表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
87/285

第77話 絶望のカーニバル(2)


『イッツ・ショウタイム!』


 マンティコアが指をパチンと鳴らして宣言の合図をすると同時にオークエンペラーモドキが右手にもつ巨大な斧で翔太を縦断すべく対象を真上から垂直に斬り下ろす。

 爆音をあげ空気を切り裂きながら迫る真赤な斧はまるでオークエンペラーモドキの狂気を象徴するようでもあった。


 キィィィィンッ!


 翔太が刀でその斧を受け弾こうとするが、予想以上の強さの攻撃に踏ん張り切れずバランスを崩し床に膝をつく。オークエンペラーモドキは眼を血走らせ涎をだらしなく床にたらしながら翔太を切断しようと斧の持つ手に力を入れる。ギリギリと刀と斧が鬩ぎ合う。


(力の強さだけならウコバクを遥かに超えている。でもこの程度ならまだ!)


 翔太は左手を柄から離し右手の刀でオークエンペラーモドキの斧を受け流す。右脚を軸にして身体を独楽のように高速で回転し発生した遠心力を利用し強烈な左回し蹴りをオークエンペラーモドキの頭部へ繰り出す。


 ドゴォォォッ!


 ミサイルが着弾したような凄まじい爆発音を轟かせて翔太の左脚の脛がオークエンペラーモドキの眉間に衝突し弾丸のような速度で床に何度もぶつかりながらも吹き飛んでいく。

 オークエンペラーモドキは壁に衝突するかと思われたが空中で回転し態勢を整え壁に足をつけ翔太にその顔を向ける。壁に蜘蛛の様に張り付き大きな口を開けるオークエンペラーモドキの姿を見たとき翔太は体じゅうの血が凍るような悪寒に襲われた。

 すぐに【水龍】を全力で発動しオークエンペラーモドキにぶつける。


 ズドオォォォォッ!


 オークエンペラーモドキの口から放たれた朱色の光線はオークエンペラーモドキに迫り狂う水龍を呆気なく破壊し翔太に迫る。だが【水龍】によりわずかに軌道を変える事が出来たようだ。

 朱色の光線がギルドハウスを消し飛ばし大穴を開ける。

 翔太は身をよじって躱すことで致命傷は避けられたが、左上腕の大部分が抉れていた。背骨に杭が打ち込まれたような激痛に思わず顔を顰めながらスキルラーニングの際の負荷に襲われる。思わず膝を床につきそうになるが歯を食いしばって耐える。

 ここで隙を少しでも見せれば即死亡だからだ。


「お兄さん。僕の作品最高でしょう? 名付けて『レーザー光線を照射する豚』!」


 得意そうに胸を張るマンティコアに、控える2柱その他の5柱の悪魔達全員が拍手する。この異常な話に全くついて行けない翔太は激痛に顔を歪めながら刀をオークエンペラーモドキに向ける。


(左腕が治るまで数分必要。それまで豚の攻撃をいなして戦術手段を出させ切り相手の力量を測る)


『BMOO――――!』


 オークエンペラーモドキは咆哮をあげながら翔太に地響きをあげながら接近し斧を叩きつける。翔太は刀で斧を柳の様に受け流す。


 ドゴォ!


 受け流された斧は床に轟音とともに突き刺さり木製の床は呆気なく粉々の木片となりあたりに飛び散る。同時に真赤な斧から無数の触手が途轍もない速度で伸びて翔太を串刺しにせんと迫る。その触手をバックステップでかわそうとするが、真赤な触手は誘導ミサイルのごとく翔太を追尾してくる。舌打ちをしながら刀で無数に迫る触手を切り刻む。


(あれマジックアイテムの類? くそ! レーザーだけでも十分厄介なのに離れたらレーザー、近ければ斧の触手。これじゃあ嬲殺しだ。でも今は耐えるしか選択肢はない)


 それから翔太は近距離から中距離を維持しレーザーを打たせないようにだけ注意を払った。レーザーの威力は翔太の腕をいとも簡単に抉り取るくらい強力であり一撃でもまともにヒットされたら身体の大部分が破砕しそうだ。

 だがレーザーは一瞬照射までに一呼吸いる。だから中距離以下の距離で闘っているうちは打たれる心配はないのだ。触手も十分脅威的だが一撃で戦闘が終了することはない。少なくとも急所を外すくらいは容易い。

 こうしているうちに、左腕が完全回復した。オークエンペラーモドキを蹴りで後方へ吹き飛ばす。翔太は勝負を決めることにした。


(オークエンペラーモドキの戦い方と実力は大体把握した。今の僕ならスキルを上手く使えば勝てない相手ではない。ここからが僕のターンだ)


「へえ~! お兄さん回復スキル持ってるんだ。しかも僕達悪魔クラスの回復力? う~ん。お兄さん本当に人間? 益々お兄さんの事に興味が出て来たよ」


 翔太はその言葉に答えず刀から左手を離す。オークエンペラーモドキは部屋の中央付近。翔太は部屋の端にいる。非常に良い位置だ。


「《悪魔の鋭爪》!」


 左手の5本の爪が超高速でまるで翔太の意思を具現化したかのように伸長しオークエンペラーモドキに襲いかかる。オークエンペラーモドキは身体をねじって避けようとするが、右肩が根元から切断された。

 すぐにオークエンペラーモドキの右肩からボコボコと肉が盛り上がり腕を形成していく。異常な回復力をみせるオークエンペラーモドキであったが翔太が《悪魔の鋭爪》を使った理由はオークエンペラーモドキを傷つけることではなく、一か所に追い込むことにあった。

 オークエンペラーモドキが躱すと予想した先に翔太は力を振り絞って先ほどラーニングしたスキルを発動させる。


「《朱色の光弾》!」


 オークエンペラーモドキが作った光線の数倍もある朱色の光の束がオークエンペラーモドキに迫りオークエンペラーモドキの上半身を丸ごと蒸発させた。


(いくらなんでもこれだけやれば動けるようなるまで数分かかるはず。いくら超回復があっても悪魔達と倒し方は変わらない)


 《灼熱の炎弾》を使おうと左手の掌をオークエンペラーモドキに向ける。


「これで終わ――」


 翔太が言い終わらないうちに翔太の左腕が肘のところから千切り飛ばされた。全身に稲妻のような痛みが走る。

 それが驚愕によるものか、気が狂わんばかりの苦痛からくるものか今の翔太には判断は不可能だった。今にも床に転げまわりたい狂わんばかりの痛みを堪え、マンティコアを睨み付ける。マンティコアの右手には翔太の腕が無造作に掴まれていた。


「お兄さん。すごいよ。すごい。お兄さんの力、スキルを合わせれば僕の側近のガス、ガイと同レベルだ。まさか《朱色の光線》まで使えるとはね。

間違いないお兄さんはこの世界の人間最強だ。僕が保証するよ」


「契約破ったね?」


 翔太は喉から絞り出す様に怨嗟の声をあげ、マンティコアを睥睨する。


「契約? 嫌だなあ~。一度儀式契約したら契約内容は破れないっていったでしょ」


 マンティコアの口角が吊り上がり顔に嘲笑を含んだ歪んだ笑顔を浮かべる。


「嘘だ! 今君が戦闘に参加したじゃないか?」


「僕が手を出さないなんて契約内容のどこにも載っていないよ。ガス、ガイ、契約内容にそんな内容載ってた?」


 燕尾服を着た2柱が嫌らしい笑みを浮かべ答える。


「いいえ。契約内容は人間と実験動物とが勝負し勝った方が一度の命令権を持つしか記載されておりません。助人が駄目などどこにも」


(っ!! ちくしょう……完璧に騙された。こんなの詐欺師の常套句じゃないか! こんな単純な手に引っかかるなんて……僕の馬鹿野郎! 最初から勝ち目なんて零だったってことか……)



「さて、もうお兄さんの実力は分かった。お兄さんももう負けでいいでしょ? まだやるなら僕がやるけど?」


 マンティコアの目が真紅に染まり常人ならば今にも気絶しそうなむせ返るほどの殺気が部屋中に立ち込める。


(ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! こんな下種に僕は負けたのか……)


 翔太は敗北を知りマンティコアに向けていた刀を下げる。満足そうに笑みを更に深める。


「勝負は決したね。じゃあ僕のお兄さんに対する命令何にしようか? ガスとガイがいるから奴隷はいらないし。僕の言う事に逆らうなはどうかな? でもこれだと漠然としすぎてて効き目が弱いんだよね。効き目が弱くて途中で発狂されてもつまらないしさ。久々のおもちゃだし……うん、決めた。僕の命令は『決して狂わない事』。これにしよう!」


 翔太の身体が発光し契約が執行される。だが別途以前と違いがあるとは思えない。だが、この命令の凶悪さを翔太は直ぐに心の底から思い知ることになる。







 次のお話でようやく『俺』の登場です。お楽しみいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ