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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第61話 作戦会議をしよう(2)

 本日7話目の投稿です。

 

 デリック、バリー等の幹部達とヴァージルが会議室へ入って来た。

 デリックは一番前に座っているレイナのガントレット――【フラゲルム・デイ】を見て 顔を著しくこわばらせつつ翔太に非難の視線を向けてくる。その視線を翔太はあっさりスルーした。デリックは大きなため息をはくと代表して話始める。


「今日は皆集まってくれて感謝する。もうすでにギルドの職員から話の大半は聞いていると思うが、オークの大軍がメガラニカを襲った。ギルドはこのオークの襲撃をギルド全体で対抗することにした」


 ここまでデリックが話すとその話を遮るようにSSクラスの緑色の大柄の冒険者から質問が飛んだ。


「ギルド全体で対処するとした理由は?」


「まずはオークの数があまりに多かったことだ。推定で1000体以上はいる」


 冒険者達が息をのむ音が聞こえた。皆かなり動揺しているようだ。いくら下級魔物とはいっても1000体のオークをたった300人程度の冒険者で相手をするなど悪夢に等しい。十分予想される反応だろう。デリックは苦い顔で、より最悪の事実を告げる。


「もうこの数のオークを率いていることから想像がつく者も多いと思うが、間違いなくオークキングがいる」


 それを聞いたとたん会議室内が騒がしくなる。周囲の様子からオークキングはかなりの討伐難易度があると予想される。オークに関する情報を頭の中に記憶されている『魔物全集編』から引き出す。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


○ オーク 討伐推奨クラスG~D

■形態:豚の顔面をした亜人

■生息地:洞窟、廃坑等

■性質:夜行性、集団で群れる

■対策:通常粗末な武器や防具がほとんどであり、魔法を使えるほどの知能は持ち合わせていない


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(これじゃあないね)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


○オークジェネラル 討伐推奨クラスB~A

■形態:オークの欄を参照

■生息地:オークの欄を参照

■性質: オークの欄を参照

■対策:高度な知能もち、剣術スキルや、魔法を使いこなす。装備している武器や防具も高性能なものが多い


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(これでもない)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


○ オークキング 討伐推奨クラスA+~S

■形態:オークの欄を参照

■生息地: オークの欄を参照

■性質:夜行性、集団で群れる

■対策:オークの王であり高度の剣術スキルと魔法を使いこなす。かつて魔剣まで所持していた個体もあるとの報告がある。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(これだ! それと――)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

○オークエンペラー 討伐推奨クラスSSS-以上

■形態:オークの欄を参照

■生息地: オークの欄を参照

■性質:夜行性、集団で群れる

■対策:すべてのオークの王を統べる皇帝。オークの最上位種と言われている。ただし、未だかつて一度しか報告されてはいない


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(オークキングはA+以上の難易度があるらしい。騒がしくもなるか……。それにしても、僕はこの異世界に来てから異常に引きが強いからな。嫌な予感がする)


 翔太は首を振って最悪の予感を拭い去った。ネガティブなことばかり考えていても意味がないのだ。デリックが話を続ける。


「以上から今回のオークキングを【局所災害指定魔物】と位置付けた」


 デリックの最後の言葉に会議室内の空気が一変した。この【局所災害指定魔物】に指定されると、討伐参加義務が課せられる。つまりこの会議室にいる者はこの戦に参加する事から逃れられないという事を意味する。それを全員が実感したのだろう。ピリピリとした空気が充満する。

 デリックがヴァージルに詳細を説明するように命じ彼女は話し始める。


 エルドベルグ近隣都市メガラニカがオークの大軍に攻め込まれた。現在城門内まで侵入されてしまっている。街の市民の大半は領主の私有地に籠り、メガラニカの冒険者や衛兵は冒険者チェスのチームを中心に防衛の任に当たっている。

オーク達は城門を占拠しそこに大軍を配置している。つまり事実上街中に入るためには城門に配置されたオークを殲滅しなければならず、消耗戦は避けられないだろう。鉄壁ともいわれたメガラニカの城壁が今回は最大の障害として立ちはだかるということだ。

 そこまで話したとき冒険者の一人から提案があった。


「城門に向けての遠距離からの魔法攻撃で処理したらどうでしょう? これなら消耗戦は避けられるのでは?」


 この提案は冒険者のほとんどが考えついたことだろう。翔太でさえも遠距離から【灼熱の石化ブレス】で殲滅することも視野に入れていたくらいだ。だがそう簡単にはいかないらしい。デリックが苦渋の表情で説明し始める。


「俺としてもそうしたいんだがな。そうもいかねえんだわ。豚共が逃げ遅れた数十人を城門付近に配置している。いわゆる人質だな。魔法ぶっ放せば人質もろとも殺しちまう」


 消耗戦になる可能性がある。場の空気が凍り付いた。誰だってオークと永遠に戦闘などし続けたくはない。翔太から見ても当り前の反応といえた。


「その人質には貴族が含まれているんですか?」


 冒険者の一人から質問があがった。ボリス取り巻きの貴族からの質問だった。


(まさか、平民なら人質ごと殺しても良いとでもいうつもり? 同じ人間なのに? もしそうなら正気じゃない……。

 あのボリスという貴族もこの発言した貴族も平民は貴族のために尽くせなければ生きている価値すらないと考えているのか……)


 翔太はあまりにもふざけた質問に衝撃を受けていたが会議室内はそこまで意外な質問とはみなされなかった。どうやらよくある質問らしい。

 オットーのおかげで貴族に対する評価が上昇気味であったが再び奈落の底まで落ち込む。翔太の目に貴族達に対し軽蔑の色が浮かび上がる。

だがここで諌める意見が意外なところから飛んできた。


「人質が平民か貴族かで違いがあるのか? 小僧?」


 かなり身分の高い貴族であるはずのバリーだった。憤怒の形相で怒鳴りつけ冒険者を睨み付けている。


「いえ、決してそういう意味では。出過ぎた質問でした。お許しください。バリー公爵閣下」


 同じ貴族でしかも自分より遥かに身分の高い者からこれほど強く諌められるとは思わなかったのだろう。質問者は慌てて謝る。

 翔太は今のバリーの発言が典型的な貴族と思っていたボリス等の発言と食い違い過ぎていて目を白黒させていた。


「バリーの言う通りだ。それに人質にはメガラニカの領主の一族もいる」


 話を進めるデリック。


「それで作戦だがな。ここからは俺が説明をする。まず班を一班と二班の2つに分ける。

 一班が城門周辺のオークの殲滅だ。情報によれば城門前に配置されているオークは雑魚ばかりらしい。よくてジェネラルが数体というところだ。これをAクラスの冒険者の指揮の下、BとCの冒険者が一班として、城内への道を切り開く。

城門内への道が開くまでは二班は基本待機で構わない。オークジェネラル等のBとCクラスでは若干荷が重い個体が出現次第これを狩ってもらえればよい。

 おそらく城門内は敵も精鋭ぞろいだろう。城門内への侵入が成功したらあとは二班のみで処理に当たることになる。本陣を設置するので、二班はそこで待機していてくれ」


「以上だ。何か質問や意見はあるか?」


「では僭越(せんえつ)ながら私から進言させていただきます。本作戦に相応しくない実力の者は即刻この場から追い出すべきではないでしょうか?」


 ボリスが翔太を見ながらデリックに質問を投げかける。会議室内のほぼ全員の視線が翔太に集まった。昔から視線が集まる事になれていない翔太は慌てて下を向いてしまう。それを見た他の冒険者の嘲りや嘲笑が翔太の耳にも聞こえてくる。


(追い出してくれるならむしろその方がいいのに。そうすればラシェルを十分に守れる。僕には本来オークキングなんて倒す義務はないんだから)


 『早くここから出ていけ』という声が会議室内中に飛び交ったのでさっさと退出しようと席を立ちあがる。するとデリックが翔太に席に座るように手で合図をした。仕方なく椅子に座り直す。


「確かに彼は本来Dクラス、本作戦に参加する義務はない。彼はギルドの方から頭を下げて本作戦への参加を頼み込んだのだ。彼に対する無礼な態度は俺が許さん」


 デリックの言葉に会議室内は静まり返る。


「理由を説明してもらえるか? そこの貴族の坊主ではないが、足手纏(あしでまと)いに足を引っ張られるのはごめんだ」


 緑色の髪の大柄なSSクラスの男がデリックに問いかける。


「アドルフ、確かにお前の言う事ももっともだ。ショウタもかまわないな?」


(デリックさんなら、僕が異世界人であるとかの重要な事実は伏せてくれるはずだ。短い付き合いだが、そのくらいの信用はしても良いと思う)


 翔太が頷くとデリックは話始める。


「確かにショウタはDクラスだが冒険者に登録したのが数日前だからにすぎん」


「数日前だと? 馬鹿馬鹿しい! たった数日でHからDに上がったと?」


 デリックの言葉を遮って緑色の髪の大柄な男――アドルフがデリックにひどく神妙な顔つきで問いつめる。それほど異常な事態らしい。


「そうだ。二日間の試験を受けHからDへクラスが上がった。アドルフも知っているだろう? ギルドの規定で一週間につき4つまでしかギルドクラスは上げられない。だからまだDなのだ」


「…………」


 アドルフは驚愕の表情を浮かべて黙り込んでしまった。


「大方、実力のない試験官が試験を担当したのではないのですか? それか金を掴ませられたとか?」


 ボリスが試験官を罵る発言をすると、スキンヘッドの試験官――ダンカンが激怒の表情で勢いよく立ち上がった。


「たかがCクラスの冒険者が偉そうに抜かすな! 先ほどから黙って聞いていれば好き放題言いやがって! 

 俺達が金を掴まされただぁ~? 貴族様は金ですべて解決できると思ってやがる。お前らと違い俺達には冒険者しかねぇ。命かけてんだ。手前らのように道楽でやってるんじゃねえんだよ。そんな俺達が金をいくら積まれても八百長などするわけねぇだろう? 一緒にするな。

 それにな。ショウタさんは本当に強い。たぶん此処にいる誰よりも!」


「ぶ、無礼な平民が! その口の利き方はなんだ?」


 ボリスが真赤な顔をして怒り狂う。


「ああ? 口を開けば同じ言葉ばかりほざきやがって。俺はショウタさんほど我慢強くも優しくもねえよ。手前こそ先輩に対する口の利き方に気を付けろ!」


 ボリスの取り巻きの貴族の一人が下卑た笑みを浮かべながらダンカンを非難する。


「今のダンカンさんの発言はデリック侯爵閣下を貶める発言ですよ。デリック様は史上四番目のSSSクラスの冒険者。その方よりも強いなどと……」


 取り巻きの発言により流石にダンカンも自分の発言が失言だった気付いたのか悔しそうに黙ってしまった。


「私もダンカン殿に同意する。ショウタ殿はこの会議室にいる誰よりも強いと思う」


「ジェイク?」


 アドルフは傍にいるジェイクと呼ばれた者に躊躇いがちにも尋ねる。ジェイクは翔太が本来戦うはずだったAクラスの冒険者だ。相変わらず顔色は悪いままであったが、絞り出す様に話始めた。


「私は……私も試験官だった。だがダンカン殿とショウタ殿との戦いを見て怖くなって逃げたんだ。

 あんなものはもはや勝負ではない! ショウタ殿が少し加減を間違えただけで死んでしまう。だから……逃げた。責められるべきはダンカン殿ではない。闘いからすら逃げ出した私だ……」


「ジェイク、お前が昨日から調子が悪そうなのもそれが原因か?」


 アドルフの問にジェイクは答える。


「そうだ。あの戦いは私のプライドを完膚無きまでに粉々にした。我等竜人は最強の人種だと信じて来たし、今でもそれは動かない。

 しかしショウタ殿は別だ。我らが王と同じ匂いがする」


 それを聞いて、アドルフのパーティーメンバーらしき者達に動揺が走る。


「人間族の突然変異体というわけか……」


 アルドフがボッソと呟く。デリックが脱線しかかっていた話を元に戻した。


「そういうわけだ。ショウタの強さは俺も見ているから心配しなくてもいい。もう質問はないな?」


 どうやら、ジェイクという翔太が戦うはずだった試験官はかなりの実力者だったらしい。もはや、会議室からの翔太退出論を言い出すものはいなかった。ボリスも納得してはいなそうであったが、室内の雰囲気がこれ以上の異議を言う事を否定した。


「では今から一班と二班に分かれて作戦について詳細な説明がある。悪いが一班は隣の部屋へ移動してくれ」


 レイナが何か言いたそうに翔太を見ていたがフィオンと共に隣の部屋へ移動して行った。

 そう。フィオンもレイナと同じ一班である。

 これはレイナが狙われている事をデリックが考慮してくれた結果だろう。例え翔太の力をあてにしての行動だとしても素直にありがたかった。

 もしフィオンがレイナと別々になった場合翔太はレイナにも気を配らなければならなくなっていた。だがフィオンとレイナは一緒の班となった。これでレイナを攫うのは事実上不可能だ。

 今の【フラゲルム・デイ】を装備したレイナにとっては、オークキングでさえもゴブリンやスライムと変わらない。心配は全くいらない。危惧点は内通者だけなのだ。

 そして【雷切】を装備したフィオンがレイナの身を守っている。レイナの唯一の不安要素であった心の幼さはフィオンがカバーしてくれる。レイナを攫うのはこれでたとえ大陸最強の魔軍でも不可能となった。

 翔太はこれでラシェルを守る事に全力を注げる。今回ヴァージルの護衛をしてみてわかった。内通者がいる者からの護衛は自分の身を守る以上に大変だ。気を抜けばすぐに攫われてしまう。一人でも大変なのだ。二人を護衛するなど不可能に近い。だから、今回のレイナに対する危険性が完全に払拭された事で翔太はある程度の余裕を取り戻していた。


 お読みいただきありがとうございます。

沢山の誤字報告マジで助かります。ありがとうございます。今日予定している投稿が終わり次第すぐに修正させていただきます。

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