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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第45話 エルフの少女の落し物を一緒に探そう 

 10月25日の第2話目の投稿です。

 スカルスネイク50体、バジリスクキング1体とバジリスク11体の魔晶石の換金代金がギルドから出た。スカルスネイク1体が5万、50体で250万Gとなった。さらにバジリスクが1体あたり200万G、これが11体もいたので2200万Gにもなる。

 加えて、バジリスクキングは未だかつてギルドで確認されていない魔物であり、その魔晶石の価値が膨れ上がると予想された。現にバジリスクキングの魔晶石を見た鑑定士が卒倒したくらいだ。こういう理由でなんと最終的にコカトリスロードの倍の6000万Gにもなったのである。これらが合計で8450万Gにもなり、これで今の翔太の所持金は1億1400万近くになる。どうやら数日で大金持ちになってしまったようだ。


 できる限り地球に早く帰りたい翔太にとって心境はかなり複雑だった。

 翔太はお金が入り純粋に嬉しく感じてはいた。だが、同時にお金を手にしたとき、この世界で生活するのも悪くないとどこかで考えている自分がいた。翔太は徐々にこの世界に慣れてきているのだろう。

 勿論、翔太の目的は元の世界――地球に日葵達を帰すことだ。これだけは血反吐が吐いても実現してみせる。

 だが、彼女達を地球に帰還させた後、翔太はもしかしたらこの世界に残る選択をしてしまうかもしれない。

 しかし、それは日葵達――地球の人々との永遠の別れを意味する。そのとき翔太は耐えられるのだろうか。それを考えると心が暗雲につつまれる。

その暗い気持ちを振り払い翔太は宿屋キャメンロンまで歩を進める。





 宿屋キャメロンに戻る途中、道端で黒のマントを着用した子供が(うずくま)っていた。気分でも悪いのかと思い近づいてみるとエルフの少女ラシェル・メイヤーだった。


「やあ、ラシェル、気分でも悪いの? 肩かそうか?」


「…………」


 当然のごとくラシェルに無視されてしまう。どうやら気分が悪いわけではなく、探し物をしているらしい。

 周りの景色が赤っぽく染まっている。もうじき日が沈んであたりは真っ暗闇になるだろう。こんなところでエルフの子供が探し物をするのは絶対に相応しくはない。

 翔太は手伝おうと思いラシェルの顔を覗き込むが、ラシェルは翔太に一瞥もしない。どうやら無視を決め込む気らしい。気のせいかもしれないが、一昨日よりもだいぶよそよそしいような気がする。


(昨日の早朝一緒にいたエルフ達に何か言われたのかな? なら手伝えばラシェルに迷惑がかかるかも)


 そう考え、一瞬このまま立ち去ることも頭によぎったが、すぐに振り払う。


(エルフと人間の確執の話を聞いて、立ち去るなんて事できるわけないよ)


 エルフの子供にとってこの場所は安全な場所ではないのだ。変な犯罪組織に(さら)われて売り飛ばされることも十分あり得る。

 それになぜだか分からないが彼女を助けろと翔太の中の何かが命令するのだ。その命令が何に由来するのかは不明だが、それは決して無視してはいけない事のように思えた。


「ラシェル、何を探しているの? 僕も手伝うよ」


「…………」


 翔太はできる限り優しくラシェルに問うが彼女は一言も答えず、ずっと地面を探し続けている。


「何を探しているの?」


 今度はかなり強い口調で尋ねる。このままではラシェルはきっと一人でこの場所を探し続けている。それがどうしょうもなく寂しく思える。そんなことをさせるのが死ぬほど嫌だ。だからもう一度強く問う。


「ラシェル?」


 ラシェルは翔太がずっとその場を動かないと知り、億劫そうに初めて翔太に目を向けて言った。


「あなたには関係ない」


「確かに関係はないよね。でもこんな時間に一人で探し物は危ないよ。僕も探す。君が嫌だと言っても僕はここにずっといるから」


 翔太の決意が固い事が分かったのか、それとも面倒になったのかラシェルからの拒絶の気配が薄まった。そしてラシェルの独り言らしきものが聞こえた。


(昨日無視したくせに……)


「え? 今何か言った?」


「……ペンダント」


 翔太は思わず聞き返したがラシェルは再度『ペンダント』とだけ答え、地面を黙々と探し続ける。ラシェルはこれ以上何も聞くなというオーラを全身に(まと)っていた。

 翔太も肩をすくめて探し始める。


               ◆

               ◆

               ◆


 二人で2時間程さがしたが、全くみつからなかった。途中何度ももういいから帰れとラシェルに言われたがすべてスルーした。子供が気を遣う必要などないのだ。

 もう1時間ほどしてペンダントはやっと見つかった。小さなペンダントがパン屋の片隅に頓挫していた。そのペンダントには豪華で繊細な装飾がなされ素人の翔太にもそれが極めて高価なものであることが分かった。すぐにラシェルに渡すとペンダントを胸に当ててほっとしたような表情を浮かべた。


(よほど大事なものだったらしい。もしかしたら大切な人に貰った物なのかもね)


 昨日と同じもう午後22時だ。またフィオンとレイナを心配させてしまった。


「ラシェル、宿屋まで送るよ。もう辺りもすっかり暗いし早く行こう」


 ラシェルも遠慮がちに頷き翔太の横に並んで歩きだす。

道中、翔太の横顔を窺ってくる。おそらく何か聞きたい事があるのだろう。


「どうしたの?」


「…………」

 

 ラシェルは何も答えない。聞きたい事が聞けなくて歯がゆいのだろうか。拗ねたように地面を蹴っている。

 そうしているうちにラシェルの宿屋前についた。彼女は何か言いたそうだが、翔太も今日の戦闘で途轍もなく疲れている。それに、これ以上フィオンに心配をかけることはできない。  


「ラシェル、お休み」


「ショウタ!」


 踵を返してキャメロンの道を行こうとすると、ラシェルに呼び止められる。


「ん? どうしたの?」


 翔太が振り返ると、ラシェルは真赤になって下を向いていた。


「あり……がとう」


 翔太に正体不明の暖かな気持ちが湧き上がる。その気持ちに突き動かされるようにラシェルの頭をとんがり帽子の上から優しく撫でた。そして再びラシェルに背を向けて歩き出す。

 背後から『子ども扱いするな!』とかいう彼女の罵声が聞こえてきたが無視して帰路につく。


               ◆

               ◆

               ◆


 宿屋キャメロンについてときにはすっかり夜も更けていた。翔太が宿屋のドアを開けて室中に入ると、昨日と同じくフィオンとレイナが翔太を出迎えてくれた。

 フィオン達は昨日以上に血相を変えて翔太に近寄って来る。こんな遅い時間まで連絡がないので試験で怪我でも負ったのかと心配してくれていたらしい。そんなフィオンとレイナに感謝しつつも今日経験した出来事を順を追って話す。

 案の定、バジリスクキングのエンカウントはフィオンを大層驚かせた。たった数日間での強力な魔物との複数の曹禺だ。これを偶然と片付けられるのはよほど頭が御目出度(おめでた)い人物だろう。

 一方レイナはバジリスクキングの事よりもラシェルの探し物の件の方が気になるらしくそれについてしつこく聞いて来た。それを聞くときのレイナの翔太を見る目が怖い。思わず後ずさりしてしまったほどである。まあ、こんな時間まで連絡もせずに人の探し物を探していたのだから怒るのも無理はない。こんなときはいつもの裏技だ。レイナの頭の上に翔太の掌をのせて、ぺこりと謝る。

 翔太が謝るとレイナは顔を赤くして『もう寝る!』と乱暴に言い放ち、自分の部屋へ行ってしまう。完璧に怒らせてしまったらしい。

女の子は難しいなと思いながら翔太は、フィオンのありがたいお説教を聞いた後、自分の部屋へ戻った。

 



 部屋に行きベッドに横になって、もう半分残っていた『七つの迷宮(セブンラビリンス)』の取説を読む。 

 その結果、『七つの迷宮(セブンラビリンス)』の迷宮の作り方が判明した。

この指輪のアイテムボックスには迷宮作成のコントローラーがある。コントローラーと言っても地球のスマホのような形の機械だ。

 まず、この指輪に様々なものを吸収させ認識させる。コントローラーで階層を設定し、指輪に認識された情報をもとに、ショウタの【魔力】と【体力】を用いて迷宮を作成する。その際にいかなる迷宮になるかは所持者のイメージに支配される。如何にも迷宮という石造りの迷宮から、太陽が燦々と照り輝く砂漠の迷宮、見渡す限り海だけの迷宮、密林だけの迷宮など様々なものを作ることができるらしい。

 この迷宮作成の具体的方法はコントローラーで『階層』を決め、『認識』の機能をONにし、指輪に【魔力】と【体力】を込めながら想像するだけである。

当初、『【魔力】と【体力】を込めて想像する』の意味が解らなかった。試行錯誤した結果、スキルと同じ要領であることが判明する。要するに、体内から力を引き出すイメージだ。試すと、精神と体力がゴッソリ持っていかれるようだ。【魔力】も【体力】も消費し、休息で回復する性質のものであるらしい。いわば、【体力】がHPで、【魔力】はMPの役割を担っているのだろう。【体力】は同時に防御力等も担っているようではあるが……。

 お次は具体的な想像である。地球に若干の恋しさを感じていた翔太は【魔力】と【体力】を込めて地球をイメージしてみる事にした。

 一番深い7階層に『階層』を定める。懐かしい地球を思い出しながら、【魔力】と【体力】を体内から対外へ引き出し、指輪へ注ぎ込む。だが、コントローラーの画面には『想像を実現するための基本情報が足りません』という言葉が表示される。


(地球の環境を実現するための基本情報か……。普通に考えれば地球にある物質を指輪に吸収させればいいよね。

 以前にプラスチックのカードを指輪に吸収させたけど、これではまだ不十分みたいだ。僕が地球からこの世界に持ち込んだ物は、僕のスマホと家のカギくらい。どうせ、スマホは持っていても使えないし、指輪に吸収さよう。残りは家のカギだけど…………止めておこう)


 家の鍵まで無くなると、二度と家に帰れなくなるような気がしたのだ。単なる願掛けに過ぎないが翔太にとっては大事な事である。

 だが、結果として鍵は吸収させる必要はなかった。翔太のスマホを吸収させ、指輪に【魔力】と【体力】を込め再び地球をイメージする。すると、コントローラーの画面に『基本情報は正常に認識されました。現在、所持者の認識を7階層に構成中』と表示された。


(やった! 成功だ! 取り敢えずは僕の家をイメージしたよ。後はいろいろ想像して行こう。なんか懐かしいな――)


 翔太は懐かしい地球を思い出しながら深い眠りにつく。


こうして翔太の初めての冒険者、実地試験は終了したのである。




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