる。

ショウは拷問の際に外されていた刀と初日にフィオンに貰った鞄を探す。

刀と鞄は部屋の片隅に投げ捨てられるように置かれていた。拷問で服が破れ腰みのみたくなったズボンに刀と鞄を取り付ける。

そして戦闘中からずっと前から気になっていた人の気配のする方へ視線を向ける。

 この視線の存在には心当たりがある。此奴のためにショウはフローラ達を見捨てなかったと言っても過言ではない。


「おい、そこの覗き魔、出て来な!」


 出て来ない事を確認し右拳に力こめ殺気を全身から放出させる。最後通告をすることにしたのだ。


「俺がこの部屋に入ってからずっと覗いていたのは分かっている。

もう一度いう。出て来い! 出て来なければさっきの馬鹿悪魔のように苦しめてから殺す。楽に殺されたいならさっさと出てこい!」


ショウの殺気が膨張をする。もはや人間が発するものとはとても思えない殺気にギルドハウス全体がビリビリと震える。

すると瓦礫の山の陰から人影が月光を受けてこちらに来るのが視界に入った。仮にもマンティコア達に気付かれなかった隠密スキルだ。ショウの読み通りなら十中八九、安全だろうが、用心には越したことはない。いつでも殺せる準備はしておくべきだろう。

ショウは右拳を固く握る。

 

現れたのはショートカットの青髪の女だった。女は出鱈目に輪郭の整った一見男のようにもみえる美女だ。身長は170cm位で女にしては若干背が高い。だが身体は無駄な贅肉などなく戦闘に特化するよう引き締まっていることが黒い上下の服の上からでも窺えた。


「女か……」


 見た感じショウの脅威となる圧は感じない。人間種のレベルに留まっている。ならば危険を冒してまで密偵の真似事をする必要がある者など限られている。

 

(デリックの野郎の指示か。これほどの女を戦場に送り込んで来るとは、ヴァージルの件でよほど肝が冷えたと見えるな。

まあこれでギルドと敵対することもなくなった。あとは――)


 ショウはすぐに殺気を解き、まだ瞼を閉じ、耳を塞ぎしゃがみ込んでいるフローラに視線を向けようとするが、女に呼び止められる。


「俺が女だと良く分かったな。一目で見破ったのはお前が初めてだ」


「馬鹿にしてんのか? テメエのようないい女、男に見間違うわけねぇだろう」


 ショウの言葉に若干当惑気味に話を続けるショートカットの女。


「そうはっきり言われても俺もリアクションに困るんだがね。まあいい、それで俺を殺さないのかい?」


ショウは心底鬱陶しそうにショートカットの女を眺める。


「殺す? なんだ? テメエ俺に喧嘩売るのか?」


 ショウに喧嘩を売って来るならギルドの諜報員だろうと容赦はしない。

 血が凍るような鋭い視線をショートカットの女に送るショウ。ショートカットの女は再燃した翔太の殺気に当てられて若干焦っているようだ。


「違う! 俺が出てきたら楽に殺すと言ったのはお前だろ? 自らの発言くらいもっと責任をもってくれ!」、


「そういやそんなことも言ったな。面倒くせぇから殺さねぇ。以上! 分かったらさっさと消えな!」


「お前、とんでもなく自己中な奴だな。本当に部屋に入って来た時と同じ少年か?」


この問いかけはショウの逆鱗に触れる。

フローラに向けていた視線を逸らし、額に青筋を浮かべながら肩越しに振り返りショートカットの女に射殺す様な視線を向ける。


「あぁ? それがテメエに何か関係があるのか?」


 今まで抽象的だった殺気が具体的に自らに向いたことに驚いたのか額に大粒の汗を浮かべる。


「っ!! お前の怒るポイントが俺には分からない。俺を殺すのか? 無駄でも全力で抵抗させてもらおう」


「だから殺さねぇって言ってんだろ? いい歳して、一々殺気程度にビビッてじゃねぇよ!」


 ショウのこの言葉にショートカットの女から表情が消えた。凄まじい怒りが眉の辺りに()っている。


「俺はぁ――!」


 ショートカットの女のあまりの迫力に若干押され気味になるショウ。


「お、おう」


 どもりながら答えるショウ。


「俺はまだ一九だ!!」


「そ、そうか。それは良かったな」


 ショートカットの女が何を言いたいのか全く分からずとりあえず頷いておく。


「…………」


 ショートカットの女は無言でショウを睥睨したままでいる。

話を切り上げる事にした。時間も押しているのだ。ここで翔太に出て来られるとまた途轍もなく面倒なことになるのだから。


「もういいか? 俺も忙しい」


「……お前が俺を呼んだんだろう!? ホント自己中心主義の権化のような奴だな! キレるポイントもよくわからんし」


ショートカットの女は未だに怒りが収まらないのか、眉間に電光を走らせ肩を震わせている。

 キレるポイントがわからないのはお互い様だ。兎も角、もうこの女と話すことはない。目線をフローラに向けて歩き出す。

ショートカットの女は舌打ちすると全身で怒りを体現しながらも崩壊した第一会議室を退出して行った。


 お読みいただきありがとうございます。

 

 

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