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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
78/285

第70話 エルフのお兄さんから事情を聞こう

 

 

 建物を逃げるように出てからまず翔太のやった事はポケットからギルドカードを取り出してスキルの確認したことだ。

【毒吐息】と【雷光】はスキルの使用回数が一回増えたに過ぎなかった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル

『毒吐息(第4級)』       8/16

『雷光(第4級)』        3/16


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ギルドカードをポケットにしまって周囲の探索を開始する。

 暫らくメガラニカのメインストリートを歩いて行くと元2班の面子が多数集まっているのが見えた。言い争いをしている様子だ。

 城門殲滅戦のときに翔太と思えないかなり強気の態度をとってしまったことからあまり2班の冒険者達とは関わりたくはない。だが流石に無視するわけにもいくまい。

 彼らに近づいていく。


「皆さん、お勤めごくろうさまです」


 冒険者達は翔太に気付くと頭を下げて挨拶をしてくる。今までとの強烈な態度の違いに戸惑いながらも言い争いの現場に近づいて行く。翔太が歩くとモーゼのように冒険者の人ごみに道が開く。


(うわ――このギャップ……頭も下げてくるし。マジ勘弁してほしい)


 言い争いの当事者双方が翔太の知り合いだった。

 一人はヘクターもう一人はラシェルだ。これで大体言い争いの内容が翔太には予想がついた。


(ヘクターさん。約束守っていただけたんですね。ありがとうございます)


 ヘクターと目があったので翔太は感謝の意も込めて頭を下げる。ヘクターはそんな翔太の姿にあたふたしていた。エルフの人間に対する態度としても、美青年のとる態度としても場違いなのは間違いがない。

 だが周囲は何の疑問も持っていない。その事実に城門殲滅戦でやり過ぎたことを痛感した。彼らが城門で何を見たのかを知ってしまったから。

ラシャルは翔太と目が合うと不機嫌そうに睨んできた。普段ならこの目に多少は心が動くはずなのだが、今はそんなことを言っている場合ではない。


「ラシェル、何を言い争っているの?」


 ヘクターではなくラシェルに聞いたのはヘクターと知り合いだと知られると後々ラシェルに翔太達の企みが露呈するかもしれないからだ。

 もっとも、翔太に射すような視線を向けて来たことからも薄々は勘付いているようではあった。


「女性の声が聞こえてアドルフ達、オークのボスの討伐のため、あそこの屋敷に入った。私達も行くべき」


 ラシェルの指さす方には大きな屋敷がある。翔太はこの屋敷を見たことがあった。入った事すらある。ギルドハウスだ。魔物の討伐の拠点が魔物の拠点となるとは何とも皮肉なものだ。

 兎も角、ギルドハウスなら内部構造も粗方把握はできている。

 1階が受付と酒場、武器防具屋、道具屋、魔物素材買取所などがある。

 2階は行ったことがないがおそらくは修練所かなにかだろう。

 3階は応接間や会議室となっている。


「誰があの建物の中に入ったの?」


「アドルフ、メイソンの竜人チームと、フローラ、ロニー、ハンナの人間チームです」


 翔太に敬語で答えるヘクターに冷や汗を流しながら、ラシェルを覗き見る。凄まじい形相で翔太を睨みつけてきた。悪巧みは今のへクターの応対で完全にばれたようだ。

 ヘクターももっと機転を利かせればよいのだが、彼は翔太を精霊王か何かだと勘違いしている。どうしても譲れない一線が彼にはあるのかもしれない。

兎に角、態々ヘクターが答えてくれた好意に甘えるとしよう。ヘクターがラシェルの代わりに答えてくれたのは、ラシェルでは私情が入って上手く返答できないと踏んだからだろうし。


 ラシェルはフローラとは仲が良くない。これは城門殲滅戦のときの2班の面々の態度から知ったことだ。

 ライバルのフローラが今回クエストの親玉オークの討伐のためにギルドハウスに入って行ったのだ。ラシェルからすればすぐに自分も討伐に参加したくて仕方ないはずだ。現にイライラして地面を靴で蹴っている。こんな仕草が子供の容姿をさらに子供に見せる。とても冷静に話せる状況ではない事は翔太もわかった。


(それにしてもオークのボスは僕が討伐する事になっていたのに勝手な事を……。

 この独断専行ぶり、フローラさんか……女性の声を聞いて我慢できなくなったんだろう。

 あの人、やや正義感が強すぎる。騎士等ならそれもいい。自身の命を信念に捧げるのが彼らの仕事なのだろうし。

 だけど僕らは冒険者。フィオンに教えられた冒険者像が真実なら僕らはただの正義の味方じゃない。実際に助けられなければ意味などないんだ。

だいたいオークキングのボスがただのオークキングの訳ないじゃないか。少し考えればわかるだろうに。

 僕との約束を守って、ラシェルをギルドハウスに入れないでくれたヘクターさん達のフォローもある。上手く話さないとね)


「オークのボスの討伐は僕がギルドから命を受けていました。

 僕が来るまで待てなかったんですか? 時間などそれほど変わらなかったでしょう?」


 翔太はわざと怒りの籠った声色で問い詰めるようにヘクターに言う。

 こうすればむしろ先に早まった行動を起こしたアドルフとフローラの方に責があり、止めたヘクター達には責任はない事になるからだ。ヘクター達エルフも翔太の意図を理解したのか話を合わせてくれた。


「私達もそう言ったのです。

 しかし、フローラが囚われている人達が心配だと頑なに主張しまして。私達では引き留め切れませんでした。申し訳ありません」


 ヘクターが頭を下げてくる。周囲の冒険者も翔太に賛同している者がほとんどのようだ。それだけ城門殲滅戦で翔太とレイナがみせた戦いはインパクトが強かったのだろう。


(こんなものかな。これならヘクターさん達が裏切り者扱いされる事もない。後は僕がオークエンペラーを討伐するだけだ。あとはラシェルだね。それが一番問題なんだけど)


「そういう事なら仕方がありませんね。

 でもここからはエルドベルグギルド支部長デリックさんの命を受けた僕が全て行います。みなさんは付近のオークの討伐をお願いいたします」


 わざとらしく、溜息をつきながら言葉を発する。


「ギルド支部長の命なら私達にも異論はありません。

 私達は近くの残存オークの討伐だ。それでいいな?」


 ヘクター言葉に周囲の冒険者に異議などなく全員が頷く。唯一人を除いて。


「私、ショウタとオークのボス討伐する」


 ラシェルだった。

 それはあまりも愚策だ。それだけは絶対に許されない。

 確かに、ラシェルは【乱光包】を持つ。SSクラスのラシェルが【神話級(ゴッズ)レベル4】でも最強の武器を持つのだ。おそらく、オークエンペラーも単独で撃破可能だろう。

 だが、ここ数日の翔太の強敵との遭遇率は異常だ。まるで蜜につられた蜜蜂の様にワラワラと集まって来る。万が一にも翔太以上の怪物がいるかもしれない戦いに、ラシェルを連れて行くなどの正気の沙汰ではない。


「駄目。ラシェル、君は周囲のオークの討伐だ」


 ラシェルは顔を真っ赤にして翔太に食って掛かる。


「ショウタに命令される言われはない」


「僕の命令じゃあないよ。デリックさんの命令だ。君は作戦中にエルドベルグの支部長の命令に逆らうつもり?」


「…………」


 翔太のいう事が正しいと頭ではわかってはいても、気持ちがついて行かないのだ。地団駄を踏み始めた。今は見た目通りの子供に見える。見ていて非常可愛いがここで折れるわけには絶対にいかない。

 だから翔太は未だかつてないほどの殺気を纏ってラシェルを睨み付ける。今まで見たこともないような翔太にラシェルはぎょっとして顔を見つめる。明らかに怯えている様だ。


(ラシェル、怖がらせてごめんね。でもこの程度の殺気で怯む君を連れては行けない)


「もし君が僕の言葉に背いて、オークの棟梁の討伐のためにあのギルドハウスに入ってきたら僕は君を絶対に許さない」


 翔太の鋭い眼光と言葉にラシェルは下を向いてしまった。身体が僅かに震えている。この震えが屈辱からくるものかそれとも翔太に対する恐怖からくるものかは翔太には判断できなかった。無性にラシェルの頭を撫でたくなるが全力で我慢する。


(これでラシェルには完璧に嫌われたね。怯えさせちゃったし……だけど甘い顔は一切できない。甘い顔をすればラシェルは僕のいう事など無視してギルドハウスへ入って来る)


 翔太はラシェルから目線をギルドハウスへ移動し歩き始める。背中にラシェルの視線を感じるが構わず歩き続けた。



 お読みいただきありがとうございます。


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