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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
61/285

第57話 受付のお姉さんを護衛しよう (2)

 ここからが『僕と俺の異世界漫遊記――リメイク版』の新規投稿分となります。

 ご迷惑をおかけしましたので予約投稿は止めて一気に投稿します。

 今日は既に修正が済んでいる78話程度まで一気に投稿しようと思います。それではお楽しみいただければ幸いです。

 翔太がベッドで寝ていると、部屋のドアが軽く叩かれた。

 幽鬼のように青白い顔でドアを開けるとフィオンが立っていた。

 どうやら話があるらしい。話の内容は主にレイナの事と翔太の生産する武具の事についてだ。

 レイナの事については獣王国と世界の事情を詳しくフィオンから聞いた。そして、目立ちたがり屋のレイナに自重するよう言い含める役目はフィオンが負う事となる。

 翔太の持つ武具は、世界のパワーバランスの安定の観点から、できる限り世界に流布されない事となった。それは翔太もデリック達の反応から感じていた事であり直ぐに了承する。

 翔太の蒼白い顔を終始気にしていたフィオンは用件について話すと、すぐに寝ろときつく言い伝えて自分の部屋へ戻って行く。


               ◆

               ◆

               ◆


 フィオンと別れ再び翔太はベッドで深い眠りにつく。

 だが1時間もしないうちに再びドアがドンドンと叩かれた。眠たい目を擦り擦り這うように扉まで行き、扉を開けると、フィオンが佇んでいた。

 フィオンの隣にレイナはいない。今のレイナに勝てるものはこのアースガルズ大陸には存在しないに等しい。もうフィオンが付きっきりになる必要はないのだ。

 翔太はフィオンを観察する。何やら少し焦っている様子だ。それもフィオンから説明を受けて直ぐ合点がいった。

 転がるように階段を下り宿屋キャメロンの1階ロビーへ行く。


「ヴァージルさん!」


 ヴァージルは今朝からの機嫌がやや治ったのか外面の良い微笑みを翔太に向けて来る。


「ショウタさん。よかった、宿屋におられたのですね」


(こ、この人は……何を考えてるの? 自分が狙われているのに一人でこんなところにのこのこ来るなんて……)


「ヴァージルさん。なぜ一人で来たんです? 貴方は狙われるって言ったじゃないですか?」


 ヴァージルのあまりの不用心さに焦りと怒りがごちゃ混ぜになり、つい口調が強くなる。


「人通りの多い所を来ましたのでご心配には及びません」


 ヴァージルはなぜか、そんな慌てふためく翔太の様子をみて嬉しそうにしている。それが翔太を余計イラつかせた。


(この人、日葵ちゃんと似ていると思ったけど、無鉄砲さとか、ほっとけなさとか、人の話を全く聞かないところとか、危機感零のところとか全部レイナにそっくりだ。

 もし屑どもに手籠めになったら僕がどんな気持ちになるのか彼女は知ってるのかな? 

 いや僕なんかより、オットーさんやデリックさんがどれ程悲しむことか……少し考えればわかるだろうに)


「人通りがあるから安全というわけではありませんよ。何度も説明したでしょう? あなた一人では賊を撃退するのは不可能です。もう二度と僕がいないときに勝手に出歩かないでください」


 ヴァージルがこの翔太の言葉に自尊心が傷つけられ怒り出すのかと思った。そうされた方が翔太の精神衛生上よほど良かったと言える。

 だが、ヴァージルはあまり怒ってはいなかった。寧ろ楽しんでいる感があったのだ。それがさらに翔太の堪忍袋の緒に切り傷を付ける。


「私もギルドの用事でここに来ています。遊んでいるわけではありません。そもそも私が一人で歩くかはショウタさんには関係がありません。そうではありませんか?」


 そう言われるとぐうの音も出ない。元々、ヴァージルと翔太との関係は受付嬢と一冒険者なのだ。

 翔太の苦渋の表情を見て楽しそうにしているヴァージル。どうすればヴァージルに今の危険な現状を理解してもらえるか模索するが何も閃かない。

 致し方ない。ヴァージルの騎士――オットーに手伝ってもらうことにした。


「僕はそうかもしれせん。でもオットーさんは心底ヴァージルさんを心配していますし、彼は無関係とは言えないでしょう?」


 今まで僅かに微笑んでいたヴァージルの表情に亀裂が入る。


「どうしてそこでオットーさんが出て来るんです? 私は貴方の話をしているんです」


「僕の話? ヴァージルさんが一人で出歩く事を咎める筋合いは僕にはありませんよ。第一それは貴方がさっき仰ったことでしょう?」


 不味いと知りながらも翔太も珍しくムキになっていた。ヴァージルから笑みが消え感情を顔から消す。


「ええ、そうでしょうね。私の護衛を引き受けたのも日葵さんを探すためでしょう?」


「…………」


 それは真実だ。だがすべてではない。無論、そのような事をヴァージルにいう訳にもいかない。

 今の翔太の唯一ともいえるこの世界における目的は日葵、柚希、雪を地球に返す事だ。それはヴァージルにも説明している。ヴァージルだってわかっているだろうに。

 翔太の無言を肯定ととったヴァージルは真っ赤になって()くし立てる。


「なら、もう金輪際(こんりんざい)私に付き纏わないでください。迷惑です!」


「っ! そ、それは――」


 ヴァージルの怒りの表情とその言葉の内容で地球の暗黒時代を思い出し、翔太の心に小さいが鋭い棘が食い込む。

 一斉に周囲が翔太とヴァージルを見てヒソヒソと囁き合う。キャメンロンで少し 早い昼食をとっている冒険者達だ。彼らの敵意ある視線が翔太に降り注ぐ。

このまま此処に居れば絡まれるのは時間の問題だ。即急にできる限り早くこの修羅場から脱出しなければならない。大きく息を吐き、冷静になれと自分に命令する翔太。


「それくらいにしておけ!」


 そこで助け船が出された。フィオンだった。安堵の溜息を吐く翔太。ヴァージルも同じらしく、ほっとした表情をしていた。


「フィオンさん。御見苦しい所をお見せいたしました」


 頭を下げるヴァージルにフィオンは気にしていないというお決まりの言葉を吐く。翔太では埒が明かない。話が進まないのだ。フィオンに任せる事としよう。


「ところで、ヴァージル。何か用があってきたんじゃないのか?」


 ヴァージルはハッとなって顔を赤くした。最初に伝えなければならない大事な事を伝えずに、翔太とドンパチやってしまった事を恥じているのだろう。すぐに用件を話し始めた。

 要約すると次のような話だった。

 オークの大群がメガラニカに突如として押し寄せて来た。

 メガラニカには巨大な城壁がある。この城壁に阻まれ魔物は街中には入れず立ち往生している間に城壁の上から弓や魔法で攻撃され一網打尽になるのが通常だ。

 だが何者かが門衛を殺し城門を開けてしまい街中に大量のオークが侵入した。

普段ならば数百いるオークに対抗しきれないはずだが、偶々、翔太のバジリスクの討伐の件でチェス達のパーティーがメガラニカにいた。チェス達によって領主の家に市民が避難誘導され現在立て籠もり中らしい。

 たった今ギルド本部からの討伐命令が発令された。Cクラス以上の冒険者は討伐参加義務が生じるのですぐにギルド本部へ出頭しなければならない。

 フィオンはA、レイナもCクラスだ。フィオンとレイナにも討伐参加義務が生じていることから、ギルドに出頭することになるだろう。まあ今のレイナにオークが傷をつけられるとも思えない。そういう意味では心配はいらない。

 翔太はDクラスだがギルドとの密約により特別に参加義務が生じ出頭する必要がある。


(なるほどね。これで『豚』の意味がはっきりした。オークが人間と交渉できる事自体が驚きだけど、『豚』を街に攻め入ったオークと考えればすべての辻褄が合う)


「わかりました。じゃあヴァージルさん。僕と一緒にギルドへ戻りましょう」


 フィオンがいるにもかかわらず、翔太はヴァージルに半場強制に近い口調で提案する。

 周囲のキャメロンの客たちが翔太の発言を聞いて騒めき立つ。

 食堂の椅子に座っていた正義感の強そうな冒険者の青年が弾かれた様に立ち上がるが、フィオンがいることを指摘され渋々座り込む。

 今や翔太は完璧にヒールだ。やはりヴァージルは日葵だと妙な実感しながらも、ヴァージルの返答を待つ。

 ヴァージルは先ほどの翔太とのイザコザが嘘のように機嫌が良くなっていた。


(もしかしてこの人、僕が中傷されているのを見て楽しんでるの? マジで疲れてきたよ。僕にはヴァージルさんという人がわからない。彼女の御守りは僕にはレベルが高すぎだ)


「いえ、私はまだあと3名の冒険者にこの事を伝えなければなりませんので、まだギルドへは戻れません。ですからショウタさんは先にギルドへ向かってください」


(ふざけんなよ。それができたら世話ないさ)


 翔太の護衛を拒否する気満々だ。どうやら、金輪際付き纏うなという言葉はヴァージルの本心らしい。だがヴァージルの護衛は翔太がギルドの幹部に頼まれた事だ。ヴァージルの拒否の有無に関わらず完遂しなければならない。

 それにしても彼女の勝手な行動をデリックさんが許可したのだろうか。疑問に思って尋ねてみる。


「デリックさんはヴァージルさんがギルドハウスを出る事を知っているんですか?」


 現在進行中で狙われているヴァージルが一人で行動する事を許可するデリックの意図が掴めない。野獣の群れに肉を放り込むようなものではないか。


「はい。支部長も最初はギルドから出るなと仰っていましたが、私が普段通りの職務を遂行したいと言ったらすぐに了解していただきました」


 ヴァージルはすぐにと言っているがデリックがヴァージルに危険な任務を任せるとは思えない。おそらくかなりしつこくデリックに要求したんだろう。

 この数日でわかった。デリックはヴァージルに甘い。おそらく子供か孫の感覚なのだ。元の世界で唯一翔太に優しかった祖父と同じ雰囲気なので十中八九、間違いない。そしてこの雰囲気はデリック以外のギルドの他の幹部の人達も醸し出していた。


(デリックさん! もっと粘ってくださいよ。大切な部下なんでしょう! でも事情は呑み込めた。僕のところに真っ先に行くように言われているはずだ)


「デリックさんはヴァージルさんが今回の職務につくことについて他に条件を付けませんでしたか?」


 翔太の言葉に言いにくそうに翔太から目線を外しヴァージルは答える。目が泳いでいる。


「説明はショウタさんのところから行けと……」


(ビンゴ! あのオッサン……ヴァージルさんにせがまれて断れなくなったな。それで僕に時間外労働させようという腹か。ギルド内にいれば絶対に安全なのに……)


「わかりました。僕もついて行きます。よろしいですね?」


 冒険者達からの殺気が増す。


(地球の学校の再現だ。もう嫌だ。早くこの人から解放されたい)


「さっきも言ったはずです。迷惑ですからついて来ないでください!」


 ヴァージルは勝ち誇ったような口調で翔太を拒絶する。打開策が見当たらず顔を盛大に歪める翔太。


(さて、どうしよう。このままヴァージルさんを一人で行かせるわけには絶対にいかない。だって、一人で行かせれば十中八九、賊共に攫われる。

 僕はヴァージルさんに関わり過ぎた。もう見捨てるのは無理だ。それに見捨てたらギルドでの僕の立ち位置は今まで以上に最悪となる)


 フィオンが翔太の悩む姿に痺れを切らしたのか、ヴァージルに視線を向ける。


「それなら俺がヴァージルの護衛をして、ショウタがレイナをギルドへ連れて行けばいいんじゃないのか? もっとも本当にそれでヴァージルが良いのならばの話だがな」


 フィオンがヴァージルの護衛を引き受けると言ったのもレイナが攫われない事がほぼ翔太の悪巧みのおかげで確定したからだろう。今のレイナを攫いたければ魔軍全軍で攻め入るくらいの武力が必要だ。加えて、その武力を用いたとしても、もしかしたら何とかなるかもねと言うレベルらしいし。

 翔太もフィオンならヴァージルの護衛を任せても安心だ。フィオンの実力とフィオンが持っている【雷切】があれば、黒ローブの男達など何人こようがスライムやゴブリンに等しい。闘いすら成立しないだろう。


「僕もフィオンなら安心だよ。ヴァージルさんもそれなら構いませんね?」


 ヴァージルは悔しそうに翔太を睨む。その刺すような目に翔太は思わず一歩下がる。ヴァージルは翔太の言葉には返答せずに、踵を返してキャメロンを出て行ってしまう。

 突然のヴァージルの奇行に面食らうがすぐに覚醒して、フィオンに謝りつつもヴァージルを追う。


 お読みいただきありがとうございます。

ヴァージルさんと恋愛話です。恋愛話を書くのは結構好きなので、この手の話は結構出てきます。

 

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